HTC代表取締役・臼井宏太郎が語る「営業利益率25~35%を達成 デイサービスでも知恵を働かせて」

慢性的な赤字経営、働き手の人材不足……。高齢化による介護ニーズは高まる一方ですが、事業者側は厳しい経営環境に直面しています。国の実態調査では直近5年間の各デイサービス事業所の営業利益率の全国平均は約2.6%に過ぎません。

 介護保険法が施行されてから二十余年、「施設系」と言われる介護事業所では一度もマイナスになったことがなかったのですが、昨年は施設系もマイナスになりました。それほど物価高や人件費などのマイナスインパクトが大きくなっているのです。

 当社は北海道札幌市で7カ所の「デイサービス我が家」を主軸に10拠点運営していますが、全事業所で黒字経営を実現しています。直近5年間の営業利益率(本社経費を除く、事業所単体)は25~35%になります。なぜ、このような収益性を実現できるのか。

 当社のデイサービスは1日7時間。朝のお迎えから始まり、施設に到着したら、脈拍や体温などのバイタルサインを測り、入浴や体操・機能訓練を行い、昼食後はレクリエーションを行い、おやつを食べた後に自宅まで送迎しています。エステなど何か特別な取り組みを行っているわけではありません。一般的な「レスパイトケア」と呼ばれる長時間型のデイサービスと内容は変わりません。

 何が違うのかというと、当社の一人ひとりのスタッフが当社の理念を理解して、目的・目標意識をもって介護をしているからです。先ほど申し上げたように、1日の流れは他のデイサービスと変わりません。正直に言えば、設備やハードでは他に負けていると思っています。なぜかというと、もともと当社が民家改修型のデイサービスからスタートしているからです。

 デイサービスの業界では後発企業である当社が施設面などで劣るとなれば、差別化する要素は「人」しかありません。当社の理念は「我が家に関わる全ての人の幸せ」です。顧客である利用者様やそのご家族、さらには当社で働くスタッフやそのご家族、取引業者、地域の方々といった皆に幸せになってもらいたいというものになります。

 こういった企業理念は、どの会社も掲げていると思います。そして、朝礼などで唱和したりしているケースもあるでしょう。しかし当社は、この理念を「ロジックツリー」という形で言語化し、フレームワーク(仕組み化)にしているのです。

 つまり、理念実現のためには顧客の「満足」と「利益」が必要です。そして、利用者様の満足を向上させるためには何が必要かと言えば、それはスタッフのスキル向上であり、マインドの向上です。また、利益については業績の向上とコストの適正化が欠かせません。これらを実現するために個々人が考え、自らの行動に落とし込むのです。

 結果、作業として介護を行うのと、理念や目的、目標を意識しながら、一つひとつの介護を行うのとでは雲泥の差になります。そして大事なのは「お客様の満足と利益は両立する」という考え方です。特に介護や医療の世界では、患者第一を掲げた結果、コスト度外視となり、経営が立ち行かなくなるというケースはよく耳にします。

 介護業は飲食業のように味、接客、価格、店内の清潔さ、立地、流行などの管理指標が少ない業界です。介護報酬が国によって決められ、立地も送迎ですから場所を問いません。これは他の業界にはないメリットです。

 民間企業が介護業界でも、知恵を働かせば、社会保障費や人手不足の問題を同時に解決することはできるのです。

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