6月19日から21日まで、東京ビッグサイトで開催された「ものづくりワールド」。同展示会は、製造業向けITソリューションの展示会で、「設計・製造ソリューション展」「機械要素技術展」「ヘルスケア・医療機器 開発展」「工場設備・備品展」「次世代3Dプリンタ展」「計測・検査・センサ展」「製造業DX展」「ものづくりODM/EMS展」「製造業サイバーセキュリティ展」という9つのエリアで構成されている。
本稿では、設計・製造ソリューション展に出展したNECの「サプライチェーンエクセレンス~人とAIが共生する『製造業の未来』~」をテーマにした展示を紹介する。
匠ノウハウのデジタル化で技術継承を支援「製造業向けLLM」
1つ目に取り上げる「製造業向けLLM」は、NECが6月に発表した新しいシステムで、製造業のナレッジ継承に関わる課題を解決するため、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を活用し、製造現場における設備・品質不良、生産効率低下などの問題の解決を支援するというもの。
問題発生時などにおける作業員からの問い合わせに対し、LLMが製造現場で発生したトラブルの情報や過去のノウハウ、ナレッジをもとに回答するシステムで、匠(熟練工)のナレッジを構造化する「データモデルテンプレート」、問い合わせを効率化する「プロンプトテンプレート」をセットで活用することで高精度な回答が可能となるという。
NECによると、近年は熟練工の退職によりナレッジ喪失のリスクが増大しているという課題が多く寄せられており、この課題をLLMにより、経験が浅くノウハウが少ない作業員でも問題を早期解決できるよう支援するというのがサービスのイメージとなっている。
特に「欲しい情報が探せない」「原因特定に時間がかかる」「熟練工に依存したトラブル解決」といった現場の問題についてアプローチすることを目標に、2024年度中の提供開始を目指す構えだという。
顔認証を連携した「人・車両 入退管理ソリューション」
2つ目に紹介する「人・車両 入退管理ソリューション」は、NECの顔認証と映像分析の技術を組み合わせることで、外部作業者の入退管理の厳格化と効率化を実現するソリューション。
同ソリューションを活用することで、多数の外部作業者の車両入退を、車両・人・申請情報を紐づけることで、厳格な管理と効率化を両立し、工場入り口の渋滞緩和を実現することができるという。
導入効果としては、「車両情報と作業者情報を連携させ、車に乗ったままタブレットなどで認証が可能」「車両ごとに入場する作業員を確認することで、厳格かつ効率的な入場管理が可能」といったことが挙げられている。
また顔認証を利用しているため、なりすましが難しいことに加え、外部作業者のICカード忘れ、紛失といったリスクも防止することができるメリットもあるという。
NECは、工場のフィジカルセキュリティや現場の安全確保といったシーンで、AI・IoTなどデジタル技術の活用が進んでいることを背景に「工場Digital ID」という取り組みを進めている。
これは、生体認証や映像分析などのデジタル技術を用いて、個人を特定し、その人の顔をキーとして、「人」と工場内のさまざまな「体験」を結び付けるもの。
今回の展示会で紹介された人・車両 入退管理ソリューションもこの中の1種で、このようなソリューションを通して新しい体験価値を提供していきたい考えだ。
工場付加価値時間計測ソリューション
3つ目で紹介する「工場付加価値時間計測ソリューション」は、工場内の組立・検査工程における「付加価値時間」と「ムダ時間」を、カメラに映る手や体の位置から自動検出し、画像認識技術の活用によって定量的な観測を可能にし、数値ベースの現場カイゼンと工場運営を促進するソリューション。
工場現場では「製造ラインにおいてどのような作業で作ったのか把握しきれていない」「熟練者と一般作業者の作業効率の違い・差分について映像や時間などの情報を活用して、気付き・作業力の改善につなげていきたい」という課題があるという。
今回展示された工場付加価値時間計測ソリューションは、このような課題を解決するためのもので、映像処理技術を活用し、数値データに基づく現場改善を促進することが可能。
展示会内では「ネジ締め」に関するデモンストレーションが行われており、作業工程分析を通じて作業手順に不備がないか確認したり、お手本動画と実際の作業動画を見比べることで作業の効率性を確かめることができた。
筆者も実際に作業の様子を見させていただいて、特に近年増えている外国人労働者のような日本語に不慣れな作業者であっても分かりやすいようなUI(User Interface)で作られていると感じた。
同ソリューションの特徴としては、「ダッシュボード機能」を活用することで、付加価値時間(稼働率/稼働時間)と任意設定した閾値に基づいた停止回数を一覧で表示することで、生産ラインの状況を数値ベースで把握することが可能であるという点が挙げられている。
また「グラフ表示機能」によって工程の作業状況をグラフ表示することが可能で、各工程の作業状況をグラフィカルな情報で把握することができ、工程間の関連性を掴むことに役立つとしている。