Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメント(日本TI)は11月27日、同社のリアルタイムマイコン「C2000シリーズ」の新シリーズとして、エッジAIアクセラレータ(NPU)を搭載した「TMS320F28P55xシリーズ」ならびに、同社の64ビットCPUコア「C29」を搭載した「F29H85xシリーズ」を発表した。

  • TIのC2000リアルタイムマイコンの新シリーズ

    TIのC2000リアルタイムマイコンの新シリーズとなる「TMS320F28P55xシリーズ」と「F29H85xシリーズ」の概要とパッケージイメージ (提供:TI、以下すべてのスライド同様)

リアルタイムマイコンにNPUを搭載

TMS320F28P55xシリーズは、NPU搭載リアルタイムマイコンという位置づけで、CNNベースのNPUにてメインCPUの代わりにニューラルネットワークモデルの実行を行うことで、ソフトウェアによるAI処理と比べて5~10倍ほど低いレイテンシを実現できるという。また、このNPUで実行されるモデルは、トレーニングを通じてさまざまな環境を学習して適応することで、例えばモータベアリング障害やアーク障害といった故障の検出精度を99%以上に高めることが可能であるとするほか、同社の包括的なAIツールチェーンは、特定のアプリケーションに合わせて最適化されてテストされたモデルが含まれており、あらゆるレベルのエンジニアに対してAIモデル開発プロセスの簡単な実行を提供するとしている。

ハードウェアとしては、独自の32ビットCPUコア「C28x」(動作周波数150MHz)、5つの独立したバンクで構成される最大約1.1MB(1088KB)のフラッシュメモリを内蔵しているほか、最大24個のPWMチャネル、最大39個のA/Dコンバータ(ADC)チャネル(12ビット)も搭載。メモリオプションやパッケージサイズ、機能安全レベル、サイバーセキュリティの仕様などによりシリーズ全体として40種類以上の製品が提供されるという。

  • 「TMS320F28P550SJ」の機能ブロック図

    TMS320F28P55xシリーズの第一弾製品となる「TMS320F28P550SJ」の機能ブロック図 (出所:TI)

  • TMS320F28P55xシリーズの特長
  • TMS320F28P55xシリーズの特長
  • TMS320F28P55xシリーズの特長
  • TMS320F28P55xシリーズの特長
  • TMS320F28P55xシリーズの特長

クリティカル分野に適用可能なHSM搭載64ビットリアルタイムマイコン

一方のF29H85xシリーズは、車載/産業機器向けに高速かつ安全な処理を提供することを1チップで実現したリアルタイムマイコンシリーズ。C29コアはそうしたニーズに対応することを目的に開発された64ビットCPUコアで、従来の32ビットCPUコア「C28」と比べてリアルタイムのシグナルチェーン性能が2~3倍に引き上げられているほか、FFT性能も5倍に向上、汎用コードの処理速度も2~3倍に改善され、割り込み応答時間およびレイテンシが4分の1に低減されているという。

  • F29H850TUの機能ブロック図

    F29H85xシリーズの第一弾製品となるF29H850TUの機能ブロック図 (出所:TI)

また、保護されたパイプラインを持つVLIWアーキテクチャにより、最大8つの命令の並列実行が可能なことに加え、総合的な診断メカニズムとエラーチェックメカニズムを備え、機能安全としてもISO 26262のASIL D、IEC 61508のSIL 3まで準拠しており、3コア(いずれも動作周波数200MHz)のうち、CPU1とCPU2をロックステップとして利用することで、ロックステップ側でAUTOSARや重要な安全/セキュリティタスクなど、ホストマイコンが必要とする重要な機能をASIL-Dの整合性レベルで処理しつつ、残りのコアでシステム内の制御機能を処理するといったことができるようになるという。

さらに、C29コアには安全/セキュリティユニット(SSU)が統合されているため、同じコア内でメモリとペリフェラルの保護を維持しながら複数の制御機能をシームレスに実行しつつ、機能が相互に干渉するのを防止することもできるとするほか、ハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)も統合しており、不正アクセスやサイバー攻撃からシステムを保護することも可能となっているとする。

  • C29コアの特徴
  • C29コアの特徴
  • C29コアの特徴
  • F29H85xシリーズに搭載されるC29コアの特徴

なお、TMS320F28P55xシリーズの「TMS320F28P550SJ」および「TMS320F28P559SJ-Q1」はすでに同社Webサイトより量産開始前注文が可能となっているほか、F29H85xシリーズの「F29H850TU」および「F29H859TU-Q1」は2024年末までに提供が開始される予定で、いずれの製品についても評価基板/開発キットも用意済みだという。