富士フイルムは5月10日、半導体材料メーカーである米Entegrisのグループ会社で半導体用高純度プロセスケミカル事業を手掛けるCMC Materials KMGの発行済全株式を7億ドルで取得することを発表した。
KMGは、半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、被膜をエッチングしたりする半導体プロセス用化学薬品を製造している。半導体用化学薬品市場は、年々その使用頻度が増えており、年率11%で成長しているというとするほか、その薬液の性能について、従来のppbレベルから、より高いpptレベルの高純度化が求められているという。
CMCは、現在、米国・フランス・イタリア・シンガポールなどに全7か所の製造拠点を持ち、高純度な硫酸・イソプロピルアルコール(IPA)・水酸化アンモニウムなどといった半導体用プロセスケミカルを生産し、大手半導体メーカーなどに供給しているという。
富士フイルムは、フォトレジストやフォトリソ周辺材料、CMPスラリ、ポストCMPクリーナ、薄膜形成材、ポリイミドなど半導体製造の前工程から後工程まで幅広い材料を取り扱っているが、今回の買収を通じて、KMGの有する幅広い半導体用プロセスケミカルを獲得することで、半導体製造プロセスのカバー範囲を拡大し、総合提案力を高め、顧客の製造プロセスの課題解決を図っていくとしている。
また、欧米での製造拠点の拡充に加え、富士フイルムの半導体材料分野では初となる東南アジアでの製造拠点を取得することとなり、より強固でグローバルな製造体制の構築が可能となるとするほか、KMGの高い精製技術と、富士フイルムの幅広い半導体材料を開発・製造できる高度な研究開発力・品質保証力などを組み合わせることで、より高純度化した半導体用プロセスケミカルなど最先端ニーズへの対応も図っていけるようになるともしている。
ベルギーで最先端半導体性材料生産能力を拡大
また同社は、電子材料事業の拡大に向け、ベルギーの半導体材料工場を拡張し、製造設備の増強を決定したことも発表している。
同社の欧州現地法人「FUJIFILM Electronic Materials(Europe)(本社:ベルギー)」が対象で、半導体製造プロセスの基幹材料である、ポリイミド(半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される高い耐熱性や絶縁性を持つ有機材料)やフォトレジスト周辺材料など最先端半導体材料の製造設備が増強される。また、新製品の開発加速や顧客への技術サポートの強化に向けて、ポリイミドの研究開発や品質保証の設備も拡張するとしている。いずれの設備も、2023年4月末に着工済みで、2025年より稼働開始の予定。投資額は約45億円としている。
半導体市場の成長期待から同社では電子材料事業の成長に向けた積極的な設備投資を行っており、すでに日本でのCMPスラリの生産設備の導入や韓国でのCMOSイメージセンサ用カラーフィルタ材料の新工場建設なども決定しているとする。
なお、富士フイルムは、ベルギーimecの産業提携プログラムのメンバーとしてEUVレジストなど先端半導体開発用素材開発で協業しているが、競合のJSRはすでにimecと合弁会社を設立しEUVレジストの生産をベルギーにて実施しており、ベルギーや周辺地域ではimec/ASMLとの協業による半導体サプライチェーンが構築されつつある。