18nm FD-SOI+ePCM採用のマイコン製品第1弾を正式発表
STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は11月18日、18nm FD-SOIプロセスを採用したPCM(相変化メモリ)内蔵マイコンの第1弾製品として「STM32V8シリーズ」を発表した。この発表を踏まえ、11月20日、日本法人のSTマイクロエレクトロニクスが説明会を開催、同製品シリーズについての技術概要などを解説した。
同社の18nm FD-SOI+ePCMプロセスは2024年3月に発表された独自開発の次世代プロセス。18nm FD-SOIプロセスについてはSamsung Foundryと共同開発したもので、Samsung側でもプロセス移管後に提供が可能になるという。また、PCMはゲルマニウム・アンチモン・テルル(GST)合金で構成され、急速な加熱・冷却制御によってGSTがアモルファス相(高抵抗)と結晶相(低抵抗)にそれぞれ変化する性質を利用するメモリ技術。電気抵抗の異なる2つの相を理論値0と1とし、低電圧での読み出しおよび書き込みが可能といった特徴があり、同社では40nm CMOSプロセスで製造される従来のSTM32マイコンと比べて2.5倍のメモリ密度を提供可能と説明している。
PCMを長年にわたって研究開発してきたSTMicroelectronics
ちなみにSTMicroelectronicsは、10年以上にわたってPCMの技術開発を行ってきた経験を有している。2008年にはIntelと投資会社と共同でPCMやNOR/NANDフラッシュメモリの製造・開発合弁会社「Numonyx」を設立し、メモリ事業を分離・独立させた(Numonyxは2010年にMicron Technologyが買収)が、PCM技術の特許などの一部はSTMicroelectronics内で保有していたと言われており、以降も連綿と研究開発が続けられてきた結果が今回のSTM32V8へと結実したと言える(実際には先行して28nm FD-SOI+ePCMを採用した車載マイコン「Stellar」が同社のPCM採用例としては存在しているが、18nm FD-SOIプロセスでは今回が初となる)。
その特徴としては、メモリ密度を高めることができる点が挙げられる。同社が市販の他社製品で採用されているMRAMおよびRRAMとビットセルサイズを比較したところ、PCMは18nm FD-SOIで0.059μm2、MRAMが16nmプロセスで0.129μm2、RRAMが12nmプロセスで0.174μm2と、プロセスノードは若干大きいながら、サイズについては半分以下を実現できていることを確認したとする。ビットセルサイズが小さくできるため、現状のSTM32V8では最大4MBのePCMではあるものの、将来的には顧客の要望次第ながら、さらなる大容量品の供給も可能であるとしている。また、そのほかにも、一般的な不揮発性メモリで必要なイレーズコマンド不要で書き込みができるほか、技術的には1ビット単位での書き込みができる(実際の利用では1ワードなどの単位での書き込みを想定)ため、小規模単位のプログラム更新が可能だとしている。
MPUクラスの性能を実現、SpaceXがStarlink衛星に採用
CPUコアにはArm Cortex-M85コア(1コア。最大動作周波数800MHz)を採用。CoreMarkのベンチマークスコアは5072とMPUクラスの性能を有している。また、ArmのHeliumテクノロジーを活用可能で、機械学習の性能も向上しているほか、最大4MBのPCMも内蔵。さらに、FD-SOIということで、従来の40nm CMOSプロセスと比べて消費電力を削減できるとするほか、-40℃~+140℃のジャンクション温度対応に加えて宇宙線をはじめとする放射線に基づくソフトエラーに対する耐性も向上しているとのことで、すでにアーリーカスタマーとしてSpaceXがStarlink衛星の小型レーザー・システムに同製品を採用することを決めたとしている。
STでは、宇宙・航空・防衛のみならず、FA/ロボティクス、エネルギー管理システム、スマートシティ/ビルディング、ヘルスケア/バイオセンシング、オーディオ関連分野などの要求が厳しい産業用途での活用が期待されるとしている。
なお、製造は同社の仏クロル工場が担当。SpaceXのようなアーリーカスタマを中心に一部の顧客に対してはサンプルならびに情報提供を開始しているほか、2026年第1四半期より主要顧客にサンプル提供(一部量産品の提供も含む)を開始する予定としている。製品ポートフォリオとしては、パッケージで6品種、PCMの容量が2MBと4MBの2種類、そしてハードウェア暗号化エンジンの有無で分けられ、合計24製品が提供されるという。









