最新のモデルからセキュリティまで、AIに関連した動きがめまぐるしい。AI開発企業自らが開発減速を呼びかける声も聞かれる。AI研究者のDemis Hassabis(デミス・ハサビス)氏は、AGI(汎用人工知能)の到来を「2~3年以内」と予測する。ハサビス氏はGoogle DeepMindの共同創業者兼会長、およびAlphabetのチーフサイエンティストを務め、2024年にノーベル化学賞を受賞している。
AGI到達予測を「2~3年以内」に前倒し
WSJ. Magazineの年次特集「Innovators」で技術イノベーターに選出されたことを記念して、ハサビス氏がインタビューを受けた。ここで同氏は、幼少期からチェスで頭角を現し、チェスの大会で得た賞金で最初のコンピュータを買ったことなどの生い立ちから、AI、そして科学・創薬への取り組みまで多岐にわたる話をしている。
AGIの到達時期については「2~3年以内」とハサビス氏は述べる。2026年前半に予想した「3~5年先」から前倒しとなる。AGIは人間の脳の認知能力をすべて備えたシステムを指す。同氏は到達の判断基準として「Einstein test(アインシュタイン・テスト)」を挙げる。
アインシュタイン・テストは、AIがAGIに達したかどうかを評価するための新しいベンチマークだ。AIが未来の知識(相対性理論や量子力学など)を事前に知らされない状態で、自らの論理と創造性だけで歴史的な大発見に到達できればAGIや超知能の証明になるとされる。
安全なAGI実現に向けた新たな提案
現代物理学を発明できるAIまでは数年かかるが、ハサビス氏自身がノーベル賞受賞当時に見込んでいたよりは早い、と伝えている。同氏にとっての「勝利」はAGIを安全に人類全体の利益のために社会へ導くことだという。
安全面では、この夏にまとめたエッセイで、責任ある開発に向けた提案を示した。記事によると、AIをインターネットよりも、火や電気に近い影響力を持つ技術と位置づけ、業界が資金を拠出し、連邦政府の監督下でフロンティアモデルを公開前にテストする機関を提案している。
提案の枠組みは、状況に応じてリアルタイムで更新し、必要なら強化できる柔軟なものだという。規制については、まだ十分に理解できていない段階で設けることには否定的な見解を示す。ハサビス氏は「誤った規制は、規制がないよりも悪い」と述べている。
同氏が指摘するのは、AGI到達後の議論が不足していることだ。先ごろ登壇した開発者会議の基調講演では、後から振り返れば、現在はシンギュラリティの裾野に立っていた時期だと気づくだろうと語っている。
シンギュラリティ後の社会はどうあるべきか
インタビューでは「何を価値とするのか、人間の状況や社会制度にどう影響するのか、すべての人がどう恩恵を受けるのか、そして目的は何か」--こうした問いに十分な時間が割かれていないとしている。
「私たちは素晴らしい未来を手にできると信じている。だが、そのためには意図的に未来を築いていく必要がある」とハサビス氏。
自身の展望としては、AGIシステムや科学者とともに、次世代の物理学の解明に取り組みたいとしている。Wall Street Journalが10月21日、Hassabis氏のロングインタビューを公開した。