前回、前々回は、ChatGPTの概要や使い方、活用例などを簡単に説明しました。 今回は、ChatGPTでできることとできないこと、より具体的な活用例や注意点について説明します

→連載「ChatGPT入門 - 初めてのAIチャット活用」の過去回はこちらを参照。

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※ 本稿の内容は、全て執筆時点(日本時間:2023年3月24日)での情報です。利用規約など、今後も変更される可能性があるので最新の情報を確認してください。

ChatGPTの使いどころ・活用例

第1回では、ChatGPTは検索の代替として使えるだけでなく、小説や論文、プログラムを書いてもらったり、英文の添削をしてもらったりといった活用方法があることを紹介しました。

また、前回は「まずは使ってみよう」ということで、ChatGPTにアイスクリーム店のキャッチコピーを考えてもらう例やVSCodeの拡張機能を利用する例などを紹介しました。

今回は上記に関連したより具体的な例として、以下の活用方法を紹介します。

  • ソースコードのレビューをしてもらう
  • 英会話や英語の学習に活用する
  • Excelやスプレッドシートの関数について教えてもらう
  • APIを用いてChatGPTとスプレッドシートを連携させる
  • 作詞や小説執筆などの創作をしてもらう

ソースコードのレビューをしてもらう

前回、ソースコードを出力する例を紹介しました。 ChatGPTはソースコードを出力させるだけでなく、ソースコードのレビューも行うことができます。

実際にやってみましょう。以下は、Javaで「Hello World」と出力するソースコードのレビューをした例です。

  • 正しいソースコードを入力した場合

ご覧の通り、ソースコードが正常に動作するであろうことが回答されています。それに加えて、より良いコードにするための改善点まで添えてくれています。

では、間違ったソースコードを入力するとどうなるでしょう? 3行目の「System.out.println」の最後から2文字目「l(エル)」を意図的に削除した、このままでは動作しないコードを入力してみます。

  • 間違ったソースコード(Typoを含む)を入力した場合

しっかりと間違いが指摘されました。また、今回も改善点を添えてくれています。このように、ChatGPTではソースコードのレビューが可能です。プログラミングの勉強をする際の先生代わりになるでしょうし、自分が作成したソースコードのダブルチェックなどにも使えるでしょう。

ソースコード関連では、他にも以下のようなことが可能です。

  • コードの内容を説明してもらう
  • コメントを記載してもらう
  • 練習問題を作成、出題してもらう
  • テストコードの生成
  • バグの発見

普段自分が行っている作業について、一度ChatGPTにお願いしてみると、「こんなこともできるのか」「これはできないのか」といった気付きが得られるかもしれません。ただし、業務上の機密情報などを入力しないように注意することが必要です。これはこの例に限らず、以降で紹介する例でも同様です。この注意点については、本稿の後半でより具体的に説明します。

英会話や英語の学習に活用する

ChatGPTは英語にも対応しているので、英語の勉強にも役立てることができます。以下は、日常会話で使える例文を教えてもらった例です。

  • 日常会話で使える英会話例文

場面などを指定することで、より自分が勉強したい・知りたい例文を得ることもできます。「ビジネス上で使いやすい」という条件を加えて質問してみましょう。

  • ビジネス場面で使える英会話例文

先ほどよりも、よりビジネス場面に特化した例が提示されました。

また、以下のように、英熟語の一覧を発音記号なども添えて表形式で出力することもできます。

  • ビジネスでよく使う英熟語

このように、英単語や熟語、例文を教えてもらうことができます。Web検索で自分の使いたい場面や実力にあった情報を探すよりも、条件やレベル、欲しい情報量を指定できるので、自分が求めている答えをより容易に得られるでしょう。英会話が必要な際の予習・英語学習に活用できそうです。

Excelやスプレッドシートの関数について教えてもらう

仕事でもプライベートでも、プログラミングや英語だけでなくExcelなどの表計算ソフトを使う方も多いかと思います。表計算ソフトを使用する際、やりたいことに対してどのような関数や式を使ってどのような引数を与えればいいか、誰しも一度は検索したことがあるのではないでしょうか。ChatGPTでは表計算ソフトの関数についても質問することができます。

