有人宇宙飛行めざす各ミッションが進行中

アルテミスII以外の有人宇宙飛行ミッションでは、新たな宇宙ステーション計画や新型宇宙船の試験などが進む一方、懸念材料もある。

そのひとつが、ロシアの発射台損傷による影響だ。2025年11月のロケット打ち上げ後に、バイコヌール宇宙基地の第31発射台が損傷し、「ソユーズ」宇宙船や「プログレス」補給船の打ち上げが滞っている。ロシア側は2026年2月までの復旧をめざすとしているが、動向を注視したい。

米ボーイングにとっても試練の一年となる。同社の宇宙船「スターライナー」は、これまでの無人・有人飛行試験で問題が発生し、改修が続いている。このため、2026年4月以降に予定されている次の飛行は、有人ではなく、貨物を搭載した無人飛行として国際宇宙ステーション(ISS)へ向かう計画に改められた。問題の解決と信頼回復を進め、早期の有人運用の実現につなげられるかが焦点となる。

  • ボーイングが開発中の「スターライナー」宇宙船 (C) NASA

    ボーイングが開発中の「スターライナー」宇宙船 (C) NASA

5月以降には、米民間企業ヴァーストの宇宙ステーション「ヘイヴン1」の打ち上げが計画されている。ヘイヴン1は世界初の民間宇宙ステーションで、最大4人の宇宙飛行士が滞在し、実験などを行うことを想定している。同社はISSの後継機の建造という目標も掲げており、ヘイヴン1はその実証という位置づけである。

このほか、近年、有人宇宙飛行計画に力を入れているインドは、2026年中に、新型宇宙船「ガガニャーン」の無人飛行試験を行う計画だ。

水星、金星、そして火星へ。宇宙探査・科学分野にも注目

宇宙探査・科学の分野でも、注目の話題が相次ぐ。

7月には、2025年5月に打ち上げられた中国の探査機「天問二号」が、小惑星「カモオアレワ」に到着し、探査とサンプル採取を行う予定だ。

カモオアレワは2016年に発見された小惑星で、太陽のまわりを公転しつつ地球の近くを伴走しているように見える「準衛星」のひとつ。直径は40〜100mと見積もられており、これまでに探査機が訪れた小惑星の中では最小級とされる。その起源は不明なものの、月面への衝突で放出された破片である可能性も示唆されており、サンプルを分析することで、起源や準衛星そのものの特徴を解明するのに役立つと期待されている。

予定どおり探査が進めば、2027年11月頃にも地球にサンプルの入ったカプセルを送り届ける予定だ。

  • カモオアレワを探査する天問二号の想像図 (C)CNSA

    カモオアレワを探査する天問二号の想像図 (C)CNSA

夏以降には、ロケット・ラボとマサチューセッツ工科大学の金星探査機「ヴィーナス・ライフ・ファインダー(VLF)」の打ち上げが予定されている。近年、金星の大気中に生命が存在する可能性を示す兆候が発見されたことで、関心が集まっている。VLFは金星の大気圏に突入する探査機で、降下しながら大気中の有機物の有無、組成などのデータを集め、地球に送信する。

  • 金星の大気圏に突入する探査機「ヴィーナス・ライフ・ファインダー」(VLF)の想像図 (C)Rocket Lab

    金星の大気圏に突入する探査機「ヴィーナス・ライフ・ファインダー」(VLF)の想像図 (C)Rocket Lab

10月以降には、NASAの宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」の打ち上げが予定されている。ローマン宇宙望遠鏡は、かの有名な「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機で、ハッブルと同等の解像度を保ちながら、少なくとも100倍広い領域を一度に撮影できる。つまり、同じ観測時間でより広い範囲のデータを効率よく集められることを意味する。この性能を活かし、ダーク・エネルギーや系外惑星など、数々の宇宙の謎に迫れると期待されている。

  • ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の想像図 (C) NASA

    ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の想像図 (C) NASA

10月から12月頃には、JAXAの「火星衛星探査計画」(MMX)の打ち上げが予定されている。火星の衛星「フォボス」からのサンプル・リターンをめざすミッションだが、打ち上げに使用するH3ロケットが飛行停止になっていることから、現時点で予定どおり打ち上げられるかどうかは不透明だ。とくに、地球と火星との位置関係から打ち上げられる期間が決まっており、2026年末のタイミングを逃すと、次は約26カ月後(2028年末〜2029年初頃)まで待たなくてはならない。

11月下旬には、欧州と日本の水星探査機「ベピコロンボ」が水星周回軌道に投入される。ESAの水星周回機(MPO)とJAXAの水星磁気圏周回機「みお」から構成される探査機で、水星の表層や内部構造、磁場・磁気圏、希薄な大気などを総合的に調べる。2018年10月に打ち上げられて以降、電気推進と地球・金星・水星の重力アシストを組み合わせて航行し、約8年もの旅路を経て水星に到着する。

  • ベピコロンボの想像図 (C)ESA

    ベピコロンボの想像図 (C)ESA

少し変わり種の計画としては、6月頃に、NASAのガンマ線天文衛星「スウィフト」を延命させる「スウィフト・レスキュー・ミッション」の打ち上げが予定されている。スウィフトは2004年に打ち上げられ、当初の設計寿命を大幅に超えて運用を続けているが、大気抵抗で軌道が下がり続けている。これを延命させるため、専用の衛星を結合させて軌道制御を代行し、より高い軌道に再配置して、科学観測の継続をめざす。

打ち上げには、ノースロップ・グラマンの空中発射ロケット「ペガサスXL」が用いられる計画で、2021年以来の久々の打ち上げとなる。


月への再訪をはじめ、新しいロケットが空を拓き、探査機が遠い世界に触れるなど、2026年は宇宙開発にとって大きな節目となる一年となりそうだ。

かつて私たちが夢見た21世紀という未来は、技術の進歩とともに、いまや現実として私たちの前に立ち現れ始めた。そして、その先には新たな未知が待っている。それは次の世代の想像力を揺さぶり、新たな時代を拓く原動力にもなる。

今後もそのひとつひとつの出来事を読者諸賢と共有し、半世紀へ向かうこの長い旅路の足音に耳を澄ませ、次の一歩が刻まれる瞬間を見届けていきたい。