
業界のあらゆる常識を突破
われわれは2003年に凸版印刷(現TOPPANホールディングス)の一部門を前身として、日本初の携帯電話向けコミック配信事業を開始しました。当時は周囲から全く理解を得られませんでしたが、わたしは出版業界はやがて紙の市場からデジタル市場へと変わっていくと考えていました。
特にコミックは携帯電話と親和性が高く、当社は電子コミックに強みを持つプラットフォーマーとして今日まで歩んできました。コミック市場では今やデジタルが紙を上回る規模へと成長しています。
また、他の業界と比較し、出版業界には価格戦略も、マーケティング戦略も十分に確立されていないことが課題だと考えていました。ですから、当社はデジタル市場でいち早くオリジナルIPの開発に着手し、それを使ってさまざまなマーケット情報を蓄積し、ノウハウを得ていきました。ファーストペンギンとして業界の常識を破る挑戦を続けてきており、最初は内部や出版社さんからの抵抗も大きかったのも事実です。
業界全体の理解も進み、今では電子コミックストアでは多様な販促施策が一般化し、出版社も戦略的な販売プロモーションを行うようになりました。電子書籍ストアは複数ありますが、差別化ポイントは先行配信、割引、アプリの使いやすさです。
電子コミックの市場が広がることで、これまで限定的な読者に支えられていたBL、TLをはじめ、多様なジャンルが広く読まれるようになったことに加え、クリエイターの労働環境が大幅に改善されました。
例えば女性漫画家で子育てをしながら自分のペースで書いている作家さんもいます。環境の制約で活動を断念していた作家さんも創作を続けられるようになりクリエイターの裾野も広がりました。
テクノロジーとリアルの両輪で
最近ではAI(人工知能)が非常に進んできていますが、当社では、漫画制作においてはクリエイターによる創作活動を重視しています。現時点では、作家が生み出す独自の世界観や表現力はAIでは代替できないと考えています。
一方で、認知度向上に向けては、LLMO対策やリスティング広告の最適化など、AIを活用したマーケティングにも積極的に取り組んでいます。
また、経営全体でいうと、電子コミックのデジタルの世界だけでなく、リアルのファン獲得に向けてIPを活用したリアル店舗も注力しています。
2024年に東京・東急プラザ原宿「ハラカド」に「OSHI BASE Harajuku」をオープンし、当社で人気コミックのキャラクターグッズ販売や、ファンミーティングなど、推し活を楽しめる拠点として展開。世界初の公式K︱POPデパート「DPARTMENT」や、たまごっち公式ショップ「たまごっち ふぁくとり~!」の企画運営を行っています。自社IPに加え、他社IPも活用し、ファンの熱量を高めるプロモーションを仕掛けています。
今後は電子書籍だけでなく、IPを軸として、従来の漫画、アーティストや楽曲、キャラクターなども取り扱い、新たな自社IP創出を増やしていきます。同時にクリエイター育成にも力を入れ、世界で活躍するクリエイター輩出を目指します。
PROFILE
あわの ただし:1965年神奈川県生まれ。東京理科大学理学部を卒業後、凸版印刷入社。Eビジネス推進本部ビットウェイ本部を経て2005年、分社化に伴い取締役就任。11年にBookLive設立より現職。