米国商務省は、世界3位のシリコンウェハサプライヤである台GlobalWafersの米国子会社であるGlobalWafers AmericaおよびMEMCに対して、CHIPS and Science法(CHIPS法)に基づき最大4億ドルの直接資金(補助金)を支給することを決定したと発表した。
半導体製造に必要なシリコンウェハの生産を米国内で行うことを支援し、米国の技術リーダーシップを推進することを目的としており、今回の支給決定により、米国政府がシリコンウェハから先端半導体製造までの一貫した半導体サプライチェ-ンを米国内のみでほぼ完結できる体制を構築しようとしていることが浮き彫りとなった。
GlobalWafersの子会社であるMEMCは、もともと米Monsanto(2018年に独Bayerが買収)の電子材料子会社としてシリコンウェハ製造を手掛けていたが、2016年にGlobalWafersが買収。買収後も、MEMCの社名のまま活動を継続しており、日本にも栃木県宇都宮市にシリコンウェハ製造工場(MEMC Japan)を有している。
ジーナ・レモンド米国商務長官は、今回の補助金支給決定について、「この投資により、GlobalWafersは、先進的なシリコンウェハの国内供給源を提供することで、米国の半導体サプライチェーンを強化する上で重要な役割を果たすことになる」と述べている。
今回の補助金の具体的な投資先は以下の通り。
テキサス州シャーマン(GlobalWafers)
米国初の先端プロセス向け300mmシリコンウェハ製造施設を設立。
ミズーリ州ピーターズ(MEMC)
300mmのSOIウェハ製造のため新施設を設立。重要なポイントは、SOIウェハは過酷な環境でも性能向上ができるため、防衛および航空宇宙の最終用途でよく使用されている点である。
さらなる製品戦略の一環として、GlobalWafersはテキサス州シャーマンにある既存のシリコンエピタキシャル ウェハ製造施設の一部をSiCエピタキシャルウェハ製造施設に転換し、150mmおよび200mm SiCエピタキシャル ウェハを生産する予定ともしている。SiCエピウェハは、電気自動車やクリーンエネルギーインフラストラクチャを含む高電圧アプリケーションにとって重要なコンポーネントとなっている。
なお、GlobalWafersは補助金支給の条件の1つである、地元の教育機関における半導体技術者や労働者の育成に向けて、テキサス州の地元のサザンメソジスト大学が主導するTexoma Tech Hubのメンバーであり、テキサス大学ダラス校が主導するNorth Texas Semiconductor Workforce Development Consortiumにも参加しており、テキサス州の半導体関連労働力の育成を支援することになっている。また、シャーマン高校、デニソン高校、グレイソン大学との革新的なパートナーシップにも参加しており、これらの学校に電子工学ラボを設立して、半導体業界の新入社員に必要な技術者認定に向けたトレーニングを提供するとしている。一方のセントピーターズでは、MEMCが同様に、国立産業・キャリア向上研究所(NIICA)および地元の高校と協力して、メンテナンス技術者の見習いプログラムを開発するほか、セントチャールズコミュニティカレッジと協力して、二重登録(Dual Enrollment)に参加している高校生が高度な製造および自動化に関わるキャリアに踏み出すのを支援するためのプログラム「MegaTech」を実施する予定としている。