今週は、文字の位置を上下に調整する方法について紹介する。この書式は「フォント」ダイアログで指定できるが、その挙動には注意すべき点もある。また、文字を上下中央に揃える方法も合わせて紹介しておこう。

文字の上下位置の変更

前回の連載でも紹介した「フォント」ダイアログの「詳細設定」タブには、文字の上下位置を調整できる書式も用意されている。この書式を利用するときは、「位置」の項目で「上げる」または「下げる」を選択し、その右にある「間隔」で上下に移動するサイズを指定すればよい。これで、選択していた文字の位置を上または下に移動させることができる。 たとえば、「上げる」「3pt」を指定すると、以下の図のように文字を配置できる。

文字の上下位置の指定

「位置」の文字を3pt上へ移動した場合

この書式は、見出しに変化をつける場合などに活用できる。以下は、文字の色と上下位置を1文字ずつ調整して、動きのある見出しを作成した場合の例だ。

上下位置の指定を利用して作成した見出し

また、上付き文字(下付き文字)を指定する場合にも、上下位置の書式が活用できる。この場合は、上(または下)に付ける文字の文字サイズを小さくしてから、「フォント」ダイアログで文字の上下位置を調整すればよい。

上下位置の書式で「TM」を指定した場合

もちろん、Wordに用意されている「上付き文字」や「下付き文字」の書式を利用しても構わない。むしろ、これらの書式を使って「上付き文字」や「下付き文字」を指定する方が一般的な手順といえるだろう。ただし、この場合は上下に付く文字のサイズや位置を調整できない。細かな文字レイアウトにこだわる方は、文字の上下位置を利用する方法も覚えておくとよいだろう。

ホームタブのフォントにある「上付き」の書式で「TM」を指定した場合(2行目)

ショートカットを使った記号入力

商標や登録商標、著作権といった記号は、キーボードのショートカットキーを使って入力することも可能だ。これらの記号を頻繁に利用する方は、以下のショートカットキーも覚えておくと便利に活用できるだろう。

・「Alt」+「Ctrl」+「T」キー …… 商標(上付き文字のTM)
・「Alt」+「Ctrl」+「R」キー …… 登録商標(丸囲みのR)
・「Alt」+「Ctrl」+「C」キー …… 著作権(丸囲みのC)

商標、登録商標、著作権のショートカットキー

上下位置を変更する際に注意すべき点

前述したように、上下位置の書式は指定方法そのものに特に難しい点がある訳ではない。ただし、その挙動には注意しておく必要がある。

まずは、以下の図を参照していただきたい。

「旭岳」の文字を4pt上へ移動した場合

この図は、3行目にある「旭岳」の文字を4pt上へ移動し、グリッド線を表示した場合の例である。この場合「旭岳」の文字だけが上へ移動し、他の文字は「もとの位置」から動かない、と考えるのが普通だ。しかし、実際にはそうならない。

よく見ると3行目にある他の文字が下へ移動されているのを確認できる。具体的には、「峰となる」や「をはじめ、十勝…」の文字が本来あるべき位置より下へ移動されてしまうのだ。つまり、「旭岳」の文字だけが絶対的に4pt上へ移動された訳ではなく、他の文字より相対的に4pt上へ配置されたことになる。このため、2~3行目の間隔は少し広くなり、3~4行目の間隔は少し狭くなる、という少し変なレイアウトになってしまう。

このような結果になる理由は、Wordが文字を配置するときのルールに原因がある。通常、Wordは行間の上下中央に文字を配置する仕組みになっている。このとき、上下位置を変更した文字があると、その「行全体の文字の高さ」が「行間の中央」に来るように行全体の配置が調整されるようである。

少し分かりにくいと思われるので、図で解説しておこう。

行間と文字の配置

上図の「文字の高さ」は、その行にある全ての文字について、一番上から一番下までの高さを合計したものである。この「文字の高さ」が「行間」の中央に来るように文字を配置するのがWordの基本的なルールとなる。このため、文字の上下位置を変更すると、同じ行内にある他の文字にまで影響を与えてしまう場合がある。

さらに、行全体の「文字の高さ」が1行の行間に収まらなくなると、2行分の行間が確保され、その行だけが急に行間が大きくなってしまう現象も起こる。

「旭岳」の文字を5pt上へ移動した場合(3行目)

このような現象を回避するには、その段落の行間を「固定値」で指定しておく必要がある。これで各行の間隔がマチマチになってしまう現象を回避できる(行間の詳細については第4回の連載を参照)。

行間の指定(「ホーム」タブにある「段落」)

たとえば、最初に示した例の行間を「固定値」の「18pt」に変更すると、以下のようなレイアウトになり、各行の間隔が一定になる。

行間を「固定値」で指定した場合の文字の配置(3行目に注目)

重箱の隅をつつくような細かい話ではあるが、Wordにはこのようなルールがあることも覚えておくとよいだろう。

サイズが違う文字を上下中央に揃えるには

最後に、文字サイズが異なる文字を、上下中央に整列させて配置する方法を紹介しておこう。たとえばWordで名刺を作成する場合、「株式会社」の文字だけを小さくし、「社名」の上下中央に配置する場合もある。

サイズが異なる文字を上下中央に整列させた配置

このようなレイアウトは、「株式会社」の文字サイズを小さくし、上下位置の書式で文字を少し上へ移動させると実現できる。しかし、何pt上へ移動させるかはケース バイ ケースとなるため試行錯誤が必要だ。

そこで、文字を上下中央に簡単に揃える方法も覚えておこう。「段落」ダイアログの「体裁」タブを開き、「文字の配置」を「中央揃え」に変更すると、その段落内の全ての文字を上下中央に整列できるようになる。この場合、上下位置の書式を指定する必要はなく、文字サイズを変更するだけでよい。

「文字の配置」の指定

色々な場面に応用できるテクニックなので、ぜひ覚えておくとよいだろう。