SNSやショート動画などの刺激的なコンテンツを次々と求める人を指す俗語「ドパガキ」が注目を集めている。では、スマートフォンを長時間利用することは、ネット依存症を意味するのだろうか。
セキュリティ企業のESETは、Too much screen time or internet addiction? How to tell the differenceにおいて、スクリーンタイム(画面を見る時間)とインターネット依存の違いや、保護者が注意すべき兆候について解説している。
スマホの長時間利用とネット依存症は何が違う?
スマートフォンで動画を見たり、ゲームをしたりする時間が長いと、保護者はネット依存を心配するかもしれない。しかし、ESETによると、インターネットの利用時間が長いことが、そのまま依存症を意味するわけではないという。
現在の子どもや若者にとって、インターネットは友人との交流や学習、娯楽など、日常生活のさまざまな活動に使われている。そのため、利用時間だけで問題の有無を判断することは難しい。
ESETは、米国小児科学会(AAP)が提唱する「5 Cs of Media Use」という考え方を紹介している。これは、子どもの年齢や発達段階、利用するコンテンツ、感情との関係、ほかの活動への影響、家族とのコミュニケーションという5つの観点から、デジタルメディアの利用を考えるものだ。
例えば、同じ3時間のゲームでも、友人と遊んだ後に自分で終了し、ほかの活動に移れる子どもと、やめようとしてもやめられず、睡眠や学業に支障が出ている子どもでは、状況が大きく異なる。
重要なのは、スマートフォンを何時間使ったかではなく、その利用によって日常生活にどのような影響が生じているかという点だ。
なお、一般的な「インターネット依存症」については、世界共通の診断基準が確立されているわけではない。ESETは、ゲームやSNS、スマートフォンなど、特定の活動に対する制御の難しさに注目する必要があるとしている。
子どものネット依存を疑うべき6つの兆候
ESETは、インターネットの利用が問題になりつつあることを示す兆候として、次の6つを挙げている。
(1)インターネットの利用が関心の中心になる
ゲームやSNSなど、特定のオンライン活動のことを常に考え、次に利用できる機会を待つようになる。
(2)ほかの活動がおろそかになる
睡眠や勉強、スポーツ、家族との時間などよりもオンライン活動を優先し、以前楽しんでいた趣味から離れるようになる。
(3)使えなくなると強い不快感を示す
スマートフォンやゲームを使えなくなった際、強いいら立ちや不安、苦痛を繰り返し示す。ただし、利用を中断された際に一時的に不満を示すだけでは、依存を意味しない。
(4)気分を改善するためにインターネットを利用する
退屈や悲しみ、ストレスなどに対処する手段が、ゲームや動画、SNSなどのオンライン活動に偏る。
(5)より長い利用時間や強い刺激を求める
以前と同じ満足感を得るために、オンラインで過ごす時間が長くなったり、より強い刺激を求めたりする。
(6)利用時間を減らそうとしても失敗を繰り返す
本人が利用による問題を認識し、時間を減らそうとしても、同じ行動を繰り返してしまう。
ESETは、これらの兆候が1つ見られたからといって、依存症と判断できるわけではないと説明している。問題となる行動が継続しているか、自分で利用を制御できなくなっているか、日常生活に深刻な影響が出ているかを総合的に見る必要がある。
また、デジタルコンテンツへの過度な依存には、脳の報酬系に関係するドーパミンなどが関与する可能性がある。ゲームでの達成感やSNSの通知などは、同じ行動を繰り返す動機になり得るという。
ただし、こうした仕組みが関係するからといって、ゲームやSNSの利用が薬物依存と同じ影響を及ぼすわけではない。
スマホの利用時間を制限するだけでは不十分、保護者ができる対策
では、子どものインターネット利用に問題が見られる場合、保護者はどのように対応すればよいのだろうか。
ESETは、単純に利用時間を減らすだけでなく、子どもがなぜオンライン活動に多くの時間を費やしているのかを理解することが重要だと説明している。
例えば、学校生活で得られない達成感をゲームに求めたり、孤独感をSNSで埋め合わせたり、ストレスから逃れるために動画を見続けたりしている可能性がある。
こうした背景を考慮せずに利用時間だけを制限しても、根本的な問題の解決につながらない場合がある。
ESETは、保護者が取り組める対策として、就寝前などにデバイスを使わない時間を設けることや、スポーツ、音楽、友人との交流など、オンライン以外の活動を充実させることを推奨している。
また、スマートフォンを取り上げることを罰として使うのではなく、子どもと話し合い、無理のないルールを一緒に考えることも重要だという。
保護者自身の行動も無関係ではない。食事中に頻繁にスマートフォンを確認するなど、大人がデバイスを手放せない生活を送っていれば、子どもに利用制限を求めても説得力を欠く可能性がある。
ESETは、インターネットの利用によって睡眠や学業、人間関係などに深刻な支障が生じている場合や、悪影響が出ていても利用を制御できない状態が続く場合には、小児科医や心理の専門家などへの相談を検討するよう勧めている。
