社会の急激な変化に対応し多様なニーズに応えていくため、業界を問わず企業はスピーディかつ効率的で高精度な設計を行うことが求められている。これを、CAE(Computer Aided Engineering)やCFD(Computational Fluid Dynamics数値流体力学)に関連したソリューション、サービスをとおして支えているのが、株式会社ヴァイナスだ。
そのヴァイナスが2019年10月10~11日、東京・品川にて「VINAS Users Conference 2019」(以下、カンファレンス)を開催する。テーマは「高速・高精度・大規模解析と最適設計のためのソリューション~オープンソースとクラウドコンピュータの設計利用~」だ。カンファレンスの概要やみどころについて、同社 代表取締役社長 藤川 泰彦氏に聞いた。
新HPC時代の到来を前に、今、なすべきこととは?
ヴァイナスにとって今回のカンファレンスの大きな目的は、今後ますます高精度・複雑・大規模化する解析の設計評価に対して、同社がどのように貢献できるかを示すことだと、藤川氏はいう。
「理化学研究所のスーパーコンピュータ『京』が8月16日にその役目を終え、2021年には『富岳』の運用が始まる予定です。計算能力は100倍になり、データはより大きくなっていきます。そういう新しいHPC(High Performance Computing)時代が間近にせまっていることを前提としたうえで、今、我々が設計や研究に携わる方々にどのような貢献ができるかを提示していこうと思っています」
ヴァイナスが重視しているのは、大規模解析のポストプロセスだ。たとえば展示会や企業のショールームなどへ行くと、新設計された自動車のボディが巻き起こす空気の渦や、新発売の空調機が生み出す風が、HPCでの解析結果として、美麗なグラフィックで紹介されているのを見かける。大規模な解析ができる現代だからこそ、こうしたリアルなシミュレーション映像をつくれるようになったわけだが、藤川氏は、設計者にとってそうした画像は全体の動きを把握するためには必要なプロセスであるが、解析結果を製品設計に反映するためには製品の性能を決定するような重要な解析結果と現象を定性的かつ定量的に評価把握することが重要であるという。
「設計者が必要とするものは、性能を表す数値であり、また性能を予知理解するための各種パラメータを用いたグラフ表示などです。それらを見て、設計したものが想定どおり機能しているか、どこを設計変更すべきなのかを知ることができるのです」
こうした設計ニーズに応えるため、同社では「設計に必要な要素の見える化」を軸とした機能をもつポストプロセッシングの二次評価のためのソリューションの開発・提供に力をいれようとしている。同社ではこれらのツールを「デザインGUI」と呼んでおり、現在2つのカテゴリーがある。
ヴァイナスの提唱する「デザインGUI」とは?
ひとつは「グラフ化と自動評価レポーティング」。先述のとおり設計者が必要とするデータを、目的ごとにグラフ形式で出力するためのポストプロセッサ群がここに含まれる。エンジンの燃焼やターボ機械CFD解析の解析結果をもとに製品性能をグラフ化し自動的に設計者に見やすいレポートで出力する「Reporter」シリーズも、そのひとつだ。レポート出力するためのテンプレートは、設計する機器や目的別に用意されており、カスタマイズのサポートもヴァイナスが行う。
同社が「デザインGUI」として打ち出しているもうひとつの軸は「低次元化」だ。HPCによる大規模かつ詳細におよぶ解析結果は、時として複雑になりすぎることがある。たとえば航空機が飛行中に、特定の揺れを起こすとしよう。その原因を特定するために設計データをHPCで解析すれば、返ってくる結果は膨大なものになってしまい、その中から真の原因を探し出すことは困難になる。そこでHPCの解析結果を再度ポスト処理して不要なものを払い落とし、人間に理解しやすいように絞り込むのが「低次元化」という考え方だ。
これを実現するソリューションとして「FBasis V1」がある。基本技術はJAXAが開発したもので、大気圏突入カプセルの設計データから、カプセルが引き起こす空気渦(後流構造)など重要な流れを自動的に抽出し可視化することを目的としたシステムだ。従来、低次元化に利用されていたPOD(固有直交分解)およびDMD(動的モード分解)に、機械学習処理を実施することで、より高速な解析と明瞭な可視化が実現する。ヴァイナスでは「FBasis V1」の事業化権を取得し、産業界で利用しやすいように製品化を行い今年7月より民間企業や研究機関への提供を始めている。
