スマートウォッチで睡眠をモニタリングできるモデルが増えている。この機能と普段の生活との関係性を整理してみると、どのような行為が睡眠に影響を与えているか調べることができる。睡眠の質を上げるノウハウはいろいろあるが、結局、自分の身に何が起こるのかを実際に調べる方法が確実なのだ。

前回は睡眠の質を上げる方法として、就寝前の食事に関するメソッドを紹介した。今回は睡眠の質を上げる方法として、2つ目のメソッド「お酒」を取り上げる。

  • スマートウォッチで自律神経の沈静化具合をモニタリング(Vantage Polar V2)

    スマートウォッチで自律神経の沈静化具合をモニタリング(Vantage Polar V2)

結局、お酒は睡眠に良いのか悪いのか

仕事が終わったら帰宅してビールを飲む、ワインを飲む、日本酒を飲む、焼酎を飲む、ウィスキーを飲む。別に種類はなんでもよいのだが、仕事が終わったらお酒を飲んでリラックスすることを習慣にしているビジネスマンは多い。もはや習慣化していて、その良し悪しを考えない(ようにしている)人も多いだろう。

  • 仕事が終わったら飲んでリラックス

    仕事が終わったら飲んでリラックス

しかし、耳をふさぎたくなることだが、お酒が推奨されるケースはほとんどない。悲しいことに、飲まないか、少ない量に抑えるように言われることがほとんどだ。これは睡眠においても同様である。

たしかに、アルコールには入眠をいざなう効果がある。お酒を飲むとすぐに寝付けるというのは多くの方が体感していることではないだろうか。では、なぜ睡眠によくないと言われるかというと、「睡眠の質を落とす」と言われているからだ。

これまで数回にわたり、スマートウォッチで睡眠をモニタリングし、その「質」を調べる方法を紹介してきた。実際にどのように「質」が低下するかをモニタリングして明らかにできれば、対策を練ることができる。楽しいお酒ライフが継続できるように、恐れずにモニタリングをしてみよう。

残念!お酒は睡眠の質を下げていた

筆者の場合、飲まない夜というものが存在していないので、飲んだ場合と飲まない場合を比較することはできない。比較できるのは「飲みすぎた日」と「あまり飲まなかった日」の比較だ。2020年8月から2021年4月まで9カ月間にわたってモニタリングした結果、ある程度の傾向が出ることがわかった。次のスクリーンショットは飲みすぎた晩の睡眠モニタリングの結果(睡眠ステージ)だ。

  • 飲みすぎた晩の睡眠モニタリングサンプル

    飲みすぎた晩の睡眠モニタリングサンプル

お酒を飲みすぎた晩の睡眠には、次のような傾向が出た。

  • 入眠直後の「深い睡眠」が長くなる傾向がある。
  • 睡眠後半の「レム睡眠」が短くなる傾向がある。

入眠後に「深い睡眠」が長く出るのはお酒の効果ではないかと見られる。深い睡眠は心身の回復に強く関係すると言われており、これはよいことのように思える。しかし、本来であれば朝へ向けて「レム睡眠」が長く出ていくところが、レム睡眠が短く出る。どんどん短くなることもある。

深酒をすると、上記のような症状が出るそうだ。これは深い睡眠に引きずられるようにレム睡眠が短くなるという現象で、あまり優れた睡眠とは言えないのだという。

逆に、次のスクリーンショットは、あまり飲まなかった晩の睡眠モニタリングの結果だ。

  • あまり飲まなかった晩の睡眠モニタリングサンプル

    あまり飲まなかった晩の睡眠モニタリングサンプル

あまり飲まなかった晩の睡眠の傾向をまとめると、次のようになる。

  • 入眠直後の「深い睡眠」は、深酒した日よりも短い傾向がある
  • 「深い睡眠」は、睡眠の前半に表れ、後半には出ないか短くなる傾向がある
  • 睡眠後半の「レム睡眠」が、徐々に長くなっていく傾向がある

入眠直後の「深い睡眠」は、よく飲んだ日に比べると短い。しかし、朝へ向けてレム睡眠が長くなっている。これは、レム睡眠としてはよく見られる動向だそうだ。レム睡眠は心的な回復や記憶力・学習能力に関係があると言われている。

深い睡眠もレム睡眠も睡眠全体の中で適切な割合で、適切な動向で現れることが「質のよい睡眠」だと考えられている(睡眠ステージの読み方は「スマートウォッチの睡眠トラッキングログを読めるようになろう」を参考のほど)。それに照らし合わせてみると、あまり飲んでいない日のほうが「睡眠の質」は優れているようにみえる。

実際、よく飲んだ晩の睡眠では、次のスクリーンショットのように自律神経の沈静化具合が悪い。入眠してから最初の4時間であまり副交感神経が優位になっていないのだ。交感神経が優位な状態が続いており、自律神経がうまく切り替わっていないことになる。

  • よく飲んだ晩は自律神経の沈静化が悪い

    よく飲んだ晩は自律神経の沈静化が悪い

9カ月間のモニタリングの結果、残念ながらお酒は睡眠の質を下げるというのは、少なくとも著者の場合は間違いないようだ。

諦めたらおしまいだ。ここからさらに粘ってみた

かといって飲まないかというと、そんなことはない。著者にとってすでにお酒は入眠へ向けたルーティンの一部になってしまっており、実のところ、この9カ月間はなんとかして飲みつつ妥協できるポイントを探した期間でもあるのだ。

いろいろ試してみた結果、次の2つのポイントを実践できた晩は自律神経の沈静化も進みやすく、睡眠ステージも安定してよい状態になることがわかった。

  • 飲みすぎない
  • 飲んでいる後半はよく水も飲む

著者の場合、ワインボトル1本くらいに抑えた時は、睡眠ステージも自律神経の沈静化もそれほど悪くならないことがわかった。これに前回(「スマートウォッチを使って睡眠の質を高める【就寝前の食事編】」)の内容を反映させて、固形物の摂取を寝る前よりも3時間以上前に終わらせておくと、そこそこの睡眠の質を確保できるようだ。

お酒を飲まないで済むなら、そのほうが睡眠の質がよくなるようだが、飲みたいのでこうした妥協点を見つけ出した。こうしたデータは一般的な「睡眠の質を上げる方法」のようなノウハウには掲載されていないように思う。あくまで著者の場合ということだ。

スマートウォッチを使えば、こんな感じで個人個人に適した睡眠の質を向上させる方法というものを探しやすくなる。睡眠の質を向上させる方法はなにもひとつではないのかもしれない。実際にモニタリングしていろいろな方法を試してもらえればと思う。

;;link;; https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-4/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-3/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-2/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-1/