
独自の新紡績技術を循環プロジェクトに応用
今世界中で問題となっている衣料品大量廃棄。ファストファッションの台頭で衣料品の大量生産、供給サイクルの短期化によって売れ残りの廃棄量は増加。世界でアパレル業界は、化石燃料産業に次ぐ「汚染産業」とされ、環境負荷の高さが業界全体の課題となっている。日本では48.5万トンが廃棄されている状況だ(出典:環境省令和4年度「ファッションと環境」調査結果をもとに作成したニッケ資料)。
この問題に欧州は本格的に動き出しており、26年7月から衣料品廃棄を禁止する規則を施行。「大量生産で売れ残ったものは捨てる」というファストファッションの時代が終わりつつあり、環境等に配慮した製造方法や素材も含め、トレンドに関係なく長く大切に衣料品を扱うスローファッションの風潮へと変化している。
「世界的にスローファッションの風潮も出てきて、リユース、リサイクルの機運も高まっている。われわれの強みのウールは製品寿命が長く、生分解で土に還る環境に優しいことが特徴。ウールはもっと世界で存在感を発揮できるのでは」─。こう語るのは日本毛織(ニッケ)取締役常務執行役員・衣料繊維事業本部長の金田至保氏。ウールに強みを持つ同社は主に企業制服や学校制服を納めており全国のウール混の学生服供給シェアは約50%と高いシェアを持つ。
同社は業界の廃棄問題に取り組むため、数年前に開発した特殊な紡績技術を活用し、衣料品の廃棄ゼロを目指した回収・循環プロジェクト「ワヲナス」を開始した。1990年代から衣料品の回収システムはあったものの、各社ごとに回収・処理した衣料品を再資源化し他の物に使用する手法しかなかった。
それが今回独自紡績技術でこれまでできなかったウール混の衣料品を原料の状態まで戻し、再び糸にし「服から服へ」と蘇らせることを可能にした。現在この技術は世界でもニッケしか持っていない技術だという。
事例として、私立駒場学園高等学校(東京都世田谷区)ではSDGS教育の一環で卒業生の制服を回収し、翌年の入学者の制服に再生するという取り組みや、企業の制服では京成グループで事例がある。学校はこういった取り組みを行うことで学校の知名度も上がり、生徒募集にもつながっているという。
現在経済産業省の旗振りで複合繊維も含めた〝繊維to繊維〟の循環システムを世界初のモデルにしていくべく、繊維メーカー5社(帝人フロンティア、東レ、倉敷紡績、日清紡テキスタイル、日本毛織)とバイオ研究機関が一丸となって、プロジェクトを進めている。
昨今こういった循環型の取り組みはあらゆる業界で進むが、企業活動だけでは手間暇もかかり効率化・経済性の観点から収益化は難しいのが現実。
「企業側だけで支える形では長続きしない。衣料品に関わる全ての領域の人が循環に参加する価値を実感し、それぞれが繋がったときに持続可能な循環型社会が見えてくると思う」(同)。
プロジェクト名「ワヲナス」には「輪・和・環を成す」という意。循環型社会に向けてユーザーを含め業界に関わる人の大きな「ワ」をつくろうという同社の投げかけである。