国・地域ごとに最適な製品展開を推進するRyzen

Q:次にRyzenの話を聞かせてください。ドイツのPCCGによれば、MicrosoftがWindows 10でAMDの3D V-Cache Performance Optimizer Driverのサポートを外したと報じましたが、これに関して何かコメントはありますか?

A:我々はWindows 10のサポートを継続する事をコミットメントしている。確かにソフトウェアの変更がエンドユーザーに混乱を引き起こすケースが時々見かけられるが、AMDはMicrosoftと協力して継続的なサポートと修正を行ってゆく。エンドユーザーがRyzen 9 X3D製品でWindows 10を継続して使用できるように、適切な解決策を提供する。

Q:そもそもX3D製品で両方のダイに3D V-Cacheを搭載すれば、キャッシュの非対称構成の問題は解決するのではないでしょうか?

A(Krisch氏):残念ながら問題はそう簡単ではない。結局プログラムが必要とするデータはどちらかのダイのL3に入る事になる。プログラムとデータが別々のダイになったら、3D V-Cacheのメリットは帳消しになってしまうからだ。

それに3D V-Cacheは高価な技術であり、両方のダイに搭載しても、(その価格上昇に見合う)価値を提供できない。

Q:次にメモリについて教えてください。CAMM2やCU-DIMM/CSO-DIMMなどへの対応はどういう状況でしょうか?

A:我々はメモリ技術の進歩についてはもちろんちゃんと把握している。ただ我々が重視しているのはプラットフォームの継続性と安定性の確保だ。AM4はすでに10年に達している(注1)。同じようにAM5についても、長い期間に渡って提供してゆきたい。質問に答えると、新しいメモリの規格やメモリ技術を考える際にはバランスが重要となる。既存のAM5プラットフォームに与える影響や、ユーザーが既存のAM5インフラをそのまま利用しながらアップグレードできるか。それと同時に新しい技術がもたらすメリット(高速化や低遅延など)をどう提供するか。現在こうした事を評価している最中であり、これをサポートする事のメリットとデメリットのトレードオフを検討している最中だ。技術的な観点で言えば、AM5はCAMM2やCU-DIMMへの対応そのものは可能だ。

ただ実はこれは製品によって異なる。Granite RidgeベースのRyzen 9000シリーズと、同じくAM5ながらAPUベースのものでは、メモリコントローラそのものが異なるし、当然機能も異なる。なので、すべての製品に一貫したメモリサポートを提供するのはやや複雑な課題となる。

筆者注:Socket AM4の最初の製品はBristol RidgeベースのGen 7 APUで、OEM向けに2016年に出荷開始された。

Q:AMDはRyzen 5 5500X3Dをラテンアメリカマーケットに提供しましたが、他の地域、特にAPACというか日本に提供する可能性はありますか?

A:これはTravisへの質問だな。

A(Krisch氏):我々はそれぞれの地域のニーズに合わせた製品を展開する様に務めている。日本に関して言えば、そもそもクライアントのビジネスは非常に強力であり、しかも顧客はRyzen 7以上の高価なCPUを購入してくれるという、世界でもっとも裕福な地域でもある。こうした状況では、(Ryzen 5 5500X3Dの様な)低価格製品へのデマンドは高くないと考えている。

  • Travis Krisch氏

Q:それとAM4ベースの新製品に関してはもう終息したと考えて良いのでしょうか? それともまだ今後、AM4の新製品を投入する可能性はあるのでしょうか?

A:基本的に将来の製品についてのコメントは出来ないのだが、我々は各地域で何が起きているのかをチェックし、製品ポートフォリオ内でシェアを拡大したり、ソリューションを充実できる余地があるかどうかを常に検討している。ただ今のところAM4分野で何かを発表する具体的な計画は無い。

A(Krisch氏):AM4は販売の観点からいっても複数年に渡って非常に安定しており、その需要がある限りはそこに供給を行う。恐らく18~24か月程度になるだろう・

Q:つまりもう新しい(AM4)製品は要らないということでしょうか?
A(Krisch氏):状況次第だ。

Q:話をAM5に移します。まもなくRyzen 5 5500Fが投入されると思いますが、Ryzen 3はどうでしょう? Zen 5ベースのRyzen 3の計画はあるのでしょうか? それともRyzen 3はZen 4コアどまりの予定なのでしょうか?

A:デスクトップ市場ではそもそもRyzen 3の売り上げはそれほど多くない。ここではRyzen 5以上のモデルを購入する傾向が強い。モバイル向けはまた別で、ここにはRyzen 3クラスの製品の需要が高い。これは先程の議論に似ているが、市場に需要があり、消費者が求める製品を提供できる場合我々はそれを提供する。Socket AM4にはRyzen 3製品を投入しており、一部地域では成功を収めているが、それはグローバルな規模で大きな勢いという訳ではない。なのでRyzen 3に関しては市場需要を慎重に分析し、地域や国ごとに需要を評価して成功が見込める場所でのみ、選択的にRyzen 3を採用する戦略を取っている。

Q:Ryzen AIやRyzen AI Maxをデスクトップに提供する予定はありますか?

A:Ryzen AIはともかく、Ryzen AI Maxに関してはAM5と互換性が無いから、そうした予定はない。

Q:Ryzen AI Maxは4chメモリなのでAM5とは互換性が無いと思いますが、Threadripperのプラットフォームなら4chメモリが使えるのではないでしょうか?

A:それはエンジニアリングチームに確認してみないといけないが、興味深いアイディアだ(笑)。

  • David McAfee氏

Q:Ryzen関係の最後の質問です。チップセットについてですが、間もなくB650チップセットを受注中止とし、B850で置き換える計画と聞きましたが、それは事実でしょうか? B650搭載のマザーボードは100ドル程度の低価格なものが多く、一方B850は200ドル程度とやや高価なので、B650を求める声は大きいと思うのですが、どうでしょう?

A:現在のAM5のマザーボードのポートフォリオは非常に複雑だ。多くの選択肢があってユーザーに混乱を引き起こしている。B850は(B650の)新モデルで、現在は価格が少し高くなっているが、B650とB850の基板の製造コストに違いはないので、価格差は収束すると予想している。

B650は、特にシステムインテグレーターによるPre-build systemで継続的に採用が続いている。特に政府の入札などで、長期間に渡って一貫性を維持する必要がある地域が複数存在する。なのでB650は当面消えることはない。ただ我々は時間を掛けてAM Ecosystemを800シリーズに移行する予定だ。

また品質の観点だけでなく、パフォーマンスとユーザー体験の観点からも、DIYマーケットは800シリーズに移行すべきだと考えている。単にチップセットだけでなく、マザーボードパートナーも世代ごとに学習を重ねて最適化を進めているからだ。メモリや電源配線のRouting、OC性能やOC動作時の安定性など、すべてが800シリーズ世代では改善されているからだ。