マンションの安心・安全を守るオートロック。しかし、外部から人を入れない仕組みである以上、宅配や訪問介護、クリーニングといったサービスを利用するときには壁にもなる。
オートロック付きマンションでは、本人が不在だと宅配ドライバーが玄関前まで荷物を届けられないことも。また訪問介護では、高齢者本人がインターホンに応答できず、スタッフがエントランスで足止めされることもある。かといって、サービス事業者に鍵を預けたり、共通の暗証番号を伝えたりすれば、防犯上の新たなリスクが生まれる。
中でも影響が大きいのが宅配だ。これは実感している人も多いと思う。国内の宅配便取扱個数は年間約50億個。2027年には配達ドライバーが約24万人不足するとの予測がある一方、再配達率は7.6%と高止まりしている。人手不足が深刻化する中、オートロック物件での再訪問や個別の時間調整は配送効率をさらに下げる要因になる。
求められているのはオートロックをなくすことではなく、「入ってよい人」を必要なときだけ安全に通す仕組みだ。
インターホンを「サービスの入口」に
そうした課題を解決する1つのソリューションとして今回、パナソニック エレクトリックワークス(パナソニックEW)とライナフは、パナソニックEWのマンションHAシステム Iシリーズ「Clouge」「Clouge SQUARE」と、ライナフのサービス事業者向けオートロック入館管理システム「ライナフコネクト」をAPI連携した。2026年10月9日から全国で順次提案を開始している。
ライナフコネクトは、配達員や訪問スタッフなどに一時的な入館権限を付与する仕組みだ。現在は日本郵便やヤマト運輸、生協、クリーニング、訪問介護など40社のサービス事業者と連携している。
今回のAPI連携では、サービス事業者のスタッフに対して、配達や訪問時に専用Webアプリからワンタイムパスワードを発行。マンションのエントランスにあるロビーインターホン(パナソニックEWの対応モデル)にこのワンタイムパスワードを入力することで、オートロックを一時的に解錠できる。
利用できるのは、あらかじめ身元確認を済ませたスタッフに限られ「いつ・誰が入館したか」という履歴も記録する。
ライナフの代表取締役 滝沢潔氏は、これまで自社デバイスをマンションに設置して同種のサービスを広げてきたが、今回の連携では「パナソニックEWのインターホンからこれらのサービスが全部連携できるようになって、別デバイスが必要なくなる」と語る。
オートロックが宅配の効率を下げる
メディア向けの説明会では、ライナフコネクトをすでに利用している事業者も登壇。現場が抱えている課題や、ライナフコネクトの利用によって改善された点などを具体的に紹介した。
生活協同組合コープみらいのコープデリ宅配では、オートロック付きマンションが配送上のボトルネックになっていたという。たとえば、そのマンションで利用者が1世帯だけの場合、在宅時間に合わせた個別対応が必要になり、配送ルート全体の効率が落ちる。
管理規約などで置き配が禁止されている物件もある。住人(サービス利用者)の帰宅時間が遅く、同じマンションにほかの利用者もおらず、置き配もできないとなれば、新規利用を見送らざるを得ないケースもあった。
ライナフコネクト導入後の配達担当者アンケートでは、約80%が「再配達の解消」「時間調整をしなくて済む」といった効果を実感した。1日あたりの配達時間も平均15分、最大30分短縮したそうだ。
ドライバー不足への対策という意味でも、再配達を減らす効果は小さくない。同じ人数でより効率よく配送ルートを回れるようになれば、配送現場の負担軽減にもつながる。
宅配だけではない、訪問サービス共通の課題
“オートロックの壁”は宅配に限らない。
クリーニング事業の光生舎からは、管理人にオートロックを開けてもらえない、利用者の時間指定によって同じマンションへ2回/3回と訪問する、宅配ボックスが空いていない、といった課題が紹介された。再訪問がなくなれば、業務効率は5~10%程度向上すると見込んでいる。
訪問介護を手がけるやさしい手でも、同様の問題が起きている。
「オートロックの前で訪問のケアが止まってしまうことが実際に起きています」と、同社の藤宮寛太氏。高齢者本人がインターホンに出られなかったり、体調が悪く解錠できなかったりすると、スタッフは建物に入れない。家族が不在の場合や緊急時にも、エントランスで足止めされることがあるという。
安全のために設けたオートロックが、生活に必要なサービスを届きにくくする。パナソニックEWとライナフの連携は、この矛盾を解消しようとするものでもある。
「売って終わり」ではなく、サービスでつながり続ける
パナソニックEWにとって、今回の協業はマンション事業そのものを変えていく取り組みのひとつ。パナソニック エレクトリックワークス 電材&くらしエネルギー事業部 配線システムコミュニケーションBU 福尾尚紀氏は、従来は設備を納入する「売り切り型」のビジネスが中心だったとしたうえで、「今後は、設備導入後もサービスを通じてお客様とつながり、循環型ビジネスへ転換していく」と話す。
インターホンなどの設備をネットワークにつなぎ、新たなサービスを後から追加する「ネット接続型マンション」を広げることで、設備導入後もマンションの利便性や価値を高めるという構想だ。
ライナフ側にも、パナソニックEWとの連携で対応物件を一気に増やせるメリットがある。ライナフの滝沢氏は、使える建物が少なければサービス事業者は参加しにくく、サービスが少なければマンション側も導入しにくいという「鶏と卵」の関係があると説明。対応物件とサービス事業者の双方を増やすことで、相互に拡大する流れを作ろうとしている。
今後は、2027年末までにライナフコネクトを利用できる建物を累計5万棟、185万世帯へ拡大する目標を掲げる。提携パートナーも1年後に100社、5年後には1000社へ増やし、家事代行などサービス領域も広げていく計画だ。
これまでマンションのインターホンは、外から来た人を確認し、解錠して建物に入れるかどうかを居住者が判断する設備だった。そこに、認証済みのサービス事業者を必要なときだけ安全に通す機能が加わる。
宅配、介護、クリーニング、そして今後増えていく生活支援サービス。インターホンがそれらをつなぐ共通の「入口」になれば、オートロックの役割そのものも変わっていきそうだ。


















