資生堂が最終赤字108億円、中国事業不振が響く

資生堂(藤原憲太郎社長)の2024年売上高は前年同期比2%増の9906億円で、コア営業利益は9%減の364億円(同)、当期利益は前年から326億円減の108億円(同)の赤字となった。

 赤字の要因は中国・米州と、トラベルリテール(空港や免税店など旅行者を対象とした小売事業)の不振と、日本・中国を中心とした構造改革費用により非計上項目が288億円生じたことによる。

 中国・米州は景気が悪化していることも事実だが、化粧品関係者によれば「中国現地の企業が力をつけてきている」という。また以前、中国で化粧品の製造販売をしていた某化粧品会社の経営者は「過去に技術を取られてしまったことがある」と漏らす。

 最近では、日本国内でも韓国の化粧品がコストパフォーマンスを含め優秀だと評価されることも多く、中国市場においても韓国コスメに押されているのではないかという指摘もある。

 中国・トラベルリテールの事業戦略を、社長CEOの藤原憲太郎氏は「消費者動向・市場変化に迅速に対応することと、成長機会に変える組織能力の強化がポイント」だと話し、来期以降の黒字化に向けて「やるべきことはすべてやりきる」と語った。

 一方日本国内は好調で、2年連続で前年比10%成長を達成。ブランド別でも特に「SHISEIDO」が20%、「クレ・ド・ボーテ」が10%後半の伸びと、他ブランドも前年比10%は超えて推移した。

 化粧水が1本1万円を超える商品を複数抱えるブランドは、購入層は中年代以降と思いきや、意外に若い人からの支持も高い(関係者)。ここにはSNSに慣れ親しんでいる若年層で広がるルッキズム(外見至上主義)から、美容にかける投資は惜しまないという消費動向も窺える。

「資生堂の研究力や技術力は高いと外部から評されるが、それが実際の収益にうまくつながっていないのが課題」だと藤原氏。今後この課題を克服できるかが、赤字脱出に向けた鍵を握る。