姓と名、および年齢が記載されている表から、姓をキーに年齢を検索したいケースを考えます。Excelに記載されている表部分をそのままコピーし、ChatGPTの質問欄にペーストして、やりたいことを添えて聞いてみましょう。

  • Excelの関数について質問した例

「年齢を出力するにはVLOOKUP関数を使えば良い」という回答が返ってきました。それだけでなく、関数の概要や引数の説明まで回答されています。

皆さんも今までは、Webで検索した上でいくつかの情報・ページを参照し、そこに記載されている内容を自分のデータややりたいことに照らし合わせながら関数を使っていたのではないでしょうか。

ChatGPTであれば、手元のデータを例としてそのまま貼り付けて、自分のデータに即した回答(入力すべき関数)を得ることができます。

APIを用いてChatGPTとスプレッドシートを連携させる

前回紹介したChatGPT APIを用いて、スプレッドシート内でChatGPTを使用することも可能です。ここではGoogleスプレッドシートの例を紹介します。

まずは、GoogleスプレッドシートにChatGPTのアドオンを追加する必要があります。

Googleスプレッドシートの「拡張機能」から「アドオン」を開き、「アドオンを取得」を選択します。

  • Googleスプレッドシートのアドオン取得手順

「GPT for Sheets and Docs」を検索してインストールします。

  • ChatGPTのアドオンのインストール

インストールが完了したらスプレッドシートに戻って、「拡張機能」から「GPT in Google Sheets and Docs」を開き、「Set API key」を選択して自分のAPI keyを設定します(API keyの取得手順は、前回の記事を参照してください)。

  • API keyの設定

これで準備は完了です。「GPT」という関数を用いて、ChatGPTの出力結果を利用することができるようになりました。以下は、企業名の列に対して、従業員数と事業内容の列をGPT関数で出力した例です。

  • APIを用いて企業名に対する従業員数、事業内容を取得する例

このように、スプレッドシート内でChatGPTの出力をそのまま使用することができます。何かの調査をしたり、先ほど紹介したような英語の勉強をしたりする際、Excelのように表形式で一覧化して出力したいシーンで役立つでしょう。

ただし、「ChatGPTの回答内容は正しいとは限らない」という点には注意が必要です。この点については、本稿の後半でも改めて具体例を添えて説明します。

作詞や小説執筆などの創作をしてもらう

ChatGPTでは、作詞や小説など文章を執筆する創作作業も可能です。以下は作詞や物語の創作を依頼した例です。

  • 作詞をお願いした例

  • 物語の創作をお願いした例

どちらも与えた条件にある程度のっとって創作してくれているように見えます。こういった創作物の出力内容に関する著作権や商用利用について気になる方もいると思いますが、その点についても後半で説明します。

ChatGPT活用の幅は広い

ここまでいくつかの活用例を紹介してきました。その他にも、例えば以下のようなことが可能です。

  • 試験問題に答えさせる
    • 数学や英語の問題はもちろん、国家試験やセンター試験などの問題を答えさせることすらできます。
  • 記事の見出し・目次の検討を考えてもらう
  • ペットの名前を考えてもらう

自分がズバリ知りたいことを聞くだけではなく、アイデアや候補を挙げてもらって意思決定や議論のインプットに利用することもできるのです。

また、以下のような普段皆さんが行っているであろう作業をある程度代替させることも可能です。

  • 議事や文章を要約する
    • 文字起こしツールなどと併用すれば、会議の音声データから議事録・要約を作成することも可能でしょう
  • 設計書やビジネスルールを作成する
    • 条件やフォーマットをうまく指定すれば、プログラミングのインプットとなるような設計情報も出力できます

繰り返しにはなりますが、業務情報や機密情報の扱いに注意が必要です。また、「出力結果が合っているとは限らない」「完璧なものが出力されるわけではない」という点にも十分に気を付けるべきです。

ChatGPT使用の注意点とは?

これまで紹介したように、ChatGPTは幅広い用途に活用できます。では使用するにあたって注意すべき点や制限事項は無いのでしょうか?

入力についての注意点 - 機密情報や秘密の情報について

まずは入力について考えてみましょう。どのような情報も気にせずにChatGPTに入力してしまって問題ないのでしょうか?

