Excelには、地図を色で塗り分けて数値データを示す「マップ」(塗り分けマップ)というグラフも用意されている。今回は、この「マップ」グラフの使い方を紹介していこう。グラフの作成そのものは特に難しくないが、思い描いていたイメージに近づけようとすると、なかなか上手くいかない場合もある。その理由についても紹介していこう。

「塗り分けマップ」の作成手順

今回は、地図に色を付けて数値データを示す「マップ」グラフ(塗り分けマップ)について紹介していこう。まずは、グラフの作成に使用するデータ表を示す。このデータ表は「自家用車の普及台数」を都道府県別にまとめたものだ。

出典:一般財団法人 自動車検査登録情報協会「自家用乗用車の世帯当たり普及台数 令和3年(2021年)」 https://www.airia.or.jp/publish/statistics/mycar.html

  • グラフの基となる表

今回は「世帯当たりの普及台数」のデータを「マップ」グラフで示してみよう。グラフ化するセル範囲を選択し、「挿入」タブにある「マップ」→「塗り分けマップ」を選択する。

  • 「マップ」グラフの作成

すると、各都道府県のデータを「色の濃淡」で示した地図が作成される。これが今回紹介する「マップ」グラフとなる。

  • 作成された「マップ」グラフ

「マップ」グラフの特徴は「着色した地図」で数値データを示せること。ただし、思い通りに使いこなすには、カスタマイズ方法や「マップ」グラフの仕様について学んでおく必要がある。順番に解説していこう。

「マップ」グラフの色のカスタマイズ

まずは、「マップ」グラフの色をカスタマイズする方法を紹介する。初期設定では、青色の濃淡で数値データが表現されている。この色を変更したいときは「地図の部分」を右クリックして「データ系列の書式設定」を呼び出せばよい。

  • 「データ系列の書式設定」の呼び出し

すると、以下の図のような設定画面が表示されるので、最初に「グラデーションの色数」(2色/3色)を選択する。

  • 色数の選択

次は、グラデーションで表現する「数値の範囲」を指定する。初期設定では「最小値」、「中央値」、「最大値」といった項目が選択されているはずだ。これらを0や1,000などの数値で指定するには、指定方法を「数値」に変更しておく必要がある。

  • 色の範囲を「数値」で指定する場合

すると、右端のテキストボックスが入力可能な状態になり、自由に数値を指定できるようになる。今回は「世帯当たり1台」を基準に0~2台の範囲で色分けしたいので、以下の図のように数値を指定した。

  • 最小値、中間値、最大値の「数値」を指定

最後に、各数値に対応する「色」を指定する。今回の例では、基準となる「世帯当たり1台」を「白色」で表現し、それ以下を「緑色」のグラデーション、それ以上を「赤色」のグラデーションで表現するように、以下の図のように色を指定した。

  • 最小値、中間値、最大値の「色」を指定

このように「系列の色」の書式を変更すると、「マップ」グラフの色を自由にカスタマイズできる。

ただし、グラデーションに「白色」を含めると、その近辺にあるデータ(今回の例では「世帯当たり1台」の近辺にあるデータ)が背景と同色になり、地図を識別できなくなってしまう。

  • 色をカスタマイズした「マップ」グラフ

こういったトラブルに対処する方法は2つある。1つ目は、プロットエリアに適当な色を付けてあげる方法だ。具体的には、「地図の余白部分」を右クリックし、「塗りつぶし」コマンドで色を指定してあげればよい。

  • プロットエリアに「塗りつぶし」を指定した場合

2つ目は、都道府県の境界を線で示してあげる方法だ。この場合は「地図の部分」を右クリックし、「枠線」コマンドで線の色を指定してあげればよい。

  • 地図に「枠線」を指定した場合

もちろん、これら2つの方法を組み合わせても構わない。状況に応じて最も効果的な対処方法を採用するとよいだろう。

「凡例」の書式設定

続いては、「マップ」グラフの「凡例の位置」を変更する方法を紹介しておこう。「凡例の領域内」を右クリックして「凡例の書式設定」を選択する。

  • 「凡例の書式設定」の呼び出し

すると、以下の図のような設定画面が表示され、「凡例の位置」を上下左右から選べるようになる。さらに、「凡例をグラフに重ねずに表示する」をOFFにして、地図の内部に凡例を表示することも可能だ。

