日特建設、KDDIスマートドローン、KDDIの3社は10月9日、建設業界における人手不足や作業効率化、安全性向上といった課題の解決を目指し、自動充電ポート付きドローンを活用した遠隔測量実証を9月19日に共同で実施した結果を発表した。
今回の実証では、日特建設の蓮田総合センター(埼玉県蓮田市)から約65キロメートル離れた、同社が施工するのり面現場(群馬県多野郡神流町)に対し、ドローンを遠隔操作して写真測量を行うことに成功した。
なお、この実証は日特建設がのり面工事におけるドローンによる遠隔操作技術(写真測量・点検)の内製化に向けた効果を検証することを目的に実施された。
実証実験の背景
近年は建設工事に従事する作業者の減少や高齢化が社会問題となっており、国土交通省はインフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、特に「i-Construction 2.0」を通じて遠隔施工技術の導入を呼びかけている。
日特建設では、のり面工事におけるICT活用の内製化を進めており、2019年の初のICT研修実施以降、各支店のキーマン育成を推進し全国各地でドローンを用いたのり枠工や吹付のり面の3次元点群データ作成および精度検証を進めてきた。
一方、現場でのドローン測量にはノウハウやスキル習得が必要であり、さらなる普及には人材育成・支援が課題となっていた。そこで、課題解決のために日特建設がドローン遠隔操作技術の内製化の検討を目的として、実証を実施した。
ドローン遠隔操作技術を内製化することで、現場への出張や支店内の人員移動が不要となり、時間とコストを削減できる。また、遠隔操作により、現場管理社員の技量に依存せず測量や点検を実現できるようになる。取得写真データはクラウドへ転送され、スムーズな3次元データ解析が可能だ。
ドローンは目視外飛行(レベル3飛行)にも対応し、災害現場での立ち入り調査のリスクを軽減する。また、日特建設の全社的なドローン共同運用体制を整備し、技術やノウハウの共有による現場管理体制の向上が見込める。
実証の概要
実証を行ったのは、日特建設蓮田総合センター(埼玉県蓮田市)から約65キロメートル離れた日特建設施工のり面現場(群馬県多野郡神流町)。のり面現場におけるドローン測量を遠隔で実施した。
ドローンはStarlink通信を活用した遠隔操縦で運用。のり枠工の出来形管理において、ドローンを用いた自動・手動遠隔航行による連続写真データ取得と3次元点群データ作成を行い、出来形計測精度を検証した。
使用機材は自動充電ポート付きドローン「DJI Dock 3」、および、遠隔操作対応型のドローン「DJI Matrice 4TD」だ。ドローンポートは通信で自動開閉し、ドローンの離着陸から連続撮影までを自動実行。ミッション終了後はドローンを自動着陸・収納する。また、ドローン測量の標定点は、GNSSロガー内蔵対空標識を現場に設置した。これにより、従来の対空標識(標定点・検証点)の測量手間を軽減する。
ドローンオペレーションを管理するソフトウェア「DJI FlightHub 2」を用いた遠隔操作により、高低差のあるのり面現場でも地形に合わせた飛行で正確な写真データ取得できることが確認された。
また、連続写真撮影は自動航行に加えて、必要に応じて遠隔操作側のPCのマニュアル操作を行うことにより、のり面周辺の立木などの障害物を回避することが可能だった。