OpenAIの利用規約を確認すると、以下の記載があります。

(c) Use of Content to Improve Services. We do not use Content that you provide to or receive from our API (“API Content”) to develop or improve our Services. We may use Content from Services other than our API (“Non-API Content”) to help develop and improve our Services. You can read more here about how Non-API Content may be used to improve model performance. If you do not want your Non-API Content used to improve Services, you can opt out by filling out this form. Please note that in some cases this may limit the ability of our Services to better address your specific use case.

「API経由で入手した情報は学習には使用しない」と記載がある一方で、「非APIコンテンツを使用してモデルのパフォーマンスを向上させる方法はこちら」と記載があります。リンクをクリックすると、以下の記載があります。

When you use our non-API consumer services ChatGPT or DALL-E, we may use the data you provide us to improve our models. You can request to opt-out of having your data used to improve our non-API services by filling out this form with your organization ID and email address associated with the owner of the account.

「非APIサービスを使用した場合、入カデータはモデル改善に使用されることがある」と記載されています。API経由の情報を提供したい場合、および非AP経由の情報を提供したくない場合(オプトアウトしたい場合 いずれも「このFormから連絡してほしい」と記載があります。

ChatGPTが注目を浴びるにつれて、業務情報などの扱いにも注目が集まっており、「ChatGPTオプトアウト」といったキーワードに関連するニュース記事も増えてきています。今後、規約は変わる可能性はありますが、個人情報や会社の機密情報などをChatCPTに入力するのはコンプライアンスなどの観点から言って避けるべきでしょう。仮にそういった情報を扱いたい場合は、上記のオプトアウト申請を利用すべきでしょう。

出力についての注意点 - 著作権は誰のもの?商用利用は可能?

入力に関する注意点はわかりました。では、出力についてはどうでしょう。気にするべき点や注意点はないのでしょうか? ここでは、著作権や商用利用について見てみましょう。

第1回でも説明した通り、ChatGPTは人工知能研究所 OpenAIによって開発されています。著作権については、OpenAIの利用規約に記載されています。

(a) Your Content. You may provide input to the Services (“Input”), and receive output generated and returned by the Services based on the Input (“Output”). Input and Output are collectively “Content.” As between the parties and to the extent permitted by applicable law, you own all Input. Subject to your compliance with these Terms, OpenAI hereby assigns to you all its right, title and interest in and to Output. This means you can use Content for any purpose, including commercial purposes such as sale or publication, if you comply with these Terms. OpenAI may use Content to provide and maintain the Services, comply with applicable law, and enforce our policies. You are responsible for Content, including for ensuring that it does not violate any applicable law or these Terms.

「全ての権利はユーザーに」と記載されているので、著作権はユーザーにあるように読めます。

また、商用利用についても、「コンテンツポリシー利用規約に従えば可能であること」がFAQのNo.14に記載されています。

  1. Can I use output from ChatGPT for commercial uses?
    ・Subject to the Content Policy and Terms, you own the output you create with ChatGPT, including the right to reprint, sell, and merchandise - regardless of whether output was generated through a free or paid plan.

一方で、利用規約には以下の通り「他のユーザーによって生成されたものは、お客さまのコンテンツにはならない」という記載もあり、ある程度のオリジナリティも必要となりそうです。

(b) Similarity of Content. Due to the nature of machine learning, Output may not be unique across users and the Services may generate the same or similar output for OpenAI or a third party. For example, you may provide input to a model such as “What color is the sky?” and receive output such as “The sky is blue.” Other users may also ask similar questions and receive the same response. Responses that are requested by and generated for other users are not considered your Content.

ChatGPTはWeb上の情報をベースとして学習しています。そのため、他者に著作権がある内容が回答として返ってくる可能性は十分あります。それをそのまま自分のコンテンツとして公開、商用化などしてしまうと、他者の著作権を侵害してしまうかもしれません。

第1回でも説明しましたが、ChatGPTは回答の出典なども示してくれません。したがって、確かにオリジナリティがあるのか、他者の著作権を侵害してしまっていないかのチェックは必要となるでしょう。

その他、Usage policiesも公開されています。違法行為への利用やプライバシー侵害など、ChatGPT使用にあたっての禁止事項が記載されているので、こちらも参考にしてください。

学習データに最新の情報が含まれない(2021年9月分まで)

