睡眠を見て考える

最近のスマートウォッチは睡眠をモニタリングしてくれるモデルが多い。この機能を活用することで、自分の今の睡眠の状態を知り、睡眠の「質」を改善させるための足がかりとすることができる。

  • 睡眠による回復状況を示すNightly Recharge - Polar Vantage V2

    睡眠による回復状況を示すNightly Recharge - Polar Vantage V2

スマートウォッチはどのようなデータを使ってどんな睡眠データをモニタリングするのかを、次の記事で簡単にまとめた。

睡眠のモニタリングデータは、「睡眠ステージ」という形で表示するモデルが多い。さらに、「自律神経の沈静化」も計測して表示してくれるものがある。このデータの読み方は次の2つの記事で取り上げた。

スマートウォッチが計測する睡眠データを見て、自分の睡眠がどのような状態にあるのかをある程度判断できるようになったのではないかと思う。次は、どうすれば睡眠の質を改善できるのかを調べて、それを実践していく段階だ。睡眠の高い質は、そのまま生活の質を向上し、仕事の質にも反映されてくる。睡眠の質の改善はよい仕事をする上で大切な要素なのだ。

「睡眠の質」と「生活パターン」の関係性が見つかればラッキー

睡眠の質を上げると言われる行為や食事、栄養素などに関する情報は、インターネット上にも雑誌や書籍でも紹介されている。しかし、あくまでも一般論であって、それがそのまま自分の睡眠の質の向上に使えるとは限らない。定説のようなものは新しい研究結果が出てきて覆ったり、解釈が変わったりすることもある。大切なのは、実際の「自分の」モニタリングデータに基づいて、どのような行為が「自分の」睡眠の質を変えたか調べることだ。

筆者は2020年8月から2021年4月まで9カ月間にわたってPolarのスマートウォッチを使って睡眠のモニタリングデータを取り続けてみた。その中で、睡眠データが「質の高い睡眠」を示す時の生活パターンと、「質の悪い睡眠」を示す時の生活パターンがあることがわかった。本人としてはラッキーな発見だ。

  • 2020年8月〜2021年4月 著者の睡眠モニタリングデータ - Polar Flow

    2020年8月~2021年4月 筆者の睡眠モニタリングデータ - Polar Flow

筆者が見つけた関係性はあくまでも筆者の場合であって、他の人に当てはまるかどうかはわからない。ただし、少なくとも睡眠を計測し続けることで「この行為をした時は睡眠の質がよい」「この行為をした時は睡眠の質が悪い」という関係性を見つけることができたのは間違いのないところだ。したがって、筆者以外の人も同じことをすれば「良い睡眠」「悪い睡眠」と「生活パターン」に関係性を見出すことができるかもしれない。もし見つけることができたなら、それはその人にとって大きな力になってくれるはずだ。

スマートウォッチは買っただけでは意味がなく、モニタリングを続け、そのデータを生活にフィードバックしていくことで本領を発揮するのだ。ぜひ、睡眠の質を上げるための参考データとして活用してもらえればと思う。

どうしても改善しなかった自律神経の沈静化

Polarのスマートウォッチで睡眠モニタリングを開始した当初、自律神経の沈静化がどうしても改善されなかった。ほぼいつもマイナスの値だったのだ。本人はそれなりに寝たつもりなのだが、寝起きにチェックする睡眠モニタリングの結果がマイナス値というのは、朝から気分がどんよりとしてよいものではない。

  • 自律神経の沈静化が悪い毎日

    自律神経の沈静化が悪い毎日

寝起きに気分を上げるべく、いろいろ試してみると、睡眠ステージをある程度改善させることはできたのだが、自律神経の沈静化は悪いままで一向に改善しなかった。これは、睡眠の最初の4時間で副交感神経が優位になっていないことを意味している。自律神経が優位な状態が続いており、つまり、睡眠へ向けてリラックスさせることができておらず、寝落ちして最初の4時間中も自律神経の方が優位になってしまっていることになる。これでは、自律神経のバランスが崩れるというものだ。

この時期は朝から腹を下していることも多かった。消化不良でもあったのだ。実はこの辺りが改善のヒントになるはずなのだが、本人はまったく気が付かずに同じ状況を続けることになる。

改善のきっかけは「時間を忘れるコンテンツ」

筆者はお酒が好きだ。日中頑張って仕事をして、夜は酒を飲む。飲みだすのはその日によってまちまちだが、早くても20時前はない。大抵は21時や22時くらいに飲みだす毎日だ。そして、飲みながら料理をし、飲みながら食事をし、飲みならがコンテンツを観るといったような生活をしている。そして、お腹も一杯でアルコールも一杯になったところで、数秒で寝落ちするというパターンだ。

幸せな入眠ではあるのだが、ご想像どおり朝はそれほどスッキリとは行かない。飲みすぎれば若干の二日酔い気味になるし、あまり疲れが抜けきった感じのしない毎朝が日常である。

具体的にどのコンテンツだったかは忘れたが、ある時、食事を終えても目が離せないコンテンツがあった。かなり遅い時間まで見続けていたように思う。たぶん最後に固形物を食べてから2~3時間くらいは酒だけ飲みながらそのコンテンツを観ていた。

  • 睡眠で自律神経がよく沈静化した日

    睡眠で自律神経がよく沈静化した日

そして不思議と、翌朝は自律神経の沈静化が進んでいた。夜ふかししていたし、睡眠時間も短くなっていたが、それでも自律神経の沈静化は大きかった。リラックスして睡眠を迎え、副交感神経が優位な状態で寝ていたようだ。

その後も何度か似たようなことを経験し、どうも自分の場合、「最後に固形物を食べてから睡眠するまでの時間が2時間ないしは3時間ほどあると、自律神経の沈静化が進みやすい」というパターンが見られることがわかった。固形物を食べてすぐに寝ると値は最悪になることが多く、1時間後程度でもダメなことが多い。食べたものの消化のしやすさと、食べたものの量にも関係していることもわかった。どうも筆者の場合、ある程度消化が進んだ状態で寝落ちすれば、自律神経の沈静化が進みやすい体をしているようだ。

結果を生活パターンへフィードバック

何度か試してみて確信が持てたので、生活パターンを変えることにした。これまでは遅い時間に飲み食いをしていたわけだが、夕食を可能な限り早めに済ませ、寝るまで数時間は酒は飲んでも固形物は食べないように変えてみたのだ。筆者の場合、この変更は効果てきめんで、自律神経の沈静化はほぼ毎日プラスになるようになり、高い値を示すことが増えた。

生活パターンを変えたことで、緩くなりがちだったお腹もそうならなくなった。寝る前に食べると消化不良になるのか、詳しいことはわからないが、結果として状態が変わったことは間違いない。

自律神経の沈静化と睡眠ステージの改善に確実に効果があったのは少なくともあと1つあり、入眠に効果があったのは2つある。パターンが見えてくるまで9カ月間ほど試行錯誤をしたことになるが、今後の睡眠の回数を考えると、9カ月かけてもそれほど悪い取り組みではなかったかなと思う。実際に自分でやってみて、それが実際にデータとして表示されると、説得力が違うというものだ。

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