分野によって充足度が変わる部材・ドライバIC市場
IHSの宇野匡シニアアナリストは、FPDに用いられる部材ならびにドライバIC市場についての説明を行った。
有機ELディスプレイの部材は種類も少なく、使用量も少ない。ディスプレイの画質は発光材料の特性に直接起因する。材料開発には通常長期間が必要となり、大型パネルではウェットプロセスで使用できる材料の開発が期待されている。大型パネルでの本格的な有機EL採用には材料開発が不可欠であり、予測は困難である。
一方、TFT-LCDの部材は種類が多く、使用量も多い。今後もそれぞれの部材の厚み低減により、透過率改善とコストダウンが同時進行する。また、部材の機能統合も起こると予測しており、画質改善とコストダウンも同時進行することとなるとするほか、ガラス基板については、比較的にひっ迫した状況が続くものとの予測を示した。
IT機器向けドライバICもひっ迫した状況が予測されている。台湾の大手ファウンドリであるUMCが2017年に8インチウェハラインのドライバIC生産能力を約30%カットしたためである。UMCはカットした生産能力をパワーIC・自動車用MCU・スマホ用ロジックICに振り向けている。2019年にも同等の生産能力をカットするとの情報もあり、今後の動向を注視する必要があるという。
この結果、台湾ドライバICメーカー各社は一律、UMCからの供給を削減されており、中でもNovatek、Himax、Raydiumなどが影響を受けているとされる。一方の台湾ドライバICメーカーもテレビ向けを優先しており、価格の安いIT機器向けドライバICの供給を絞らざるを得ないのが実情である。
従来、台湾の半導体ファウンドリはドライバICは安価ではあるものの、注文数が多いため、半導体の市況にあわせてバッファとして利用してきたほか、中国のファウンドリの多くもほとんどドライバICを手がけておらず、IT機器向けのドライバICのひっ迫は、当面の間、続くものと予測されるという。
タッチパネル市場
IHSのプリンシパルアナリストである大井桃子氏はタッチパネル市場についての説明を行った。
組み込み(Enbedded)タイプのタッチパネルについては、外付け(Add-on)タイプがローエンドスマホのほか、プレミアムスマホ、フレキシブル・折り曲げ、車載、大型といった新たな市場に活路を見出していくとする。
また、タッチパネルの各種部材は、外付け化と共に減少していくもの、一方で増加していくものとに分かれるとする。ただし、今後も増加が見込まれる部材には新規参入が活発なため、価格競争が起こるという課題があるという。一方、全体的に減少トレンドにある部材であっても、車載などの特定用途では市場拡大が見込まれるほか、用途によっては特有の付加機能が求められるため、これに対応できる部材メーカーには事業拡大が見込めるという。
さらに、徹底したコストダウンと高品質を両立する事で、新興メーカーの追随を許さず規模の商売を維持するメーカーも存在する。ただし多くの場合、特許の期限と共に新規参入メーカーがなだれ込むケースが多く、市場参入と利益回収のスピード感が必要となるともした。
このほか、製品からのニーズが変わる事で需要トレンドが一気に変化する事もある。狭額縁化によって顔認証方式が指紋認証にとって代わった事はその1例であるし、複雑なノッチデザインによってフィルムセンサの性能が再び評価されるようになってきている。
なお、フレキシブル、特に折り曲げ可能なタッチパネルには従来にない要求性能があるため、新素材が市場投入されることで、拡大が期待できる市場になると同氏はコメントしていた。