インターステラテクノロジズ(IST)は1月22日、現在開発を進めている観測ロケット「MOMO2号機」に関するトークイベント「ロケットナイト2 ~今度こそ宇宙へ!~」を開催。現在の進捗などについて報告した。2017年7月に打ち上げた初号機は、目標であった宇宙空間には届いておらず、改良した2号機で再チャレンジする。
MOMO2号機のモックアップが初公開
イベントでは、まず同社の稲川貴大 代表取締役社長が登壇。MOMO2号機の技術面について説明した。
2号機のサイズは、全長が10mで直径が50cm。重量は1,150kgだ。エタノールと液体酸素を推進剤とする1段式の液体ロケットで、20kgのペイロードを高度100kmに打ち上げることができる。このあたりのスペックは、初号機から変わっていない。
2号機の飛行プロファイルは初号機とほぼ同じ。エンジンの燃焼時間は120秒で、その後の慣性飛行中は微小重力状態となる。打ち上げ後240秒程度で最高高度に到達し、ここで宇宙空間といえる高度100kmを突破する計画だ。成功すれば、日本の民間開発のロケットとして、初めて宇宙空間に到達することになる。
しかし日本初を狙った初号機では、打ち上げの66秒後に通信が途絶。ちょうど、機体への空力負荷が最も大きくなる「Max Q」(動圧最大点)のタイミングであったため、その時点で機体が破損した可能性が高いと考えられている。機体はそのまま慣性で上昇し、到達した高度は20km程度であったと推測される。
破損の原因は何だったのか。通信が途絶して以降のテレメトリデータがないため、原因を1つに特定することは難しかったものの、解析の結果、強度に問題があったことが分かった。そのため、インタータンク部(燃料タンクと酸化剤タンクの間の構造)のCFRPをより厚くするなど、構造を強化する対策が取られたそうだ。
そして2号機で最も大きく変わったのが、ロール制御の方式である。初号機では、窒素ガスをそのまま噴射するコールドガスジェットでロール軸まわりの回転を制御するようにしたが、打ち上げてすぐ、外乱を抑えきれなくなり、予期せぬ回転が始まってしまった。
外乱の原因についても、複数の要因が考えられ、特定はできていないそうだが、推力が5~10倍くらい大きいホットガスジェットに変更することで、外乱を抑え込む。この方式では、メインエンジンの推進剤を使い、ガスジェネレータで燃焼。発生した燃焼ガスを噴射するとき、側面の可動ノズルで向きを変えることで、トルクを制御する。
燃焼を伴うため、技術的には難しくなるものの、窒素タンクが減るため、軽量にできる。新たにガスジェネレータを追加することになるが、それでも従来よりも軽くなり、構造強化による重量の増加分を相殺するそうだ。現在、試験を行っているところで、「かなり順調に開発が進んでいる」(稲川社長)という。
エンジンについては、特に変更は無い。前回の飛行でも、エンジン自体に問題は起きておらず、推力や比推力は想定通りだった。飛行実証はできたと見ており、2号機には、初号機の予備品をそのまま搭載するそうだ。
稲川社長は、「初号機の結果は部分的成功。ミッションをフルには達成できなかったが、かなり多くの技術的な蓄積ができて満足している。今度の2号機では、ミッションもフルに成功させたい」と意気込んだ。
また、今回は初めてのペイロードミッションとして、高知工科大学・山本真行教授のインフラサウンド(超低周波音)計測器を搭載する。インフラサウンドとは、人間の耳には聞こえないような波長の低い音のこと。火山や津波など、大規模災害で発生することが知られており、防災への活用が期待されているという。
山本教授は、「低い高度ではドローンや気球が使えるが、高度40km以上はロケットしか観測手段がない」と、現状の課題を指摘。これまで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測ロケットを使ったこともあるが、機会は限られる。「実験の選択肢が増えるのは嬉しい」と、MOMOの実用化に期待を示した。