SK hynixが、約2兆円かけて日本国内の千葉県もしくは宮城県にDRAM前工程工場を建設し、2030年にも稼働開始をする方向で検討に入ったと、一部の日本のメディア2月下旬に報じたことを受ける形で韓国メディアがSK hynixがそのような計画はないと否定したことを伝えている

SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長が過去に「日本や米国などでメモリを生産できるかどうかを調査している」と述べ、実際に日本で調査をしていたという情報を著者はつかんでいるが、その後、地勢学的状況が変化し、米トランプ大統領からの強い要請を受けることにしたため、日本への進出話は立ち消えになったと記憶している。

「日本での工場建設・運営コストは韓国の半分」と語るSamsung幹部

朝鮮日報のビジネス特化オンラインサイト「Chosun Biz」によると、Samsung ElectronicsとSK hynixは日本から半導体工場建設の提案を何度も受けているものの、何年も保留状態を続けているという。両社は、過去数年間、日本における半導体工場建設の可能性について、予備的な費用見積もりレベルの検討を行ってきたものの、実際の投資決定や生産ライン計画の段階にまで至らなかったという。

しかし、Samsungの半導体部門役員によると、日本でメモリ工場を建設・運営する場合、初期投資と総所有コスト(TCO)の面で韓国の約半分で済む可能性があるという意外な話も伝えている。

韓国の場合、韓国政府からの意味のあるインセンティブ(補助金など)がほとんどなく、追加コストが発生することが多いが、日本は半導体投資を誘致するために、巨額補助金の支給、税制優遇、インフラ支援、労働力支援、現地の装置サプライヤとの連携などを含む「フルパッケージ」の支援策を提供していると韓国勢はとらえているようである。TSMCの熊本工場、Rapidusの千歳工場、Micron Technologyの東広島工場への日本政府の巨額補助金および地元地方自治体や装置材料サプライヤの手厚い支援を見れば、そう感じるのも無理はなかろう。近年、韓国半導体メーカーのボーナスを含む給与水準は著しく上昇しており、韓国のみならず、他国企業にとって、日本で質の高い低賃金労働力が確保しやすいのも魅力的だろう。

コストと長期的な成長の観点から見ると、日本の工場は最も安全な選択肢かもしれないが、日本での工場建設を控えている最大の理由は、韓国内世論と韓国政府および地元関係者からの圧力で、これらの外部制約は財務上の利点を上回っているようだとChosun Bizは分析している。

トランプ大統領が米国にメモリ工場建設を要求

SK hynixは、トランプ大統領の要請もあり、AI需要の増加に向けて米インディアナ州に約38.7億ドル(約5800億円)を投資して、2028年の量産開始の計画でHBMパッケージング工場を建設中である。さらに、2026年1月にはAI特化の投資会社を米国に設立して、総額100億ドル規模でシリコンバレーを中心に投資と協業を強化している。米国政府(いわゆるCHIPS法)から最大4億5000万ドルの補助金と5億ドルの融資を受ける覚書を締結しており、約1000人の雇用を創出する見込みである。

米ラトニック商務長官は2026年1月、米ニューヨーク州で行われたMicronの新工場起工式の後、記者団に「米国に投資をしていないメモリメーカーは、米国内での生産拡大を約束しない限り、最大100%の関税に直面する可能性がある。メモリを製造し米国市場で販売したい企業には2つの選択肢しかない。米国に100%の関税を払うか、メモリ工場を建設するかだ。それが(米国政府の)産業政策だ」と述べている

SamsungとSK hynixはすでに韓国内で数百兆ウォン規模の巨大メモリ工場投資を行っており、追加投資の余地はほとんどないとみられている。SKグループは、バッテリ関連事業で赤字に陥っており、グループとしての投資資金調達のために韓国資本唯一のシリコンウェハメーカーSK Siltronを間もなく韓国の建設機械中心の複合企業である斗山(Doosan)グループに売却する予定である。半導体業界関係者は「米国政府が『メモリ生産』をどのように定義しているかは不明だが、コストの高い米国での新規前工程工場建設は現実的ではない。これは米国政府による米国での生産拡大圧力の延長と捉え、状況を注視している」と述べている。

このような事情から、SK hynixが海外で追加投資をおこなうとすれば、まずは米国への最先端DRAM前工程工場の進出となるとみられる。同社は、かつて米国オレゴン州ユージーンにDRAM前工程工場を所有・稼働していたが、2008年に閉鎖し、韓国および無錫にリソースを集約した過去がある。また、市場シェアのほとんどない日本への進出の可能性は、日本政府からの巨額補助金でもない限り、可能性は低いと思われる。とはいえ、TSMCは市場シェアが4%ほどしかない日本に工場を進出させた。これは、日本政府の巨額補助金と地元自治体のさまざまな支援、ソニーの全面的協力によるところが大きい。最近は、各国政府や地方自治体による巨額補助金次第で不可能も可能になる状況にある。TSMCのC.C.Wei会長は、海外工場進出は、各国政府の補助金次第であることを公言しており、工場進出国すべて(米国、日本、EU/ドイツ、中国)で補助金を得ている。