ASMLに光学レンズユニットを供給している独Carl Zeiss AGグループは、ご存知の通り老舗の世界的な光学機器メーカーだ。2006年度には24億ユーロの売り上げを計上している。同社の傘下に、Carl Zeiss SMT AGがあり、同社は半導体露光装置関連の光学機器を製造している。同社は2001年にCarl Zeiss 半導体技術事業部から100%子会社として分社独立、2006年度は8億6400万ユーロの売り上げを計上しており、前年比31%増の成長を遂げている、Carl Zeissグループの中でも成長株の企業だ。同社の本社は独Oberkochenにある。

Carl Zeiss SMT本社工場

このCarl Zeiss SMTは、ASMLと二人三脚の事業展開を図っている。ASMLと株の持ち合いはないものの、同社の半導体露光装置用光学レンズユニットは独占的にASMLに提供される。露光装置用の光学レンズユニットの設計開発には、Carl Zeiss側のノウハウだけでなく、ASML側からの経験とノウハウの提供が欠かせない。従ってレンズは共同開発に等しく、ASMLとCarl Zeiss SMTは二人三脚で光学装置の開発を行っている。ASMLがサプライヤに求める、ASMLへの依存度25%以下というルールは、従ってCarl Zeissグループ全体として見たときに25%以下、という解釈になるそうだ。

半導体露光装置用の光学レンズユニットは大変な精度が求められている。これに匹敵する光学機材は、軍事偵察衛星用のカメラに使われる光学レンズユニット位だろうとのこと。表面の粗さはサブナノメートルレベルまで磨き上げられる。しかも、その粗さの計測は、同社が自社開発した一般的な白色光による干渉計を使って行われるというから驚きだ。最後はIBF(イオンビーム面修正)装置で研磨される。精度良く加工するためには、これを上回る高い精度での計測が不可欠。同社は計測技術の開発にも相当に力を入れている。

ところで、露光装置用のレンズユニットは非常に大型で、最新のものでは約1トンの重量があり、レンズも20~25枚ほど使われている。ナノオーダーの露光精度を実現するためには、環境のちょっとした変動もレンズユニットの光学特性に影響してしまう。このため、レンズユニットには沢山のマニピュレータが実装されており、これを外部のコンピュータが自動で制御し、リソグラフィー装置内における環境の変化にアダプティブに適応する。このコンピュータはASMLと共同開発している。