Challenergy(チャレナジー)をご存知だろうか。ホームページを訪れるといきなり、こんなセンテンスが目に飛び込んでくる。
「この地球(ほし)のエネルギーの風向きを変える」。
彼らは、風力発電にイノベーションを起こすべく尽力している。 では、Challenergyとはどのような企業なのか、どのような取り組みを実施しているのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
Challenergy(チャレナジー)とは?
Challenergyは、日本の風力発電にイノベーションを起こすべく設立された企業だ。
Challenergyという社名は、エネルギー(energy)の課題に挑戦する(challenge)という想いが込められているという。
CEOは、清水敦史氏。3月11日に発生した東日本大震災と同じく発生した原発事故を機に、当時、大手電機メーカに勤務していた清水氏は、エネルギーシフトに革命をもたらす事業を興したい、そう強く感じて起業を決意したのだという。
彼らが開発しているのは、「垂直軸型マグナス式風力発電機」という風力発電機。聞き慣れない名称だ。“普通”の風力発電機と違うようだ。
みなさんの中には、風力発電を一度はご覧になったことがあるかたも多いと思う。おそらくみなさんの“普通”の風力発電機のイメージに近いのは、3つのプロペラがある風車のような水平軸型の風力発電かもしれない。しかし、Challenergyの風力発電機は大きくイメージが異なる。
では、なぜ“普通”の風力発電機ではなく、垂直軸型マグナス式風力発電機なのだろうか。
彼らによると再生可能エネルギーとしてポテンシャルの高いものに、陸上風力、洋上風力などの風力発電が挙げられるというのだが、普通の風力発電機では、課題がある。日本は、台風大国。その台風によっては、風力発電機の支柱やプロペラが折れるなど壊れるケースもあるのだという。
そこで彼らは、この課題を逆手にとって、膨大なエネルギーを持つ台風の力をうまく利用できる頑丈な風力発電機を考えた。それが、垂直軸型マグナス式風力発電機なのだ。
垂直軸型マグナス式風力発電機は、プロペラがない。プロペラではなく円筒を回転させることで発生するマグナス効果を利用している。
ちなみに、マグナス効果とは、物体を回転させると風向きに対して垂直方向に力が働く物理現象のこと。マグナス方式は、円筒の回転数によりパワーを制御できること、プロペラよりも丈夫で低コストであるのが特徴。
また、回転軸が風向きに対して垂直の垂直軸型を採用することにより、あらゆる風向きに対応できる。プロペラは水平軸型と呼ばれ、回転軸が風向きに対して水平。風にプロペラを向ける必要がある。
そして、このマグナス方式と垂直軸型を組み合わせることで、台風にも対応できる風力発電機を実現できるのだ。
実際にChallenergyの開発した垂直軸型マグナス式風力発電機は、風速4~40m/sまでのワイドレンジに対応でき、木の葉や小枝が動くほどの風から台風のような強風まで安定的に電力を生み出すことができるという。また、風速70m/sにも耐えられるように設計されているというのだからすごい。
垂直軸型マグナス式風力発電機の実績とは?
Challenergyは、すでに実績を挙げている。例えば、2020年8月1日に沖縄の南海上で発生した台風4号。石垣市に設置された垂直軸型マグナス式風力発電機は、台風4号において発電に成功し、また、発電可能な最大瞬間風速の記録を30.4m/sに更新しているのだ。 これまで実証試験機での記録は2018年10月の台風25号時に記録した最大瞬間風速24m/sが最大値だったという。
他にも2020年1月27日、石垣市、ユーグレナグループ、Challenergyで災害時応援協定を締結したり、フィリピンに初号機として稼働を開始するなどしている。
いかがだっただろうか。災害時でもし電力系統で停電などが発生したとしても、この垂直軸型マグナス式風力発電機は風が吹いていれば、独立して電力を発生することができる。バードストライクや騒音、落雷にも配慮されているというからすごい。
もっともっと国内はもとより世界に拡大して行ってほしい、台風により毎年甚大な被害を受ける地域を救ってほしい、そんな気持ちになる興味深いテクノロジーだ。