単純比較では効果を見誤る?
マーケティングに携わる方は、消費者アンケートなどの定量調査を集計したり、テレビCMやWeb広告の効果を検証したりする機会があるのではないだろうか。
このようなとき、施策前後での消費者の態度変容(購入意向率など)や売上の変化を“単純比較”しているケースが多い。しかし、施策単体の結果として単純比較するのでは、季節性(お盆や正月)やタイムラグ(実施した施策の効果が出始めるのが遅れること)、打った施策以外の要因の影響を考慮できないなど、多くの問題をはらんでいる。
マーケティングの現場で行う意思決定には統計や因果推論の知識が必要だが、そうした知識が浸透していないため“本当は有意な差がないのに、有益な傾向差を見つけたと勘違いするケース”が数多く見受けられる。そうした状況を変えるために、小川貴史氏(秤 代表取締役社長)は書籍『Excelで学べるデータドリブン・マーケティング』において、Excelを使った演習形式による統計や因果推論の基礎知識を共有している。
Excelで分析しながらMMMを学べる
本書では、オフライン施策とオンライン施策を横並びにした効果検証・予算最適化に対応する分析法「マーケティング・ミックス・モデリング(以降、MMM:Marketing Mix Modeling)」を中心に演習を行う。
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書籍内の図1-3-2。MMMとは、目的変数を説明変数で説明する予測式を作る「モデリング」と、予測式をもとに施策の効果最大化または以前と同じ効果を最小予算で達成するための「予算配分最適化シミュレーション」を行うことを指す
本来、MMMは高度な分析サービスだが、本書の演習は統計学に初めてチャレンジする人でも分析の感覚をつかめるよう設計されている。Excel VBAで組んだマクロとExcelアドインの演算機能「ソルバー」を使った著者オリジナルのExcelファイルが購入特典としてダウンロード可能で、本書を読み進めながら演習形式で分析の感覚を養うことが可能。
また、Windows PCで無償利用できる統計解析ソフト「エクセル統計(体験版)」を用いた顧客分析の演習も取り上げており、より本格的な統計に踏み出せるのも特徴。
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書籍内の図1-5-3。MMMにより、TVCMの放送量に対する売上を予測したグラフ。本書の第3~4章で、基本統計量の見方を知る演習と相関係数を把握する演習を行うほか、推定結果で出力される決定係数やP値などの指標の内容を学ぶ
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本書の一部を抜粋。Excelを使った演習をベースに、分析をするうえで知っておきたい基礎知識、統計解析上の落とし穴(多重共線性、系列相関、不均一分散、説明変数の外れ値、欠落変数バイアス)、モデルを選択するうえで重要な視点などを共有している
これまで、MMMを学ぶためには難解な専門書を読み進める必要があった。小川氏は手探りでヒントを探しながら学んできたため、少なく見ても基礎の学習に1,000時間は費やしたと語っている。そうした経験から、より早く習得できるよう演習形式の構成を採用したという。
マーケターはもちろん、組織においてマーケティングの予算配分を決定する立場にある経営層にとっても役立つ技術をぜひ本書で学んでみてはいかがだろうか。