生成AIの爆発的普及により、激動の2025年となった半導体市場。AI関連の半導体を手掛ける半導体メーカーとそれ以外で明暗が分かれた年となったが、AI関連には注力せずとも存在感を発揮する半導体メーカーも多数存在する。センサやロジックに強みを持つamsと、照明分野で強みを持つOSRAMが2020年に合併して誕生したams OSRAMもそうした企業の1社だ。
そんな同社の日本法人ams-OSRAMジャパンを2024年1月より代表取締役社長としてけん引するのが針田靖久氏である。同氏に2025年の振り返り、そして2026年の展望を聞いた(ちなみに同社の名称は本社がams OSRAM、日本法人がams-OSRAMジャパンとハイフンの有無などが微妙に異なっている)。
「Sense the power of light」の下、光とセンサで成長を目指す
ams OSRAMは2024年、グローバルで企業の方向性を「Sense the power of light(光の力を感じよう)」に決定。OSRAMの強みである光分野と、amsの強みであるセンシングに注力することを打ち出した。
そんな同社の2024会計年度の売上高は34億3000万ユーロ。そのおよそ7割を半導体、残りの3割を特殊ランプが占めている。半導体としては、LED、MicroLED、レーザー、受光素子(センサ)といった発光素子関連や各種センサ類のほか、エミッタドライバICやセンサインタフェースSoCなどのロジックも手掛けている。
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ams OSRAMのポートフォリオ。LEDを中心とする発光素子とセンサ、そしてそれらを動かすためのドライバIC/プロセッサという他社には見られない珍しい構成となっている (資料提供:ams-OSRAMジャパン、以下すべて同様)
売上高をアプリケーション(市場)別で見ると、自動車向け52%、産業/医療向け25%、コンシューマ(主にスマートフォン)23%であり、国・地域比率は日本含むAPACが50%、EMEA29%、米国21%としている。
同社の強みとして針田氏は、照明で110年以上、センシングでも40年以上の歴史に裏打ちされた「イノベーションを主導」する力、LEDとセンサ、それらを動かすドライバICまで一括して提供できるという「ユニークなポートフォリオ」、ドイツとオーストリアという品質へのこだわりが強い地域を本拠地とし、自動車や産業機器からのニーズにも応えられる「品質第一」、そして2万人弱の全従業員のうち5000人がエンジニアで、日本でも60名ほどの従業員のうち、FAEまで含めれば半数ほどがエンジニアに属するほどで、そうした顧客の技術と自社の技術を現地で理解したエンジニアが顧客を支える「現地サポート」の4点を挙げる。「日本は土地柄的に多様なセンシングニーズがあり、それに対応する必要性と、システムとして具現化するための能力が必要。それを実現できる優秀なエンジニアが多く在籍してくれている」(同)と、針田氏は自社のエンジニアの優秀性を高く評価しており、その結果として同社が「光(電磁波)を自在に操ることができる稀有な企業」であることが成し遂げられているとする。
また、コモディティ化が進むLEDの中で、イノベーティブな製品を出していくためにIPを守っていく必要があるいうことで、2025年10月に日亜化学工業と15年にわたるIPのクロスライセンス契約を締結。先端的なIPを共有して市場に打ち出していくほか、IPの侵害については両社で強く対応していくことを取り決めた。「それが顧客の利益を守ることにもつながる」と針田氏は、業界トップクラスの2社が手を組むことが顧客のメリットになることを強調する。
自動車、産業、そして医療にも注力
自動車、産業、医療、コンシューマという同社の4本柱のうち、日本市場は主に自動車と産業分野が事業のけん引役となってきた。いずれも日本企業が市場で存在感を示す産業分野であり、同社もそうした顧客企業の強みを発揮するソリューションを提供することで成長を続けてきた。
そして同氏が社長に就任して以降の2年で、さらに医療へも注力を進めてきた、国内大手CTメーカーに同社の医療画像処理用ASICが採用されることが決まるなど、新たな取り組みの成果が見えてきたという。「元々、日本の売上高は自動車向けLEDが大きく、amsが手掛けてきたセンサはなかなか市場に入り込めていなかった。しかし、この2年で代理店にも協力してもらいながら注力し、知名度の向上を図ってきた結果、産業分野のみならず、医療画像処理用ASICや各種センサ向けのデザインインが複数出てくるようになってきた。CMOSセンサ&ASIC(CSA)事業における産業・医療のデザインインがより多く、未開拓ゾーンも多かったので、2026年以降の伸びを楽しみに思っている」(同)と、同氏が社長に就任したこの2年の間にLED以外の分野でも成長が期待できるようになってきたという。同氏も「今まで自動車メインで、産業用がそれに次ぐ形で事業を展開していたが、第3の柱として医療にも期待できるようになってきた」と手ごたえを語る。
2026年はこれまでの取り組みが実を結ぶ年に
針田氏はこれまでの自社の取り組みを振り返り、「盤石になれるための基礎はできていた」と語るほか、「フォーカスしている分野がクリアで、それぞれにチームを構築して、努力してもらっている」と自社のスタッフの努力あってこその成長であるともする。
その背景にはamsとOSRAMという異なる文化の2社のスタッフをワンチームになるための取り組みを推進してきた成果があるという。「ワンチームになったらどういったメリットが生まれるのかの議論をはじめ、ワンチームにあるための取り組みを進めてきた結果、チームワークがかなり浸透した。それが今のビジネスの成長につながっている」(同)と、amsでもなく、OSRAMでもなくams OSRAMとしてビジネスを成長させていくという意識が根付いてきたことが現在の躍進につながっているとの見方を示す。
「個人的には楽しくやらないと仕事はできないと思っている」と針田氏は持論を語る。「だから、笑う門にしか福は来ないから、みんなで楽しくやろうと言ってきた」と笑顔を見せる。
そんな針田氏は「日本の顧客は最先端を進んでいるので、そのニーズをフィードバックできることで、顧客の成長と自社の成長につなげていきたい」と未来を見据える。
激動の半導体業界の中にあって2025年は、同社の5リージョンのうち、日本はもっとも高い成長率を達成したという。これまでの取り組みが実を結ぶことが見えてきた2026年も「2025年同様に頑張れるのではないか」と抱負を語る。市場としても、日本の自動車業界を取り巻く環境は厳しい面もあるが、「日本の自動車メーカー各社ともアイディアを含めて強さを持っている。各社ともに、さまざまな作戦があると思っており、日本市場として見た場合、悪くなるとはそこまで思っておらず、引き続き成長につなげていければと思う」との見方を示し、2026年をこれまでの取り組みが実を結ぶ期待の年にしたいとする針田氏。
光とセンサという稀有な組み合わせで半導体業界で存在感を増す同社。MiniLEDやMicroLEDのニーズも照明という側面ではなくデザインという側面から注目が高まりを見せているとのことで、そうした顧客からの注目が高まれば高まるほど、文字通り、2026年を明るい年として成長につなげていくことが期待できそうである。







