さて、ここまで見てきて、ASMLの強さの秘密とは何だろうか、と考えてみた。直接的にはその技術的先進性が市場の支持を獲得し、高いマーケットシェアを実現したと言えるだろう。では、その技術的先進性は何故生まれたのか。今回の取材を通じて見えてきたことは、ASMLが組織した「オープンな開発体制」がこれを産んだ、というものだ。「Value Sourcing」の戦略を元に、できるだけ外部に開かれた開発体制を作り、そこで密接なコミュニケーションを取る。例えばASMLとCarl Zeiss SMTは互いに協議して、だいたい2週間に一度は開発ロードマップが改訂されるという。ASMLが共同検証を委託しているIMECは、ベルギーの研究機関ながら、オープンに門戸を開き、世界中にパートナーを揃えており、ASMLはIMECを通じて世界の最先端の技術動向を漏れなく把握できる。この連携の中で、ASMLは的確なロードマップを設定し、最も優れた技術を手に入れ、これをいち早く市場に投入できたのではないだろうか。

IMECのパートナー

今回の取材で巡ったオランダのASMLとドイツのCarl Zeiss SMT、そしてベルギーのIMEC。それぞれバスで約半日の行程で行き来できる。同じEU域内ということで、往来にはパスポートの提示も不要だった。通貨は同じユーロで統一されており、お互い英語で会話する。あたかも一つの国の中を旅している様だった。高騰するユーロ。そのパワーの源はEUが一つの力強い国家的な経済圏と見なされつつある事に依るのだろう。EUこそオープンを体現した組織であり、その在り方がASMLの事業姿勢に静かな影響を与えていることは確かではないかという気がした。(了)