ENEOSは10月6日、豪州クイーンズランド州に建設した「Direct MCH」の大型実証プラントで開所式を開催した。このプラントは水素の貯蔵・輸送に用いるメチルシクロヘキサン(以下、MCH)を製造する設備で、試運転を経て2027年1月から実証運転を開始する予定だ。
MCHを一工程で合成し、水素サプライチェーンの低コスト化を目指す
MCH(メチルシクロヘキサン)は、水素を貯蔵・運搬するための「水素キャリア」の一種。常温・常圧で液体であり、貯蔵や輸送の際に取り扱いやすいという特徴がある。
従来の製造方法では、水電解などで生成した水素を一度タンクに貯蔵し、トルエンと反応させてMCHに変換する。ENEOSが独自開発したDirect MCHは、再生可能エネルギーなどの電力と水・トルエンを使い、一段階の反応でMCHを直接合成する技術である。
再生可能エネルギー由来のグリーン水素は、カーボンニュートラル社会の実現に向けたエネルギーとして期待される一方、製造・輸送コストの低減が課題となっている。ENEOSはDirect MCHによって工程を簡略化し、グリーン水素サプライチェーン全体の低コスト化を目指す。
2023年実証の約8倍の電解槽で、約2年間の運転を計画
今回、ENEOSは商用化の最小単位となる1.2MW級の大型電解槽を開発した。これは2023年の実証で使用した電解槽の約8倍の規模で、実証プラントのMCH生産能力は最大で1日あたり9トンとなる。このプラントでの実証運転は約2年間行う予定。
ENEOSはこの実証運転を通じて、性能や劣化挙動などを評価し、商用化に必要なデータを取得するとしている。世界有数の再生可能エネルギー供給地である豪州で、プラント運転に伴う技術的課題の早期発見と解決を進める。
なお本実証は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築」における「直接MCH電解合成技術開発」の一環として実施される。
編集部メモ
本文中でもふれられているとおり、ENEOSは2023年にも今回の実証が予定されているのと同じ豪州クイーンズランド州ブリスベンのブルワー島でDirect MCHの実証を行っている。その際の設備は、150kW級の中型電解槽と250kWの太陽光発電設備を組み合わせ、再生可能エネルギー由来のMCHを製造するというもの。計画では、2023年2月から9月までの約8カ月間、亜熱帯環境下での電解槽の耐久性を確認するとともに、太陽光の発電量の変動に応じた運転・制御技術を開発するとしていた。
実際に製造したMCHを日本に輸送し、水素を取り出して燃料電池バスに充填しての試乗も行った。ENEOSはこの技術実証により、一般財団法人新エネルギー財団が主催する2023年度の「新エネ大賞」において審査委員長特別賞を受賞している。

