テクトロニクス社は7月11日、都内で年次イベント「テクトロニクス・イノベーション・フォーラム 2024」を開催。各種パートナーを交えた講演のほか、同社が提供する最新ソリューションのデモなどの紹介を行った。

最大1.92MWの電力容量を提供する双方向電源のデモを公開

その中で注目を集めていた1つが、同社が2024年1月に買収した欧州最大級の電源メーカー「EA Elektro-Automatik」が提供してきたハイパワー電源テストソリューション。デモが行われていたのはラボ用電源/電子負荷/双方向電源「EA-10000シリーズ」。日本ではこの7月より本格販売を開始したという。

  • 2台の「EA-10000シリーズ」を用いたデモの様子

    2台の「EA-10000シリーズ」を用いたデモの様子。上の1台が電源として機能し、下の1台が回生機能を伴う電子負荷として機能させている

同シリーズは電子負荷として最大96%の電力回生機能を備えている点が特長。また、64台を並列接続することで最大電力容量1.92MWを提供する(42Uラックで最大300kW、これを並列接続することで対応)。今回のデモは2台の同一モデルを使いながら1台を電源として、もう1台を回生機能を伴う電子負荷として利用したものとなっていた。

現在、同社としても日本市場でのニーズ探索を行っているとのことで、さまざまな市場での活用を模索していきたいとしていた。

AIでオシロスコープの波形特性を自動で判定

またパートナーである東芝情報システムは「AIによる波形特性自動判定」と銘打ったソリューションのデモを披露していた。

同ソリューションは、オシロスコープで取得した波形をAI学習させ、その波形が設定した条件に沿っているのか否かをAIが自動で判別してくれるというもの。学習も必要な波形画像を教えるだけで、追加学習も可能とのこと。これにより、例えば半導体デバイスの開発時に必要となるさまざまな試験・評価をバッチ処理して、自動で条件替えなどをしながら評価を行うテスト環境を構築することができるようになり、ユーザーはそれらの一連の処理が終わった後に、その結果からエラーがあるのかどうかのチェックをするだけで済むようになる。

  • 東芝情報システムによる「AIによる波形特性自動判定」のデモの様子

    東芝情報システムによる「AIによる波形特性自動判定」のデモの様子

  • 画像判定のイメージ

    画像判定のイメージ。学習パターンをユーザーが設定する形でテスト環境を構築する

同社ではAIソフトとして、学習に加えて判定機能まで盛り込む形でスタンドアロンでも動作可能なパッケージとして販売することを計画しており、2024年9月には提供を開始する予定だとしている。また、価格としても500万円程度を想定しているとのことで、開発現場や製造ラインなどでの活用を期待したいとしている。

  • デモでは電源ICの出力電圧の立ち上がり波形の評価が行われていた

    デモでは電源ICの出力電圧の立ち上がり波形の評価が行われていた

ミクスド・シグナル・オシロを活用してDDR5を検証

このほか、面白い試みとして同社のミクスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)/デジタル・フォスファ・オシロスコープ(DPO)「MSO/DPO70000DXシリーズ」とオプション「DDR5SYS/LPDDR5SYS」を活用したDDR5/LPDDR5メモリインタフェースの電気検証とデバッグのデモも公開していた。

  • DDR5/LPDDR5メモリインタフェースの電気検証とデバッグのデモの様子

    「MSO/DPO70000DXシリーズ」とオプション「DDR5SYS/LPDDR5SYS」を活用したDDR5/LPDDR5メモリインタフェースの電気検証とデバッグのデモの様子

これはDIMMのようなモジュールに対する検証ではなく、マザーボードに直付けされたLPDDR5チップと基板の間にプローブを挿しこみ、LPDDR5のBGAパッケージのボール直下のビアに当てることでDDRシステムおよびデバイスに対するコンプライアンステストを可能としたもの。JEDEC規格に準拠した電気測定、タイミング測定、アイ・ダイアグラム測定をカバーしたアプリケーションとして提供されており、同社では同アプリの活用によって、複雑なテストの自動化を促進してもらいたいとしていた。

  • LPDDR5チップのボール部直下のビアから信号を引き出してデモを行っていた

    実際にマザーボード上のLPDDR5チップのボール部直下のビアから信号を引き出してデモを行っていた