TSMCは10月9日、2024年9月の売上高を発表した。それによると同月の売上高は前月比0.4%増、前年同月比39.6%増の2518.7億NTドルとなり、単月売上高として過去2番目、第3四半期全体では売上高は7596億9200万NTドルとなり、四半期別の過去最高額を更新したという。

AIやスマートフォン向けに先端プロセスの需要が旺盛であることが背景にあり、2024年通年売上高も前年比で3割増となる勢いとなっている。

  • TSMCの2024年9月の売上高

    TSMCの2024年9月の売上高(単位:百万NTドル)と2024年1~9月までの累積売上高 (出所:TSMC)

米国でのパッケージング/テストでAmkorと提携

また、同社はAmkor Technologyと協力して、先端パッケージングおよびテスト機能を米アリゾナ州に導入し、同地域の半導体エコシステムを拡大するための覚書を締結したことも発表している。

これまでも両社はHPCや4G/5Gなども分野をサポートすることを目的ん、先端パッケージングやテストに関する先端技術供給を台湾で協力して進めてきた。今回の契約は、こうしたこれまでの取り組みの延長となるもので、TSMCはAmkorがアリゾナ州ピオリアに計画している後工程施設にて、各種のサービスを受けることとなるという。この契約により、TSMCは同州フェニックスの自社ファブで製造された半導体を米国内でパッケージングまで行うことができるようになり、全体的な製品サイクルタイムが短縮できるようになるとTSMCでは説明している。このAmkorの後工程工場では、TSMCのInFOやCoWoSが適用される模様である。

米国でのファウンドリビジネスとして競合するIntelやSamsungは業績が伸びていないこともあり、台湾の半導体業界関係者の中には、TSMCの米国での懸念事項は競合との技術競争ではなく独占禁止法に触れないような事業展開だと見る向きもあるようだ。

Samsungは半導体事業トップが異例の謝罪

そのTSMCと同じく先端プロセスを提供するSamsung Electronicsだが、同四半期の業績(暫定速報値)は、売上高が前年同期比17.2%増の79兆ウォン、営業利益は同274%増の9.1兆ウォンと3四半期連続で増収増益を達成したが、第2四半期の営業利益(前年同期比16倍の10兆4400億ウォン)や利益率も14.1%から第3四半期には11.5%に低下するなど、市場の期待通りと言えない状況となっている。

そのため、同社は速報値の発表と同じ10月8日、同社の半導体部門責任者である全永鉉氏(Samsung副会長)が株主や顧客、従業員に業績低迷を謝罪する異例ともいえる文書を発表した。

それによるとSamsungの技術競争力に対する懸念が生じており、その責任は経営者にあるとして謝罪。今後、企業文化の見直しとともにチャレンジ精神を掲げ、好機へと転換するべく長期的な技術競争力の強化に注力するとしている。

同社は、生成AI向けで活用されるHBMで出遅れているほか、ファウンドリ事業も先端プロセスの歩留まり低迷で大口顧客をつかみ切れていない状況が続いていると言われており、今回のメッセージはこうした懸念に対する同社経営陣の危機感の表れと言えるだろう。

なお、今回の業績発表は、Samsung全体業績の暫定速報値であり、半導体などの個別事業の業績は確定値として10月末に発表される予定である。