
希望ある未来に向けた超長期予測
様々な政策や制度を議論する際に、よく「中長期的」な観点で考える必要があると言われます。ふつうに中長期というと5年から10年というスパンが想定されますが、社会保障や税・財政、あるいは国際社会における日本の立ち位置といった問題を考える場合には、20年や30年、さらにそれ以上の「超長期」の視点をとることも重要となります。
評者は今から15年前、経団連のシンクタンクが日本経済研究センターの協力を得て実施した、2050年までの経済シミュレーションと総合戦略を描くプロジェクトに携わりました。
当時はデフレ下で、20年にわたり名目GDP(国内総生産)が停滞し、もし必要な改革が行われなければ、日本は「先進国としての地位から転落し、極東の一小国に逆戻りしかねない」と警鐘をならしたのです。
その後の日本経済は、アベノミクスをはじめとする大胆な経済政策が発動され、企業活力も向上し、目下、名目GDP、賃金、金利、物価上昇率がいずれもプラスの、いうなれば正常な経済の状態を回復しています。
そうした中で本書は、2075年という超長期のタイムスパンで、日本ならびに世界約80カ国の経済予測を行い、日本が長期的に国際社会で確固たる地位を維持するための方策を探るという、意欲的な取り組みを行っています。
日本の将来像として三つの道筋、すなわち、停滞の未来、改革の未来、悪夢の未来が示されます。最も望ましい「改革の未来」を実現していくうえでのカギを握るのが、現在の生成AIを上回る汎用AI(AGI)の活用です。
AIが人間の仕事を奪うとよく言われます。しかし、本書が示す「改革の未来」では、AGI導入による生産性向上により、週休4日制が定着し、子どもを持つハードルが下がるため出生率も向上し、経済面でも人口面でも持続可能性が高まるとされます。未来への希望をたぐり寄せるための経済予測と言えるでしょう。