AIの統合プラットフォームを提供するDataikuの日本法人であるDataiku Japanは7月19日、都内で開催したカンファレンス「Everyday AI Summit」に合わせて、メディア向けに説明会を開いた。
Dataikuが提供する「Everyday AI」
Dataiku VP, Product & Business SolutionsのSophie Dionnet氏は「企業において生成AI、つまり『Everyday AI』が組織にとって成功のカギになります。Everyday AIというのは、すべてのプロセスにAIを導入し、プロセスの仕組みを見直して組織のすべての人がAIを使えるようにすることです」と述べた。
同氏は、Everyday AIにおける道のりでは「生成AIの高速かつ管理された開発」「エンドツーエンドの分析生産性」「AIガバナンスのための備え」の3つのキードライバーがサポートするという。
生成AIの高速かつ管理された開発において、同社はさまざまなLLM(大規模言語モデル)によりアプリケーションを大規模で効率的に構築することができるIT部門向けの「Dataiku LLMメッシュ」や、データサイエンティスト向けに生成AIアプリケーションの開発を加速するためのビルディングブロックなどを備える。
今年4月には、データチームがエンタープライズ規模でRAG(検索拡張生成)を使用して、生成AIを搭載したチャット機能を構築するための新しい手法「Dataiku Answers」を発表している。
エンドツーエンドの分析生産性については、データ変換の生産性向上や機械学習と統計分析を容易にするための強化を実施。また、高速にデータプロダクトと機械学習プロダクトをパッケージ化して広めるために、2024年第4四半期中にビジネスの洞察を得るための生成AIを活用したスライドの提供を開始する。
AIガバナンスのための備えでは、EUにおいて2026年までにAI法遵守が必要となり、この規制はEUのみならず、グローバルで公的リスクと企業リスクが焦点になるという。そのため、EU AI法対応ソリューションを提供。これは、包括的に構築されたガバナンステンプレートとなり、EU AI法のリスク階層に向けたモデルマッピングの簡素化や高リスクアプリケーションの文書化と管理を可能としている。
また、活動全体で使用されるLLMのすべての接続と、モデルの一元的な文書化を構築し、使用の適合性と監督に関するルールを定義して施行する「LLMレジストリー」を2024年第4四半期に提供を予定している。
「DataikuはユニバーサルAIプラットフォーム」 - 佐藤社長
一方、Dataiku Japan 取締役社長 カントリーマネージャーの佐藤豊氏は日本の状況について以下のような認識を示した。
「AIで日常業務を改善するために自ら取り組もうとする際、データやAIの専門家ではないため専門家に頼らざるを得ないという課題がある。また、どの企業でもデータサイエンティストなど人材を育成しようとするも不足し、こうしたことが企業の変革の妨げになっている」(佐藤氏)
このような課題に対し、DataikuはAIの活用を誰かに頼まなければならない状態から、自ら取り組める世界を支援していくことをゴールにしている。同氏は「Dataikuのプラットフォームを導入することで、ビジネス部門とデータを扱う部署の間にコラボレーションが生まれ、プロセスそのものを標準化していくことが可能になる」と話す。
ただ、ビジネス部門で必要となるものはリスキリングではなく、アップスキリングすることが重要となるため、その可能性を同社では拡大していくことを支援するという。これまでビジネス部門のみでは諦めていたが、自らの知見や経験を最大化することで最終的には企業変革につながるとも、佐藤氏は述べている。
とは言え、AIの導入と活用は諸刃の剣という側面があり、人材、テクノロジー、データ、ガバナンスを整備しなければリスクにもなり得る。その点、Dataikuは自社のプラットフォームをユニバーサルAIプラットフォームと位置付けており、コード分析のモダナイズや、コーダーが使いたくなるようなコードファーストな環境、ユニバーサルなガバナンス、セキュアで管理された生成AIの利用を可能とすることを目指している。
日本におけるビジネス戦略としては「パートナーエコシステムの拡大」「ブランド認知度向上」「ターゲット顧客開拓」「日本市場への最適化」に取り組む。市場攻略は、エンタープライズをターゲットにROI(投資収益率)やROAI(Return On AI:AI投資に対する効果や成果)といったビジネス価値にフォーカスし、カスタマーサクセス、ブランドリレーションを強化していく。
佐藤氏は「ユニバーサルAIプラットフォームを企業に提供し、変革の支援を行う。データ人材の育成に注力するほか、ビジネス部門で今からプログラミング言語を覚える必要はなく、生成AIやノーコードを使うことでドメイン知識の最大化と、それにおけるコラボレーションを行う」と力を込めていた。