9月にベルギーで開催された半導体洗浄・クリーン化技術に特化した国際シンポジウム「UCPSS 2023」では、公募で採択された51件の発表が行われた。その中から注目を集めた論文を紹介しよう。

  • UCPSS 2023の講演会場のスクリーンに投影された参加者の集合写真

    UCPSS 2023の講演会場のスクリーンに投影された参加者の集合写真 (筆者撮影)

GAAナノシート構造形成のためのSiGe選択エッチに脚光

Gate-All-Around(GAA)構造のSiナノシート、フォークシート、そして究極とされるCFETでは、SiGeの選択エッチを用いてSi-SiGeの多重積層構造からSiGeだけエッチングして、単結晶シリコンでできたナノシートを基板から切り離していわば宙に浮かせるする必要があるが、そのためには、まずSiGeを酸化剤によって酸化し、その後エッチ材によって溶解させる手法がとられている。

マルチナノシートチャネルの底部や中間誘電体分離層の導入には、SiGeのGe濃度の差によるSiに対する選択比の大きな選択エッチングを利用する。SiGeの選択エッチに関しては、SCREEN(+Merck)、三菱ケミカル、独BASF(+imec)、imec(+韓国の漢陽(Hanyang)大学)、韓国の延世(Yonsei)大学が発表を行った。延世大学は、エッチング液としてH2O2、CH3COOH、HFの混合液を用い、そのエッチングメカニズムを解明したことを発表したが、企業からの発表では、独自組成のエッチング液を用いて行われたものの、その組成は公開されなかった。

  • Siと組成の異なるSiGe積層構造の選択エッチング

    Siと組成の異なるSiGe積層構造の選択エッチング。この図はUCPSS 2023の論文集の表紙を飾った (出所:SCREEN発表資料)

乾燥時の回路パターン倒壊や洗浄プロセスの環境対策に注目

微細化に伴うウェハ乾燥時の回路パターン倒壊に関して、STMicroelectronics、シンガポールのA*STAR、Samsung Electronics、米TEL America、SCREENからそれぞれ発表が行われた。STMicroelectronicsからはCMOSイメージセンサでもパターン倒壊が生じることが初めて報告された。

また、今回初めて登場した「持続可能なウェットプロセス」と題する環境対策セッションでは、STMicroelectronicsが、フォトレジストのプラズマアッシング後にSPM洗浄を不要にできることを発表。さらに、野村マイクロサイエンスが、SPMの代わりにクエン酸混入高濃度オゾン水を用いたフォトレジスト剥離の検討を報告したほか、SCREENグループは「枚葉洗浄におけるプロセスケミカルとエネルギー使用量の削減」と題して、未使用高温超純水と再生硫酸過酸化水素混合液のリサイクル手法を紹介した。

韓国・延世大学の学生が最優秀学生論文賞を受賞

UCPSSでは学生の発表を奨励することを目的とした表彰制度が設けられているが、今回はThe BEST Student Award(最優秀学生論文賞)として韓国・延世大学のTaegun Park氏に授与された。発表テーマは「Selective Si3N4 Etching for 3D NAND Integration by Using Low Concentration of H3PO4」というもので、低濃度のリン酸を用いた3D NAND集積構造の選択シリコン窒化膜エッチングにおいて、従来の85%H3PO4を用いるより30%H3PO4を用いた方がSi3N4/SiO2選択比が大きく、カルボン酸を添加することで100を超える選択比が得られたという。

次点のThe OUTSTANDING Student Awardは、フランスMinatec/CEA-Leti(フランス国立電子情報研究所)/STMicroelectronicsのThomas Mercadier氏に授与された。発表テーマは「Evaluation and optimization of particle removal with a resist peeling method」で、レジスト剥離によるパーテイクル除去の評価と最適化に関する研究を(日本およびドイツの)SCREENと行ったものであった。

  • UCPSS 2023の論文集の表紙

    UCPSS 2023の論文集の表紙。上記のSiと組成の異なるSiGe積層構造の選択エッチングの画像が使われている

ちなみ、UCPSS2023で発表された論文(査読済み)を収録した論文集は「Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces XVI」という名称にてTrans Tech Publicationsより一般書籍として発行されている。

なお、次回のUCPSSは2025年9月にベルギーで開催予定である。その前に米国電気化学会(ECS)主催の「International Symposium on Semiconductor Cleaning Science & Technology(SCST2024)」が2024年10月に米国ハワイにて開催される予定となっている。