この半導体ニュースのまとめ
・エアメンブレンがグラフェンEUVペリクルの量産化に向け約8.5億円を調達
・産総研発の連続合成・自動転写技術によりグラフェンの量産性と品質を両立
・2027年のパイロット生産を経て、2028年に量産ラインを立ち上げる計画
次世代半導体露光装置向けのグラフェンEUVペリクルを開発するエアメンブレンは、出資、融資、助成金を合わせて総額約8.5億円を調達したことを発表した。今回の調達により、累計調達額は約10億円となった。
グローバル・ブレインをリード投資家とし、同社が運営するグローバル・ブレイン9号ファンド、TAKANAWA GATEWAY地球益投資事業有限責任組合、高輪地球益ファンド、新韓-GBフューチャーフロー投資事業有限責任組合のほか、エースタート、ケイエスピー、三菱UFJキャピタルがそれぞれ運営するファンドを引受先とした。
また、三井住友銀行からの融資に加え、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」にも採択された。
調達した資金は、グラフェンEUVペリクルのパイロット生産と量産ラインの立ち上げに向けた体制整備、エンジニアや事業開発、経営管理を担う人材の採用などに充てる。
高NA EUV時代のフォトマスク保護技術を商用化へ
EUVペリクルは、半導体露光工程で回路原版となるフォトマスクへの異物付着を防ぐ保護膜。露光時に使用する波長13.5nmのEUV光を透過させながら、フォトマスク上にパーティクルが付着することを防ぎ、半導体製造における歩留まりの低下を抑える役割を担う。
AIや自動運転などに用いられる先端半導体の需要拡大を背景に、半導体メーカーや露光装置メーカーは、投影光学系の開口数を従来のNA=0.33からNA=0.55へ高める「高NA EUV露光技術」の開発と量産適用が進められている。
高NA EUVの活用が広がれば、微細な回路パターンを少ない露光回数で形成できる可能性がある。一方で、露光装置の高出力化や先端プロセスの微細化に伴い、フォトマスクを守るペリクルにも、より高い性能と信頼性が求められるようになっている。
EUVペリクルには、EUV光を極力損失なく通すための薄さと光透過性に加え、高出力のEUV光によって生じる熱を逃がす放熱性、プラズマ環境下における化学的安定性、製造や搬送、使用時に破損しない機械強度が必要となる。
これらの性能にはトレードオフの関係があり、すべてを同時に満たしながら、量産可能なコストで安定供給できるペリクルの実現が、次世代EUV露光の課題の1つとなっている。
原子1層分のグラフェンをペリクルに活用
エアメンブレンは、炭素原子がシート状に並んだ二次元材料「グラフェン」をEUVペリクルの薄膜として活用する。
グラフェンは原子1層分という薄さに加え、機械強度や熱伝導性に優れることから、EUV光を透過させながら高出力露光に耐えられる次世代ペリクル材料の候補とされている。
一方、グラフェンをEUVペリクルとして製品化するには、薄膜としての品質を維持したまま大面積化し、微細な欠陥や汚れを抑えながら、支持基板やフレームへ転写する必要がある。
炭素原子1層分の薄膜は取り扱いが難しく、研究室で高品質なグラフェンを作製できても、同じ品質で連続的に生産し、ペリクルとして量産することが課題となっていた。
エアメンブレンは産総研で培われた技術を基に、グラフェンの連続合成技術と自動転写技術を開発。合成工程と転写工程を一体的に開発することで、高品質なグラフェン薄膜を損なわずにペリクル化できるようにしたという。
グラフェンの合成速度を従来比100倍以上へ
エアメンブレンによると、独自の連続合成技術によって、グラフェンの合成速度を従来比100倍以上に高めたという。
また、転写工程を自動化することで、手作業によって生じる可能性がある微細な欠陥や汚れを抑制。グラフェン本来の薄さや品質を維持した状態で、ペリクルとして加工することを可能にしたとしている。
グラフェンEUVペリクルを量産するには、合成速度を高めるだけでなく、膜の欠陥、均一性、寿命などを製品ごとに測定し、定められた品質基準を満たしていることを確認する必要がある。
さらに、原子レベルの薄膜を破損させずに搬送する自動ハンドリング機構や、製造工程内で微小な欠陥を検出するインライン検査技術、合成から転写、検査までの工程を統合した量産プロセスの構築も求められる。
エアメンブレンは今回の調達資金を活用し、材料化学、薄膜プロセス、精密機械工学、光学計測評価などの技術を持つエンジニアを採用。研究室で確立した製造技術を、安定した量産プロセスへ引き上げるための設備と評価体制を構築する。
2027年にパイロット生産、2028年に量産ライン
量産化に向けたロードマップでは、2027年にパイロット生産を開始する。欠陥、均一性、寿命を高精度に管理する計測体制を構築し、製造プロセスと品質管理手法を検証する。
その後、2028年に次世代EUV露光装置向けグラフェンEUVペリクルの量産ラインを立ち上げる計画。グローバルな半導体メーカーや装置メーカーを含む顧客との共同開発やアライアンスも進め、市場投入を目指す。
グローバル・ブレインは、エアメンブレンが持つグラフェンの連続合成・自動転写技術、次世代EUV露光装置向け市場の成長性、量産ライン立ち上げに向けた具体的なロードマップと経営チームの実行力を評価し、リード投資家として出資した。
同社は2024年8月にも、新韓-GBフューチャーフロー投資事業有限責任組合を通じてエアメンブレンへ出資している。今回はグローバル・ブレイン9号ファンドと高輪地球益ファンドから新規出資し、新韓-GBフューチャーフロー投資事業有限責任組合から追加出資を行った。
今後は量産体制の構築に加え、国内外の事業パートナーとの連携強化などを支援するという。
世界初の量産化を目指す
エアメンブレンは2017年7月に設立された産総研発のスタートアップで、グラフェン薄膜の合成・転写技術を基盤に、クライオ電子顕微鏡向けのグラフェングリッドや、グラフェン電界効果トランジスタ「FR01」などを展開し、半導体製造用EUVペリクルへ応用領域を広げてきた。
同社が目指すのは、グラフェンEUVペリクルの世界初となる量産化で、調達した資金を活用する形でグラフェンの特性を研究室レベルで実証する段階から、半導体製造ラインで継続的に利用できる工業材料へ移行させ、次世代EUV露光におけるフォトマスク保護と歩留まり向上を支える材料メーカーを目指すとしている。
