世界最高峰の半導体集積回路技術に関する国際会議「2026 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2026)」が、2026年2月15〜19日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催される。

前半の、論文の投稿・採択状況から見えた今回の傾向分析に続き、後編となる今回は、ISSCC 2026の全体構成とプログラム、注目論文などを見ていきたい。

  • ISSCC 2025の講演会場の様子

    写真は昨年開催のISSCC 2025の講演会場の様子 (出所:ISSCC Press Kit 2025)

AIを中心に半導体の未来が語られる4つの基調講演

まず、会議の華である基調講演だが、以下の4件が行われる。

  • ISSCC 2026の基調講演登壇者4名の顔写真とタイトル

    ISSCC 2026の基調講演登壇者4名の顔写真とタイトル (出所:ISSCC)

1件目はMediaTekのVice Chairman/CEOであるRick Tsai氏の講演で、 タイトルは「Advancing Horizons for AI: Perspectives on Semiconductor Innovations(AIの未来を切り開く: 半導体革新の将来展望)」。ISSCC 2026の「ICとSoCの革新でAIを進化させる」というメインテーマに沿った講演となるという。

2件目は、IBM Fellow/Head of Science of Quantum & Information TechnologiesのHeike Riel氏による「Quantum Computing – Toward Large-Scale Fault-Tolerant Quantum Computing(量子コンピューティング - 大規模フォールトトレラント量子コンピューティングを目指して)」。3件目はCadence Design SystemsのPresident/CEOであるAnirudh Devgan氏による「Powering the AI Supercycle: Design for AI and AI for Design (AIスーパーサイクルを加速する: AIのための設計と設計のためのAI)」。そして4件目は、AppleのVice President, Hardware Technologies Program Management and InfrastructureであるHope Giles氏による「Empowering the Next Wave of Silicon Engineers(シリコンエンジニアの次の波を起こす)」で、AIなど新たな特定用途のSoCを開発していくには、次世代のエンジニアにモチベーションを与えて教育して、明日の革新的デバイスを設計できるような活動を行う必要があることを語る模様である。

チュートリアル、FORUM、ショートコース、パネルディスカッションの主なテーマ

ISSC2026は、4件の基調講演に加え、13分野37件のテクニカルセッション(うち2件は招待講演)、10件のチュートリアル(初心者向け教育的講義)、6件のFORUM、7件のショートコース、2件のパネルディスカッションなどで構成されている。

10件のチュートリアルは以下の内容となっている。

  • エネルギー効率の高いLDOレギュレータ設計の基礎
  • チップ設計者のための耐量子暗号の基礎
  • 堅牢でエネルギー効率の高いバイオメディカルインタフェースシステムの設計技術
  • メモリ内計算の基礎:システムから回路まで
  • 画像センサーの基礎:光子から画像へ
  • 高速デジタル-アナログコンバータ設計の原理と実践
  • FinFETを超える技術におけるメモリとデジタル回路設計
  • 無線通信システムにおける干渉軽減技術
  • 高性能有線トランシーバ向けクロッキングおよびCDR技術
  • ドハティパワーアンプ:基礎と最近の進歩

また、技術分野で経験豊富な設計者を対象に第一線の専門家が最先端の設計戦略を発表するFORUMは以下の内容となっている。

  • 次世代エージェントAIとロボティクスのための電力効率の高い回路とシステム
  • 400G+接続に向けた電気および光リンク
  • AI、HPC、チップレットアーキテクチャの未来を支える:ダイからパッケージ、ラックまで
  • 6G FR3(7-24GHz)の競争:ネットワーク展開からシステム統合、そして画期的な技術まで
  • AIのためのアナログとアナログのためのAI:AI時代にアナログ/RF担当者ができること、活用できること
  • 高性能データコンバータのキャリブレーションとダイナミックマッチング技術

新しい分野を深く探求したい経験豊富なデザイナーを対象として特定のトピックについて専門家が深く掘り下げた講義を行うショートコースの主なテーマは以下の通り。

  • 光通信システム入門:VCSELからフォトニクス、コヒーレントソリューションまで
  • 光サブシステム用回路:通信とその先
  • VCSELベースのソリューション:コンポーネント、回路、統合
  • シリコンフォトニクスベースのソリューション:コンポーネント、回路、統合
  • 新たな光アプリケーションと回路アプローチ

イブニングセッションとして行われる2件のパネルディスカッションのテーマは以下の通り。

  • シリコン設計のための生成AI:複雑性の克服、デザインの民主化、そして信頼の構築
  • 拡張人間 - 脳に埋め込まれたチップは認知能力を高めるのか?

