新しいテーマで掲載を始めた矢先のことで申し訳ないが、機会があり、ANA貨物輸送機の取材が実現した。そこで「鮮度」を優先して、そちらの話を先に取り上げることとしたい。

今回取り上げる機体は、ANAの777F。その名の通り、ボーイング777の貨物型で、胴体が短い -200 シリーズと同じ規模の機体になる。ANAは2019年7月から777Fを運航しており、2機が稼働中。さらに2028年度以降、777-8の貨物型を2機、導入する計画となっている(このほか、767の貨物型が9機ある)。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • 取材対象になったANAの777F(登録記号JA771F)  撮影:井上孝司

  • ANAが運航している、もう1機の777F(登録記号JA772F) 撮影:井上孝司

777Fとはどんな機体か

777Fは777ファミリーの一員だから、当然ながら胴体断面は旅客型777と同じ。よって床下貨物室(ロワーデッキ)の断面も旅客型777と同じになる。

異なるのは、貨物型の777Fは旅客型の客室にあたるメインデッキにも貨物を載せられるところ。だから、貨物の最大搭載量は旅客型777-300の約30tに対して、777Fは約100tと大幅に増えている。

ANAが公開している情報を基に、載せられるULDの数を表にしてみた。ロワーデッキは主翼を境にして前後に分かれているので、それぞれの数字を示す。ロワーデッキ最後部にあるバラ積み貨物室は、この表の対象に含めていない。

旅客型777と貨物型777の、コンテナやパレットの搭載数

  メインデッキ ロワーデッキ(前方) ロワーデッキ(後方)
777-200 C18 / P6 C14 / P4
777-200ER C18 / P6 C10 / P3
777-300/300ER C24 / P8 C20 / P6
777F / P27 C18 / P6 C14 / P4

「C18 / P6」とあった場合、「コンテナ18個またはパレット6枚」という意味。ただしコンテナの数字は左右に1列ずつ並べた場合なので、横幅いっぱいの大きなコンテナを使用すると、そこは数が半減する。

面白いのは、ANAが公開しているデータにおいて、777Fのメインデッキで示されているULD(Unie Load Device)搭載上限の数字はパレットのみで、コンテナが出てこないこと。もちろん、メインデッキの断面サイズに合わせたコンテナもあり、それを使うかどうかは個々のエアラインの判断によるのだそうだ。

胴体断面の違いがどう影響するか

第408回第409回で取り上げたヤマトグループのA320 P2Fは単通路機ベースの貨物機だったが、777Fはワイドボディ機ベースの貨物機。つまり胴体断面が大きい。すると何が違ってくるのだろうか。

貨物の搭載にコンテナやパレットのようなULDを使用するところは、単通路機ベースだろうがワイドボディ機ベースだろうが変わらない。しかし胴体断面の違いは、使用できるULDの種類やサイズに直結する。

もちろん、胴体断面が大きくなる分だけ大型のULDを使用できるから、大きな貨物を運ぶには有利である。実際には、機体の横幅いっぱいを占めるULDと半分の幅のULDの両方を用意しておき、積荷に合わせて使い分けることになる。

そのため、個々の貨物搭載区画につけられる記号(旅客型でいうところの席番みたいなもの)に、胴体断面に起因する違いが出てくる。777Fでは前方から順に14区画があるが、このうちA~Pまでの13区画は左右の別がある。最前列なら左舷側が「AL」、右舷側が「AR」。LはLeft、RはRightである。

最後部のRは中央だけなので、「L」や「R」はつかない。なお、Iは数字の1と紛らわしいからか、使われていない。

  • 客室の側壁・下寄りに、貨物搭載区画を示す記号が書かれている。写真では「JL JL」の間が「J」区画で、「L」がついているから左舷側だと分かる 撮影:井上孝司

  • メインデッキの全景を機首側から後方に向けて撮影。ULDを移動するためのローラーや、固定用の金具・レールが床に取り付けられているのは貨物型の通例通り 撮影:井上孝司

  • メインデッキのカーゴドアを内側から。上ヒンジで上方に向けて開く構造 撮影:井上孝司

  • そのカーゴドア部分だけ床の仕掛けが異なり、ULDを前後方向だけでなく左右方向にも動かせるようになっている。ここは区画名称でいうと「L」にあたる。カーゴドアに隣接する区画「LL」だけ、他の区画よりも少し幅が狭いらしい 撮影:井上孝司

  • その前方、J~Kの区画は、A~Hの区画と比べて床が混み合っている。してみると、この区画でなければ載せられない貨物がありそうだ 撮影:井上孝司