「たとえば自動車の設計では、サイドミラーやサンルーフなどが、ナノセカンド単位でどのように車体の性能に影響しているのかまで解析することが求められる時代です。膨大な解析データから必要なものを抽出して可視化する低次元化は、ますます需要が高まるでしょう。これを可能にした『FBasis V1』は、自動車の設計以外にも、空調の室外機などから発生するノイズの原因究明などに利用したいと、すでに多くの企業から引き合いをいただいています」
「デザインGUI」の旗印の下、ポストプロセッサのラインナップ充実をはかるヴァイナスの意図は、どこにあるのだろうか。 「自動車も、発明された当初は移動手段にすぎませんでした。しかし今では輸送用、レース用、レジャー用など目的ごとの車種が開発されるようになっています。ポストプロセッサも同様で、用途に合わせたものを選んで使うべき時代に入ってきているのです。開発する製品や評価手法、可視化手法など、設計ごとに作業を円滑化できるものを選ぶことが、業務の効率化や時短、生産性向上につながります。それに貢献するために、我々はポストプロセッサの充実をはかっていきます」
「デザインGUI」を進化させるためにヴァイナスは、データ量がさらに大きく、複雑化した将来、可視化の新たな方法を探る「データサイエンス」にも積極的に取り組んでいくとのことだ。
多目的最適設計に寄与する「iDIOS V1」の実用事例も紹介
カンファレンスでは、多目的最適設計に寄与するシステム「iDIOS V1」の詳細も紹介される。「iDIOS V1」は多様な設計ニーズに対応するため、現在複数のエンジンに対応している。目的関数を4つ以上設定しても安定・高速な計算・可視化が可能な「iDIOS CHEETAH」を含む設計探査を高速化した「iDIOS VHarmo-EA」(ともにJAXA開発のプログラムをベースにしている)といった最適探査エンジン、オープンソースの最適設計システム「DAKOTA」、同じくオープンソースの最適探査アルゴリズム「PYGMO/PAGMO」から選抜した「MOEA/D」の4つだ。
「iDIOS CHEETAH」は2018年のカンファレンスでも紹介されているが、今年は自動車設計における具体的な利用事例が国内自動車メーカーから語られるという(10月10日『空力・通風性能の大規模多目的最適化手法の検討』)。
その他、同社が従来扱っている流体解析 高品質メッシュジェネレータ「Pointwise」やオープンソースのCFDソフトウェア「HELYX」、設計者向け最適設計フルパッケージシステム「Sculptor」についての事例や新情報も紹介される。ユーザーにはこれらも聞き逃せないものとなるだろう。
会期 |
Hall A:CFD(プリ・ポスト・ソルバ) Hall B:最適設計・高速計算・ワークフロー 2019年10月10日(木) 9:30~18:00、懇親会18:00~19:30(開場/受付開始 9:00~)予定 |
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ワークショップ 2019年10月11日(金) 9:30~(開場/受付開始 9:00~/13:00~)予定 |
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会場 |
Hall A:CFD(プリ・ポスト・ソルバ) Hall B:最適設計・高速計算・ワークフロー 東京コンファレンスセンター・品川 5F大ホールA,B ※最寄駅 JR 品川駅 中央改札港南口(東口)より徒歩2分(駅からペデストリアンデッキで直結) |
ワークショップ AP品川 10F(Bルーム・Cルーム・Eルーム・F+Gルーム) ※最寄駅 JR 品川駅 高輪口より徒歩約3分 |
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対 象 | エンドユーザー様 ※VINASの販売ソフトウェアとサービスをご利用・ご検討中の方。 ※ユーザー会につきベンダー等の方は参加をご遠慮いただく場合がございます。 |
参加費 | 無料(事前登録制) |
参加登録申し込み | WEB申し込みはこちら ※お席に限りがございますのでお早めにお申込願います。 |
主催 | 株式会社ヴァイナス |
プログラム | 各日程の詳細はこちら |
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