ソフトバンクと米ID管理のオクタは2月16日、マルチテナント型マネージドサービスプロバイダー(MSP)パートナーの日本国内における2年間の独占契約を結んだことを発表した。

同契約によりソフトバンクは、スマートフォンやタブレット、パソコンなどのデバイスを一元管理できるソフトバンクの法人向けのサービス「ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント」(BCDM)に、オクタのシングルサインオン(SSO)や多要素認証、ユーザ管理などの機能を実装する。2024年2月29日に申し込み受け付けを開始する。

  • ソフトバンクのビジネス・コンシェル デバイスマネジメント(BCDM)に米オクタのユーザ管理機能を追加

    ソフトバンクのビジネス・コンシェル デバイスマネジメント(BCDM)に米オクタのユーザ管理機能を追加

デジタル化が進む中小企業の課題

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴い、各種クラウドサービスの活用やテレワーク、ハイブリッドワークなどの新しい働き方が定着する中で、シャドーITと呼ばれるIT部門の許可のないSaaSの導入や私用デバイスの利用などによる情報漏えいリスクの懸念が高まっている。IPAの調査によると、不正アクセスを脅威と捉えている企業は7割を超えている。

また、企業が導入するSaaSの数は日々増大している。総務省の2022年度の調査では、クラウドサービスを利用する企業は7割を超え、また、日本企業の99.7%を占める中小企業のデジタル化は加速しており、野村総合研究所によると、2025年度にはデジタル化に取り組む中小企業は約6割まで広がると見込んでいる。他方で運用工数の増加は喫緊の課題だ。

  • デジタル化への取り組みが加速している 出典:野村総合研究所

    デジタル化への取り組みが加速している 出典:野村総合研究所

16日の記者発表会でソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部 統括部長の中野博徳氏は、「中小企業においてもクラウド活用やリモートワークの定着が進んでいるが、SaaSの管理コストや情報漏えいリスクが課題として浮上している。オクタと独占契約を締結し、企業の安全なSaaS活用を促進していく」と、独占契約の狙いを説明した。

米オクタのSSO機能を追加費用なしで提供

ソフトバンクはこれらの課題解決に向け、独自開発・提供しているBCDMにオクタのユーザ管理・多要素認証サービスなどの機能を連携させ、ゼロトラストセキュリティの重要な要素である認証・認可を強化する。

BCDMは約1万6000社の企業で、約240万のデバイスに導入されているサービス。マルチOS対応で、ポリシーやアプリケーション配信時の状況確認などの管理サイトを提供している。オクタのサービスと連携することで、シングルサインオン機能が追加費用なしで利用可能になった。

  • オクタのサービスと連携したBCDMの利用イメージ

    オクタのサービスと連携したBCDMの利用イメージ

また、デバイス証明書やワンタイムパスワード、生体認証など、さまざまな多要素認証を提供。私用デバイスからSaaSへのアクセスをデバイス証明書で制限したり、役職などでグループを分けた認証方式で設定したりするなど、重要な情報へのアクセスを安全な方法で実施できるようになる。

  • シャドーITのリスク対策に効果的だという

    シャドーITのリスク対策に効果的だという

さらに、BCDMの管理画面からデバイスやユーザ、認証ポリシーを一元管理できるようになる。加えて、ライフサイクル管理により、ID登録・更新業務など企業内におけるSaaSの利用にかかる運用工数を削減できるとのこと。なお、24時間365日ヘルプデスクへの問い合わせも可能だ。

  • 複数のSaaSのユーザを一元管理可能に

    複数のSaaSのユーザを一元管理可能に

なお、無制限のシングルサインオン機能や多要素認証機能といった高度な機能はオプションとして提供される。提供料金は以下の通り。

  • 提供料金

    提供料金

中野氏は、「ソフトバンクは、中堅・中小企業のDX推進を重視している。オクタとの連携で、顧客企業のさらなるクラウドの活用やセキュリティの向上につなげていく」と述べた。