毎年12月に米国で開催されている半導体デバイスに関する国際会議「IEEE International Electron Device Meeting(IEDM:国際電子デバイス会議)」。2022年は12月3日~7日に米国カリフォルニア州サンフランシスコでリアルイベントとして開催される(後日、録画されたプレゼンテーションにオンデマンドでアクセスできる方式)。
今年のメインテーマは、「トランジスタの75周年、そして地球規模の課題に対処するための次の変革をもたらすデバイス」。トランジスタは、1947年12月に米ベル研究所で発明され、2022年12月は、ちょうど75周年にあたるため、IEDMではこれらにちなんだいくつかの講演やパネル討論が企画されている。
IEDM 2022 広報委員長であり、スタンフォード大学の電気工学准教授であるSrabanti Chowdhury氏は「半導体産業は現在、おそらくその歴史のどの時点よりも世界で注目を集めている。そのため、今年のIEDMで報告される開発成果は、今までよりもはるかにインパクトがある。最終的に、これらのデバイスが、私たちの生活をより良いものにしてくれる製品となってくれるだろう」と述べているほか、「今年のプログラムで明らかになっている技術的傾向に関しては、採択された超微細化デバイスに関する論文は2D材料を採用しているものが多く、この分野に特に関心が高まっていることがうかがわれる」とトレンドを分析している。
今回のIEDMでは、実行委員会のトップ3の役職をすべて女性が占めたが、これはIEDMの歴史で初めてだという。その3人の女性とは、以下の通り。
- Barbara DeSalvo(Meta Platforms)、運営委員長
- Dina Triyoso(TEL Technology Center America)、プログラム委員長
- Kirsten Moselund(Paul Scherrer Institute/EPFL)、プログラム副委員長
220件以上の一般講演に加えて基調講演や招待講演も盛りだくさん
2022年のIEDMテクニカルプログラムは、一般応募から採択された220件以上のプレゼンテーションに加えて、パネル討論、フォーカスセッション、チュートリアル、ショートコース、サプライヤ展示、IEEE/EDS賞のプレゼンテーション、その他のイベントで構成されている。主要セッションの議論テーマから、現在および将来、どんなテーマが注目されているか探ってみたい。
チュートリアル セッション
新しい技術に関するチュートリアルセッションは、教科書レベルの知識と最先端の現在の研究との間のギャップを埋め、参加者に新しい関心分野を紹介するために、その分野の専門家が各テーマについて80分で講義する。今年は以下の件のチュートリアルが行われる。
- FEOLの信頼性:基本から最先端および新興のデバイスと回路まで。講演者はBen Kaczer氏(IMEC)
- 半導体産業向けのナノファブリケーションと3D集積技術の有効化。講演者はQiangfei Xia氏(マサチューセッツ州立大学)
- ニューロモーフィックコンピューティングのための抵抗メモリベースの概念。講演者はElisa Vianello氏(CEA-Leti)
- 先進パッケージングおよびハイブリッドボンディングの時代。講演者はSitaram Arkalgud氏(東京エレクトロン)
- 2nm CMOS以降のイノベーションとテクノロジー。講演者はTenko Yamashita氏(IBM)
- マイクロ流体力学と電子チップの統合 — 臨床診断への応用。講演者はCarlotta Guiducci氏(EPFL)
ショートコース
チュートリアルとは対照的に、終日開催となるショートコースは1つの技術的なトピックに焦点を当てて重要な分野や開発について世界中から招いた各テーマ6名ずつの専門家から学び、専門家とネットワークを形成する機会を提供する。
- ゼタスケールコンピュ―テイングを実現するデータセンタや画像処理のための高性能技術。オーガナイザーはRuth Brain氏(Intel)
- AIおよび高性能コンピュータのための次世代高速メモリ。オーガナイザーはYih (Eric) Wang氏(TSMC)
基調講演
- 「75年におよぶトランジスタの革新を祝い、次の半導体の大きな挑戦を見据える」 Ann Kelleher氏(Executive VP/General Manager of Technology Development,Intel)
- 「イメージングおよびセンシング技術を通して人の能力を拡張する」 Yusuke Oike氏(Sony Semiconductor Solutions)
- 「シリコンベースのVLSI技術を用いた完全フォールトトレラント量子コンピューティング」 Maud Vinet氏(CEA-Leti)
パネル討論
- 「トランジスタ技術の75年」
トランジスタ発明75年を祝い、次の75年のトランジスタ技術について議論する。
(次回は11月17日に掲載します)