ソフトバンクグループ(SBG)が2月8日発表した2023年10~12月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が9500億円の黒字だった。前年同期の7834億円の赤字から転換し、5四半期ぶりに黒字となった。同日の決算会見で後藤芳光CFO(最高財務責任者)は「久しぶりに黒字を出せてほっとしている」と切り出した。
23年12月に1.1兆円相当(48.8百万株)のTモバイルUS株を無償で取得したことが響いた。20年4月に完了したSBG傘下の旧スプリントがTモバイルに吸収合併された際に設定された「Tモバイル株の株価が一定の水準を上回ると新たに株が付与される」という条件を満たした。
旧スプリントへの投資実績は、累計で2.1兆円の投資に対し23年12月末時点で5.0兆円のリターン。SBGによるスプリント買収発表前(12年10月時点)同社の時価総額は220億ドルだったが、Tモバイルとの合併後、23年12月末時点で1830億ドルまで成長した。通信事業者の時価総額で世界最大にまで上り詰めた。
「投資家からの非難も多く、スプリントへの投資には苦労した。Tモバイルとの合併は、スプリント買収当初から持っていたアイデアだったが、実現するまでに相当な時間がかかった」(後藤氏)
また、人工知能(AI)関連の企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)による投資事業も改善した。23年10~12月期におけるSVF事業の投資損益は6007億円の黒字と、前年同期の7303億円の赤字から回復した。また、同事業の税引き前損益は4227億円と前年同期の6601億円の赤字から回復した。
SBG傘下の英半導体設計大手アームの業績も好調だ。同社が7日発表した2023年10~12月期決算は、売上高が前年同期比14%増の8億2400万ドル(約1200億円)、純利益は52%減の8700万ドルだった。
設計を新規に契約したときに受け取れるライセンス収入は18%増の3億5400万ドル、半導体が売れるごとに得られるロイヤルティー収入は主力のスマホ向けの回復で11%増の4億7000万ドルと、四半期において過去最高を達成した。「アームベースチップの23年9月までの累計出荷数は2800億個を超えた。買収時に描いていた2次関数曲線通りに成長している」(後藤氏)
また、アームが9月に米ナスダック市場に上場したことで、SBGは100%子会社を通じて161億ドルのアーム株(発行済株式総数の25%相当)を取得することが決定している。同取引対価は4分割で支払うこととなっており、23年8月の取引完了時に第1回目の41億米ドルを支払い済みで、2025年8月までの2年間にわたって残りの3回分を支払う予定だ。
同社が最も重視する指標である保有資産価値から純有利子負債を差し引いたNAV(時価純資産)は、12月末で19.2兆円と9月末の16.4兆円から2.8兆円増えた。アームとTモバイルの株価の影響が大きかった。
後藤氏は「NAVは成長の実績を表す指標で、四半期連続で成長している。NAV拡大の源泉は成長投資だ」とし、財務の安全性を維持しつつ、AIといった情報革命を索引する投資は実行していく姿勢を見せた。
「4年前までは保有資産の5割を占めていたアリババから、アームやビジョンファンドを軸としたAIへのシフトを加速させていく。ビジョンファンドのビジョンは『AIに関連する成長企業への投資』であることに変わりはない」(後藤氏)