ChatGPTは学習データとして2021年9月までのデータを利用しています。 そのため、それ以降の内容について質問しても適切な回答が返ってきません。

例えば、2022年に大変盛り上がったサッカーワールドカップですが、ChatGPTに聞いても最新の情報は得られません。ワールドカップ開催期間が学習データの範囲外であるためです。

  • 学習期間(2021年9月)より後の情報について質問した例

一方で、2023年3月23日(現地時間)、OpenAIがChatGPTのプラグインを発表しました。プラグインを用いれば最新の情報についてもChatGPTに答えさせることが可能となるでしょう。現在、プラグインを使うには順番待ちが必要です。気になる方はウェイトリストに登録してみてはいかがでしょうか。

回答内容が正しいとは限らない

内容が正しいとは限らない、という点にも注意が必要です。試しに「豊洲でおすすめのラーメン屋さん」をChatGPTに聞いてみました。

  • 正しくない回答が返ってきた例

パッと見ると全てそれらしい回答に見えますが、各店舗についてGoogleで検索してみるとそれらの店舗は実在しないことがわかります。

このように、ChatGPTは間違った情報を回答してしまうことがあります。出典も示してくれないため、回答内容の妥当性は自分で確認することが必要です。この点については、FAQのNo.4にも記載されています。

4.Can I trust that the AI is telling me the truth?

・ChatGPT is not connected to the internet, and it can occasionally produce incorrect answers. It has limited knowledge of world and events after 2021 and may also occasionally produce harmful instructions or biased content. We'd recommend checking whether responses from the model are accurate or not. If you find an answer is incorrect, please provide that feedback by using the "Thumbs Down" button.

多言語に対応できるのか

ここまで主に日本語での質問・回答の例、および英語や英会話に関する回答例を紹介してきました。ChatGPTは他の言語にも対応できるのでしょうか? ChatGPTに聞いてみましょう。

  • 日本語以外にも対応できるか聞いてみた際の回答

多言語に対応しているが言語によって精度は異なる、とのこと。確かに筆者が試した感覚では、日本語よりも英語の方が精度は高く感じました。その点もChatGPTに聞いてみましたが、やはり英語の方が精度は高いようです。

  • 日本語と英語の精度について聞いてみた際の回答

実際に業務利用するにあたって

ここまで、ChatGPTのさまざまな活用例や利用にあたっての注意点について説明してきました。いくつか気をつけるべき点こそあるものの、さまざまな分野で利用できる可能性があるため、今後もどんどん活用されていくでしょう。

ただし、決して万能なわけではないので、前回説明したようなプロンプトエンジニアリングなどを意識して入力を工夫した上で、ChatGPTが得意な分野に適用することが重要になります。

また、今後ChatGPTが普及するにつれて、世の中に似通ったChatGPTのアウトプット(記事や小説などの文章、ソースコードなど)が出回るかもしれません。何が正しい情報で何がそうでないのか、今得ている情報はChatGPTによって出力されたものなのかどうか、といった点は意識する必要がありそうです。

では、業務へのChatGPTの活用は現実的なのでしょうか? 今回挙げたような、ChatGPTでできることとできないこと、利用にあたっての注意点などを意識すれば、実際の業務での活用も可能かもしれません。

実際、早くも社内のAIサービス利用のガイドラインを策定した企業も出てきています。同ガイドライン内では、本稿でも紹介した以下の留意点なども挙げられています。

  • 業務情報や機密情報の入力可否、利用規約の確認
  • 出力が正しいとは限らないこと
  • 出力についてAIが出力したという点の明記

皆さんも業務でのChatGPT利用可否などを検討する際は、本稿や上記ガイドラインで挙げている内容なども参考にしてみるといいかもしれません。

* * *

今回はChatGPTでできることとできないこと、具体的な活用例や注意点を紹介しました。今後もChatGPTの活用は急速に広がっていくでしょう。一方でそれに付随して、注意点や気を付けるべきことも多々ある、ということは強く意識しておく必要があります。

次回は、ChatGPTのアーキテクチャや動作原理など、一歩踏み込んだ内容を紹介します。2023年3月15日(日本時間)にOpenAIが発表した「GPT-4」についても簡単に紹介する予定です。お楽しみに!