ISSCCプログラム委員会が選ぶ各分野の注目論文

ISSCC 2026で発表される200件余りの一般講演は、13の技術領域、37セッションで構成されている。この中から、ISSCCプログラム委員会が選んだ各技術分野の注目論文を簡単に紹介したい。ちなみに、ISSCC 2025まで設けられていた分科会「イメージャ/医療/ディスプレイ」は、今回のISSCC 2026では「イメージャ/センサー/ディスプレイ」と「メディカル」に分けられた。

メモリ分野:“A 2Tb 4b/Cell 6-Plane 3D-Flash Memory with 37.6Gb/mm2 Bit Density and >85MB/s Write Throughput” J. M. Thimmaiah1 ほか, (Sandisk(インド/日本/米国)、キオクシア(横浜))

Sandiskとキオクシアが、第10世代の3次元NAND型フラッシュメモリについて発表。332層を積層した4ビット/セルの多値化技術を導入した2Tビットのチップで、記憶密度は1平方ミリメートル当たり37.6Gビットとしている。

メモリ分野:“A 36GB 3.3TB/s HBM4 DRAM with Per-Channel TSV RDQS Auto Calibration and Fully-Programmable MBIST”、S.Jooほか(Samsung Electronics (韓国))

Samsung Electronicsは、第6世代HBMである36GビットHBM4の発表を行う。第6世代10nmプロセスに相当する1c-nm世代のDRAMチップ12枚と4nmプロセス世代のベースダイ(制御回路)を3次元積層したものだという。

プロセッサ分野:“AMD Instinct MI350 Series GPUs: CDNA 4-Based 3D-Stacked 3nm XCDs and 6nm IODs for AI applications“、R. Adaikkalavanほか、AMD(米国、インド)

AMDがTSMCの3nmプロセスを用いたAI向けGPU「Instinct MI350」を発表する。これはNVIDIAに対抗するために開発されたGPUで、3nm採用の演算用チップと6nm採用の入出力用チップを3次元積層し、AI推論性能を高めたものとなっている。

プロセッサ分野:“2.2 A Quad-Chiplet AI SoC with Full-Chip Scalable Mesh Over 16Gb/s UCIe-Advanced Die-to-Die Interface for Large-Scale AI Inferencing” C-H. Yu, J. Baeほか、Rebellions(韓国)

韓国の半導体新興企業Rebellions(リベリオンズ)が4nmプロセスで製作したAI向けSoCを発表する。同社は、2020年に設立されたばかりのスタートアップで、チップレットベースのAIチップの開発・設計を行っている。このような新興企業がISSCCにデビューするのは注目される。

デジタル回路分野:“A 3nm, 400TOPS, 1080k DMIPS SoC with Chiplet Support for ASIL D Automotive Cross-Domain Applications”、 S. Machidaほか、Renesas Electronics(日本/ベトナム/フランス)

ルネサス エレクトロニクスがSDV向けに開発したSoCとして、3nmプロセスやチップレットを使い、400TOPS(1秒間当たり400兆回)のAI処理性能を持つ「第5世代R-Car」シリーズの発表を行う。

パワーマネジメント分野:“A Digital-Feedback Active-Gate-Driver IC for 600A 1200V SiC MOSFETs Supporting High- and Low-Side Drive with Simultaneous dVds/dt Control and Vds Surge Suppression Enabled by Miller Capacitance Calibration”、 S. Kawaiほか, 東芝(日本)

パワーマネジメント分野:“A Binary-Weighted Switched-Capacitor Gate Driver IC for Overcoming Trade-offs Between Driving Loss and Delay Time with Gate-Current Feedback Achieving 85% Driving Loss Reduction”、 K. Horiiほか, 東芝(日本)

東芝が、電気自動車(EV)に搭載するパワー半導体向けのゲート駆動ICなどに関する2件の発表を行う。東芝が電源管理用パワー半導体の開発に注力していることは注目される点であると言える。

イメージセンサ分野:“A 26.0mW 30fps 400x300-pixel SWIR Ge-SPAD dToF Range Sensor with Programmable Macro-Pixels and Integrated Histogram Processing for Low-Power AR/VR Applications” 、M. Perenzoniほか、Sony Semiconductor Solutions Europe(イタリア)、Sony Semiconductor Solutions(日本)

ソニーセミコンダクタソリューションズが単一光子アバランシェダイオード方式の測距センサ技術を発表する。AR(拡張現実)/VR(仮想現実)端末向けで、SPADの材料にゲルマニウム(Ge)を使い低消費電力の測距を可能にしている。ソニーセミコンダクタソリューションズのイタリア子会社が筆頭著者となっているため、統計上は日本からの発表としてカウントされていない。

有線通信分野:“A 32Gb/s/λ 256Gb/s/Fiber Half-Rate Bandpass-Filtered Clock-Forwarding DWDM Optical Link in a 3D-Stacked 7nm EIC/65nm PIC Technology”、 S. Songほか 、NVIDIA(米国)

NVIDIAが7nmプロセス世代の半導体集積回路と65nmプロセス世代の光電変換回路を3次元積層し、1本の光ファイバー当たり毎秒256Gビットのデータ伝送を実証したことを発表する。