【 経済産業省 】軍民両用品の市場育成へ 輸出も視野に製造基盤強化

政府は、有事に防衛用途へ転換できる、小型無人機(ドローン)など軍民両用品(デュアルユース)市場の育成に乗り出す。民生用途の需要創出や同盟国・同志国への輸出拡大に取り組み、参入企業の収益確保を支援する。国内の生産基盤を強くし、装備品の調達で海外に過度に依存しない体制をつくる狙い。

 ロシアのウクライナ侵攻を契機に、人工知能(AI)といった民間技術が兵器の制御や偵察に使われ、戦況を左右し始めている。政府試算では、国内の市場規模は現在の6兆円から、2035年には13兆円まで成長する見込みだ。

 有事の際に必要量の装備を確保するには、民間企業が平時から製造ラインや収益を確保する必要がある。政府が8万台の量産目標を掲げるドローンでは、中国製品が9割の国内シェアを握る。日本政府は研究開発や設備投資への支援制度を設け、国内企業の量産化を後押しする。

「最高性能・最低価格の中国製とは厳しい戦いになる」と産業用ドローンを手掛けるACSL(東京)の寺山昇志共同経営責任者は語る。同社の空撮ドローン『蒼天』は、取得データを即座に暗号化するセキュリティ能力を有し、民間企業のほかに自衛隊でも採用される。寺山氏は「安心して使える次世代機を作り上げ、中国に追いついていく」と力を込める。

 蒼天は安全性や信頼性を武器に北米市場にも販路を拡大。両用品市場において、海外需要の取り込みは国内の生産能力強化を目指す上で欠かせない。特に日本企業は、地震など災害対応で培ったノウハウに強みを持ち、過酷な環境でも機能する製品は、防衛分野との親和性が高い。

 新興企業WOTA(ウォータ、東京)は、少量の水を再利用できる可搬式の浄水設備を使ったシャワーを、ロシアに破壊されたウクライナの水インフラ復旧事業で運用している。同社の製品は、熊本地震でも使用され、防衛省も採用。海外展開も積極化する方針だ。

 一方、製造業に必要な重要鉱物や石油製品は特定の国や地域に依存しているため、生産基盤強化には課題が山積する。経産省の幹部は「米国など同盟国との共同調達で協力余地がある」とし、国際連携を模索する。

【 370兆円の官民投資の虚像 】ABC経済研究所 代表エコノミスト・熊野英生