OSAT(半導体組み立て・テスト受託業)大手Amkor Technologyが米国における後工程工場建設プロジェクトに対して、米国政府がCHIPS and Science法(CHIPS法)に基づき最大4億ドルの補助金を支給すると発表した。

対象は、Amkorが米アリゾナ州ピオリアに約20億ドル投資して建設する先端パッケージング・最終テストの施設建設およびそれに伴う2000人の雇用としている。

  • Amkor Technologyが米国アリゾナ州ピオリアに建設する予定の先端パッケージング工場の完成予想図

    Amkor Technologyが米国アリゾナ州ピオリアに建設する予定の先端パッケージング工場の完成予想図 (C)Amkor Technology(出所:Amkor Technology)

後工程へも支援で国家安全保障を強化へ

米国政府は、米国最大のOSATであるAmkorへの投資により、信頼性の高い米国内の先端パッケージングエコシステムを確保し、AI半導体の需要増大に対応することで、米国の経済と国家安全保障が強化されると直接投資の意義を強調している。また、TSMCやGlobalFoundriesなどのファウンドリが、米国内で製造した半導体チップを米国内でパッケージングして最終テストできるようになり、チップ製造プロセスの完全なエンドツーエンドサイクルを米国で行うことができるようになるとも説明している。

プロセスの微細化によるトランジスタ数の増加が物理限界に近づくにつれ、先端パッケージングによる性能向上が期待されている。こうした背景もあり、今回の補助金支給により、米国は半導体サプライチェーンの後工程部分の国内生産能力を拡大し、米国の技術リーダーシップの強化につながるとしている。

Amkorのアリゾナ新工場では、2.5D技術やその他の次世代技術などの最先端技術の活用が期待されている。同社の2.5D技術は、GPUやその他のAIチップの製造の最終段階で活用されており、新工場の稼働により、さまざまな顧客の自動運転車、5G/6Gスマートフォン、大規模データセンターに搭載される最先端チップのパッケージングおよびテストが米国内で行われることになる。

Amkorは、地元および米国全土で人材を育成する取り組みの一環として、アリゾナ州立大学、グランドキャニオン大学、ノーザンアリゾナ大学、マリコパコミュニティカレッジ、パデュー大学、ウェスタンマリコパ教育センターと提携し、フェニックスにある米国政府の「America Workforce Hub(米国労働力ハブ)」への投資を基盤とし、良質な仕事へのパイプラインを構築することになっている。

投資税額控除と政府融資も提供

同社は、適格資本支出の最大25%に相当すると見込まれる財務省の投資税額控除を申請する計画を表明している。最大4億ドルの直接資金提供に加え、CHIPSプログラムオフィスは、CHIPS法によって付与された750億ドルの融資権限の一部である約2億ドルの融資案をAmkorに提供する予定である。

なおTSMCは、台湾では、先端半導体デバイスについて前工程から後工程まで一貫してサービスを提供しているが、同社の米国工場であるアリゾナ工場は、前工程のみの提供で、後工程となる先端パッケージングは、Amkorが担うこととなる。