  • 凡例の書式を変更

地図の周囲に余白(海)があるときは、凡例を地図の内部に移動しておくとよい。状況によっては、この書式変更で地図を大きく表示できる場合もある。

  • 凡例の書式を変更した「マップ」グラフ

「マップ領域」の変更

これまでに解説した「マップ」グラフを見たときに、「もっと地図を大きく表示できないだろうか?」と感じた方もいるだろう。これについて詳しく知るには、「マップ領域がどのように決定されるか?」を学んでおく必要がある。

ということで、いくつか実験をしてみよう。以下のデータ表は、先ほどのデータを東北地方についてのみ抜粋したものだ。

  • 「マップ」グラフの作成

この表を基に「マップ」グラフを作成すると、以下の図のような結果が得られる。東北地方のデータしか存在しないのに、日本全体の地図が表示されてしまう。

  • 作成された「マップ」グラフ

このような結果になるのは、「マップ領域」の設定が「自動」に初期設定されていることが原因だ。

データが存在する地域だけを地図で示したい場合は、「地図の部分」を右クリックして「データ系列の書式設定」を呼び出し、「マップ領域」の設定を「データが含まれる地域のみ」に変更する必要がある。

  • 「マップ領域」の変更

すると、東北地方の地図だけを拡大表示した「マップ」グラフにカスタマイズできる。

  • 地図の範囲を変更した「マップ」グラフ

このように、カスタマイズにより思い通りの結果を得られるケースもあるが、そうならないケースもあることに注意しなければならない。今度は、関東地方のデータを使って同様の実験をしてみよう。

  • 「マップ」グラフの作成

「マップ」グラフを作成し、「マップ領域」を「データが含まれる地域のみ」に変更すると、以下の図のような結果が得られる。

  • 関東地方だけを表示した「マップ」グラフ

確かに、関東地方の地図だけが表示されているが、その表示は「あまりにも小さい・・・」というのが率直な感想ではないだろうか?

このような結果になってしまうのは、「東京都」に伊豆諸島や小笠原諸島などの島々が含まれているためだ。試しに、プロットエリアに適当な色を付けてみると、東京の諸島部も地図に描かれていることを確認できる。

  • プロットエリアを色で塗りつぶした例

つまり、この「マップ」グラフは東京都の範囲を厳密に表現したものであり、ある意味、正しい地図といえる。

とはいえ、上図のような範囲で関東地方の地図を描くケースは稀で、諸島部を省略した地図、もしくは諸島部を別枠で示した地図にするのが一般的だ。

このようなカスタマイズを「マップ」グラフでも実現できれば便利であるが、そういった機能は用意されていない。よって、離島を多く含む都道府県を「マップ」グラフに含める場合は、どうしても地図が小さく表示されてしまう。これが「マップ」グラフの弱点となる。

そのほか、市区町村のデータを表現できないことも「マップ」グラフの弱点といえる。「マップ」グラフが対応する範囲は都道府県まで(日本の場合)。それよりも細かい地域を「マップ」グラフで示すことはできない。

たとえば、「東京」や「大阪」のデータを「マップ」グラフで示すことは可能であるが、「札幌」や「名古屋」などのデータを基に「マップ」グラフを作成するとエラーが発生してしまう。

世界地図に各国のデータを示す、アメリカの地図に各州のデータを示す、といった使い方には対応するが、それ以外は「実際に試してみないと正しく地域を認識してくれるか分からない・・・」というのが実情だ。

「マップ」グラフはユニークな機能であるが、「実用的か?」と聞かれると、「それほどでもない・・・」というのが正直な感想。ということで、次回は別の方法で地図グラフを作成する方法を紹介してみよう。