SMICは、2023年通年の連結売上高が前年比13%減の63億2000ドル、純利益が同50%減の9億250万ドルになったと発表した。2023年第4四半期の売上高は、前年同期比3.5%増の16億7829万ドル、純利益は同55%減の1億7468万ドルとしており、増収減益の背景にプロセス微細化のためのマルチパターニングによる製造原価高騰があるものとみられている。

業績悪化の理由について、同社は「半導体産業が景気サイクルのどん底にあり、世界市場の需要は低迷し、業界の在庫は高水準にあり、在庫処分のペースも鈍化、さらにはファウンドリ業界の競争が激しかったため、平均稼働率も低下したことで、出荷量が減少した」と説明している。

2023年末におけるSMIC全体の月間生産能力は、8インチウェハ換算で80万6000枚、年間稼働率は75%だったという。また、2024年第1四半期については売上高を前四半期比0~2%増、粗利益率を9%~11%の範囲と予測している。

さらに、2024年の設備投資額については、過去最高だった前年の74億7000万ドルと同程度の水準を保つとしている。利益が減少する中でも高水準の投資を継続させる背景には、米国の対中半導体規制に対抗する中国政府による国内半導体製造能力の拡大支援策があるためだとしている。同社は現在、北京、天津、上海、深センで新工場の建設を進めている。

Huawei向け5nm製造ラインを準備か?

米国政府が、中国に対する先端半導体製造抑制策を次々と打ち出す中、SMICは2024年中にもHuaweiの次世代スマートフォン(スマホ)向け5nmプロセス採用プロセッサの製造を開始する見込みだと、英Financial Times(FT)が報じている

SMICはHuaweiと提携する形で、上海に5nmプロセス採用の量産ラインを設置したという。この5nmプロセスは、Huaweiの子会社HiSiliconが設計したスマホ向けSoC「Kirinシリーズ」のほか、データセンター向けプロセッサ「Ascend 920」向けとみられており、実際に製造されればNVIDIAの高性能AI半導体と中国勢による代替AI半導体との性能差が大幅に縮小する可能性があるという。

7nmより微細なプロセスで半導体を製造するためには、一般的にはASMLのEUV露光装置が用いられるが、ASMLが本社を置くオランダの政府は米国政府の要請でEUV露光装置の対中輸出を禁止しているため、中国企業はEUV露光装置を入手できない。そのためSMICは、EUV露光装置ではなく、液浸ArF露光装置のマルチパターニングを用いて7nmプロセスを実現したと見られている。すでにSMICの7nmプロセスを採用して製造されたHuaweiのAI半導体「Ascend 910B」は、NVIDIA製品を除いて中国の顧客が利用できるコンピューティング能力という点で、最高レベルの国産AI半導体とされている。

SMICでは、5nmプロセスを7nm以上にリソグラフィとエッチングを繰り返すことで実現しようとしている模様で、工程数が増加することもありSMICの5nmプロセスの製造コストはTSMCのものよりも40〜50%高く、かつ歩留まりも7nmの場合で、TSMCの3分の1未満にしかなっていないとみられている。しかし、中国にとっては、金額の多寡や歩留まり以上に、国家安全保障上の半導体国産化の問題であるため、中国での5nmプロセス半導体製造は実現されるものと中国事情に詳しい識者のコメントとしてFTは伝えている。