• FSMC公式サイトより

    FSMC公式サイトより

カスタムIC受託生産のFSMC(フレキシブル・セミコンダクタ・マニュファクチャリング・コーポレーション)は、大幅なコストダウンと短納期が可能な独自技術を活かして、資金力が十分ではない中堅企業の需要開拓を進めている。いまは産業機器関連が主流だが、今後の成長分野は宇宙関連ビジネスとみて注力する方針だ。

2023年設立のスタートアップであるFSMCは、アナログやミクスドシグナルのカスタムICを早く安くつくることで差別化を図っている。ロボットを含む産業機器やエッジAI、モノのインターネット(IoT)分野では必要な機能に絞ったカスタムICの需要が拡大しているところだ。汎用的なICは不要な機能が多く、電力消費もサイズも大きい。しかし用途に適したカスタムICをつくろうとすると開発コストだけで1億円ほど。開発期間も1年以上かかってしまう。

そこで同社は独自の設計方式「LDIC」(Line Determined IntegratedCircuit)を駆使して、開発費を従来の1/20〜1/100に、開発期間は1カ月に短縮。さらに複数の半導体工場をつかうことで安定供給できる体制をめざしている。

LDICとはセミオーダースーツのような仕組みで、フォトリソグラフィで予めマスター回路を形成し、それをブロック玩具のようにつかうのが特徴。最初に冗長的な回路設計にしておき、適切にならべて半製品化しておく。ユーザーから注文がきたら求められる機能をもつように、ブロックを適切に組み合わせて配線する。配線を切り替えるだけで6兆種類のバリエーションを短納期で実現可能としている。

  • LDICの概要(出所:CEATEC 2026公式サイト)

    LDICの概要(出所:CEATEC 2026公式サイト)

主な品揃えは耐圧別に信号処理系、電源系、ドライバ系を考えている。製造プロセスはフォトマスクをつかうマスター回路で2桁ナノメートル。配線工程は数マイクロメートルで済むため高価なフォトマスクをつかわない直接描画方式を用いる。

同社代表取締役CEOの古澤利成氏によれば、カスタムICは「センサーやモーター制御向けも増えてきて時流にのっている」。しかし中堅企業の多くはコストの大きさに手が出せないでいる。LDICはマスタ回路形成には口径6〜8インチの半導体工場を、メタル配線工程は8インチ生産ラインをつかうことでアセットライトを図る。LDICはマスター回路と柔軟な回路設計方式、直接描画配線技術、レガシープロセス工場を活用することが要点である。受注して安価かつ短納期で開発から製造まで一気通貫のシステムだ。

古澤CEOは、「これからおもしろいのは宇宙分野」とみている。カスタムICのかたまりといえる宇宙関係では、「90バリエーションの90個のカスタムICを300個づつほしい」などとの要望があるが、これを従来手法で対応していれば開発費は90億円にもなる。LDICの強みが活かせる分野として期待は大きい。