コピーライティングとは広義に、「人の心に働きかけ、何らかの行動を促すための文章スキル」。

このスキルは単に広告の制作担当者に限らず、企画書や提案書、依頼メールを作成する多くのビジネスパーソンに役立つものでもある。

毎月1度、月替わりで朝活を開催しているマイナビは2月、文章スタジオ・東京青猫ワークス代表の小川こころ氏を講師に招き、マイナビ社員向けのビジネススキル勉強会「BIZ-SKILL TIPS~コピーライティング編」を開催した。本稿では、勉強会で解説されたコピーライティングの手法、そしてビジネスパーソンが学ぶべき「ライティングスキル」について、事後インタビューを交えてまとめる。

文章スタジオ・東京青猫ワークス代表 小川こころ氏。新聞記者、コピーライターを経て独立。現在は文筆家、ライター、童話作家として活動中

イメージコピーとセールスコピーの違いは? どう使い分ける?


講座は、広告に用いられる「イメージコピー」と「セールスコピー」の2種についての説明からスタート。

イメージコピーとは、印象的な言葉や文章で、商品や企業の魅力を植え付け、ブランド力向上を目指すフレーズのこと。「キャッチコピー」といった方が馴染みがあるだろう。このコピーの目的は、消費者や社会の認知度を高め、イメージアップにつなげること。

一方のセールスコピーは、商品やサービスの売り上げを達成するためのフレーズで、「レスポンシブコピー」とも呼ばれる。こちらのコピーの目的は、相手の心理やニーズをリサーチし、効果的な文章で消費者の行動を促しながら購入意欲を生み出すことだ。

これらのコピーは、ターゲットや目的に合わせて使い分けられる。例えば化粧品を宣伝する場合には、商品の魅力を伝えるためにイメージコピーを用い、ユーザーに「この化粧品を使えば、肌の悩みから解放されそう」「美肌になりそう」という未来を描かせ、次のアクションにつなげるためにセールスコピーを用いる――といった使い分けだ。

実際に「文房具」のコピーを作ってみた


講座では、実際に参加者がイメージコピー、およびセールスコピーを作るワークが実施された。以下、その様子を紹介する。

小川氏によると、イメージコピーを作成する際のポイントは「誰もが知っている言葉を使って書くこと」「おもしろく、わかりやすく、シンプルであること」「人の心を動かし、何かしらの行動を促すこと」の3つだという。併せて、いくつかの有名なコピーを例に、それらの狙いや構造についての解説が行われた。

解説を基に、今度は参加者が文房具のイメージコピーを作成する。以下が完成したコピーの一部だ。

・「私にも書ける、素敵な字。」(ボールペン)
・「目立ちたいんです。」(蛍光ペン)
・「消せない過去は、ありません。」(フリクション)
・「完璧を求めるあなたに。」(フリクション)
・「開くたび、キュンとする。」(筆箱)
・「あの人に手紙を書く理由にしてみた。」(万年筆)

続いて、話はセールスコピーに移る。作成のポイントは、「ターゲットを絞り込むこと」「その商品やサービスを使うことで、生活がどう変わるか/悩みがどう解決するか/どんな喜びがあるか、というベネフィット(価値)を伝えること」「続きが読みたくなるようにすること」の3つだ。

小川氏は、「セールスコピーでは、『意外な結果』かつ『現実としてイメージできる結果』を示すのがいい。そのため、突拍子もないことを書いてはいけない」と説明する。例として、「具体的な悩みを提示することで興味を引く」「『なぜ』を文頭に置いて興味を持たせる」「『失敗しない~』から始める」といったパターンを紹介した。

解説を踏まえて受講者が作ったコピーの一部は、以下の通りだ。

・「失敗しないシャープペンシルの選び方」(シャープペンシル)
・「私の人生が蛍光ペンだけで成功した理由」(フリクション)
・「たった1枚の付箋であの上司を笑顔にした秘密」(付箋)

イメージコピーと比べて見てみると、セールスコピーでは、紹介している文房具への興味が湧きやすい印象だ。

小川氏は「まずは型を知ることが上達の近道」と語る。まずはほかのコピーを参考にしつつ、自らでコピーを作ってみて、慣れてきたらそこに”遊び”を加えていく――。この繰り返しの中で、コピーの作成能力が鍛えられていく、と説き、講座は終了した。

当誌では、終了後、小川氏にインタビューをする機会を得た。コピーに限らず、「ライティングスキル」についての考え方、鍛え方などについて、深堀りして聞いた。