
創業のきっかけとなった危機感
「国産ヒト型ロボット」の量産へ――。日本は人口減少社会に突入しており、そのペースは年間で90万人とも言われています。日本にとって労働力不足は避けて通れない社会課題なのです。このまま何もしなければ、全ての産業の成長が止まり、インフラも維持できなくなる。そうなれば残された子どもたちの人生は真っ暗になってしまう。そんな危機感を抱いて当社を2023年に創業しました。
東京大学発のスタートアップとして出発した当社は四足歩行ロボットやヒューマノイドを開発し、製造業や官公庁、防災などへの展開を進めています。特長はロボットの機体だけでなく、AI(人工知能)自体も開発している点です。また、米エヌビディア製の半導体以外は、全て国産の技術を活用しています。
当社は実世界で働くAIをつくるために、機体開発から量産体制の構築、現場でのデータ取得まで取り組む考え方を軸にしており、自社開発したAI基盤モデル「Kepler」の開発にも力を注いでいます。
今年9月、四足歩行ロボット「HLQ Air」は後継となる新型機「HLQ EDGE」に進化しました。物理空間を理解・予測する「世界モデル」を活用した独自AIで歩行制御が可能です。重量物搬送や巡回点検、クマ対策などの現場に導入していきます。地面の状況に応じて脚をつく位置や全身の姿勢を自動で調整しながら歩けます。
三菱自動車との協業
また、ヒューマノイド「N」はエッジコンピューティングでデータをリアルタイムで収集・解析し、繊細な作業にも対応できます。人間と同じ空間で軽作業を行うことを想定し、全身31自由度と5指ハンドを備え、製造や物流などでの活用を視野に入れています。この技術に注目していただいた三菱自動車工業と共同開発・量産に向けた協業を進めており、2027年4月頃の量産出荷を見込んでいます。
まずは量産という壁を乗り越え、量産したロボットから収集したデータを学習へ戻し、モデルを改善して再び機体へ展開する循環を構築していきます。当社はロボットメーカーではなく、AI開発企業です。国産という軸をぶらすことなく、家庭にも普及するロボットを開発し、より良い日本の未来の実現に貢献したいと思っています。
PROFILE
ますおか・ひろや:1994年大阪府生まれ。2018年大阪大学基礎工学部卒業、20年東京大学大学院理学系研究科修了。23年に東京大学発のロボットベンチャーとしてHighlandersを設立し、現職。26年から東北大学共創戦略センター特任教授(客員)を兼任。