これまで2回の打ち上げを行い、いずれも宇宙への挑戦を退けられる結果となったインターステラテクノロジズ(IST)の観測ロケット「MOMO」。その3回目の挑戦となる3号機の打ち上げが、いよいよ4月30日にも実施される予定だ。目標である高度100kmの宇宙空間に到達することができれば、日本の民間開発のロケットとしては初の快挙となる。

  • ISTの観測ロケット「MOMO」3号機。全長は約10m、重量は約1,150kgだ

    ISTの観測ロケット「MOMO」3号機。全長は約10m、重量は約1,150kgだ (提供:nvs-live.com)

1号機は、2017年7月30日に打ち上げを実施したものの、打ち上げの66秒後に通信が途絶。このときは、機体に最も大きな負荷がかかる「Max Q」(動圧最大点)付近において、機体が破損したものと推定されている。

機体を強化するなどの改良を施した2号機は、2018年6月30日に打ち上げたものの、打ち上げの4秒後にエンジンが停止。機体は落下・炎上し、失敗していた。これは、1号機で発生した機体のロール回転を抑えるため、新たに搭載したホットガスジェットの姿勢制御スラスタに問題があったことがすでに分かっている。

  • あの衝撃的な打ち上げ失敗からすでに10カ月

    あの衝撃的な打ち上げ失敗からすでに10カ月…… (提供:インターステラテクノロジズ)

3号機で施した改良について、詳しくは過去記事を参照して欲しいが、今回、特筆すべきなのは、初めて実機相当の機体を使ったCFT(Captive Firing Test)試験を行ったことである。実フライトと同じ120秒間の燃焼に成功しており、前回と同じ問題は起きないはずだ。

2019年3月1日に実施したCFT試験。実機と同じ120秒の燃焼を行った

同社はCFT試験のほか、リハーサル等も念入りに繰り返しており、運用の練度という面についても、確実に以前より向上しているだろう。実際に打ち上げてみないと分からないこともまだ残っているものの、地上でやれることはほぼやり尽くした。打ち上げに成功する可能性は、かなり高くなっているのではないかと思う。

打ち上げのプロファイルは、これまでと同様。120秒間エンジンの燃焼を行い、そのまま弾道飛行により上昇、打ち上げの240秒後に最高高度に到達する予定だ。機体の高度はGPSでリアルタイムに地上から確認しており、成功していれば、すぐにアナウンスがあるかもしれない。

ペイロードは、前回と同じ高知工科大学のインフラサウンド(超低周波音)計測器のほか、3号機では新たにGROSEBAL(神奈川県相模原市)の「とろけるハンバーグ」も搭載する。同社はハンバーグの搭載について、「宇宙の街、相模原の誇りとして輝ける星になれるように、共に宇宙へ飛び立つ」としている。

3号機のウィンドウは、以下のようになっている。初日の4月30日は、昼と夕の2回。2日目の5月1日は夕方のみで、5月5日まで予備日が設けられている。なお今回、当初は5月2日以降に朝のウィンドウもある予定だったが、これは無くなった模様だ。朝のウィンドウがあると深夜1時の起床とかになるので、個人的には有り難い。

4月30日(火)

(1) 11:15~12:30
(2) 16:00~17:20

5月1日(水)

(3) 16:00~17:20

5月2日(木)~5日(日)

(4)(6)(8)(10) 11:15~12:30
(5)(7)(9)(11) 16:00~17:20

気になるのはやはり打ち上げ時の天候だ。筆者が現地入りした29日は快晴だったものの、初日の夕方から早くも崩れてくる予報となっているので、なるべく最初の昼のウィンドウで打ち上がってもらいたいところ。もう3回目で慣れているということもあり、天候の問題や船舶の侵入でも無ければ、さくっと上がってくれるのではないかと期待している。

  • 有料会場「SKY HILLS」の入口

    有料会場「SKY HILLS」の入口。勿体ないほど絶好の打ち上げ日和だった

なお、3号機の制約条件は以下の通り。これは前回までと同様になっている。

  • 風速:平均地上風速5m/s以下であること
  • 視程:視程600m以上であること
  • 降雨量:降雨量8mm/h以下であること
  • 落雷:半径10km以内に落雷がないこと
  • 高層風:落下範囲が区域外とならないこと

さて、読者のみなさんもさすがにもう「平成最後の」というフレーズは聞き飽きたとは思うが、今回のロケットは、延期無しなら「平成最後の打ち上げ」、延期されれば「令和最初の打ち上げ」となるだろう。一体どちらになるのか。いずれにしても、筆者の平成最後と令和最初の仕事は、MOMO3号機の取材で決定である。