従来から、歩留まりは半導体製造における最も重要な指標の1つと考えられてきた。プロセスの歩留まりを量産水準に引き上げるまでの期間を短縮できるなら、その価値は半導体メーカーにとって数十億ドルにも匹敵する。そこでメーカー各社は、ウェーハ検査技術に多額の投資を行って、歩留まりキラー欠陥を迅速に検出・修正するとともに、できればファブ生産量への影響を未然に防ぎたいと考えている。

欠陥検出には、「検査」と「レビュー」という2つの相補的なツールが用いられる。一般的には、まず光学検査によってウェーハ上の潜在的欠陥を検出した後、はるかに解像度の高い電子ビームレビューで欠陥を分類し、これを基に技術者が根本原因を突き止めて対策を講じる、という手順を踏むのが普通だ。光学欠陥検出と電子ビーム欠陥レビューは補完しあう関係にある。前者はウェーハを短時間でスキャンできるが解像度が低く、後者は解像度が高い代わりにウェーハスキャンに時間がかかる。両方の利点を兼ね備えたツールがあれば、それが最も望ましい。

しかし半導体設計が複雑さを増す中で、光学検査には対応が求められるさまざまな課題が立ちはだかっている。線幅の微細化が進むにつれて、小さなニューサンス(致命的ではない)欠陥に過ぎなかったものが歩留まりキラー欠陥になるケースが増える。また、デバイス構造が3Dに移行するにつれ、パーティクルの検出と確認はより難しくなる。さらに、マルチパターニングと3D構造では前後のプロセスステップ間におけるパターニングの相互依存性が強まるので、欠陥の根本原因を突き止めるには検査ポイントをさらに増やす必要が出てくる。このため、半導体メーカーはコスト面でのジレンマに悩まされることになる。検査を増やせば製造コストが上昇し、コストを下げようとすると製造歩留まりが低下してしまうのだ。

こうした現状に対し、アプライドマテリアルズ(AMAT)は2021年に次世代の光学検査装置「Enlight」を投入し、複雑化した新時代に立ち向かう半導体メーカーの支援を目指している。この明視野光学ウェーハ検査装置は、業界トップクラスの検査スピードと高解像度光学系を兼ね備え、歩留まりを左右するデータを1回のスキャンでより多く捉えることができる機能を備えている。明視野・暗視野両チャネルでの同時検出に対応したこの装置は、反射光と高角度散乱光の両方を集光してごく微細な欠陥を検出できる。

Enlightのシステムアーキテクチャは光学検査の経済性に変革をもたらし、致命的欠陥の検出コストを従来の3分の1に引き下げる。ユーザーはこのコストメリットを生かして検査費用を削減することも、あるいは同じコストで検査ポイント数を増やしてより多くのパーティクルやパターニングエラーを検出することも可能となる。その結果、EnlightはAMATの検査装置としては史上最速ペースで導入が進み、最先端ファウンドリ-・ロジックメーカーの量産ラインに多数採用されている。

そうした中、AMATでは最近、Enlightのスループットと感度をさらに高めた「Enlight 2」を市場投入した。

欠陥とニューサンスを識別

Enlight 2は、歩留まりキラー欠陥の検出数を高めながらも、同時に誤検出率を低く抑えている。

  • Enlight 2に搭載された各種技術

また、以下の2つの機能アップグレードにより、対象となる欠陥の検出感度を高めている。

  • 画像処理のステップ関数と撮像ダイナミックレンジの拡大により、スキャンごとに従来の100倍以上の潜在的欠陥を検出。
  • 新しいSideViewモジュールでは、ウェーハに対して斜入射照明が可能となり、3D欠陥の検出感度が2倍近く向上。

このシステムはさらに、ニューサンスを抑制する新機能を備えている。

  • SELFIと呼ばれる新しいディープラーニングエンジンは10億以上もの欠陥イメージを検出・分類でき、対象欠陥を3倍も多く捕捉。
  • GF Polarisと呼ばれる新しい偏光モジュールは、360度偏向を調整可能にしてグレイフィールド検出チャネルを制御し、ニューサンスを50%低減。

さらなる高速化

Enlight 2には、システムスループットをさらに高める機能強化もいくつか盛り込まれている。

  • 新しいハイブリッドコンピューティングアーキテクチャはグラフィックスアクセラレータと専用のイメージプロセッサを活用し、CPUのパフォーマンスを4倍、データ保存速度を5倍、ネットワークスループットを2.5倍に向上。
  • 新しいテレスコープによりシステムのウェーハスキャンスループットが40%以上向上。

コストオブオーナーシップを低減

こうして速度と感度が向上した結果、全体的なコストオブオーナーシップは以前と同じ水準を維持したまま、半導体の製造フロー全体を通じて挿入できる検査ポイントの数やレシピごとのスキャン数を増やすことが可能になった。同時に、検査段階で実行性のある情報がより多く収集されるので、歩留まりエクスカーションの事前予測が可能となり、即時検出によりウェーハ処理を中断して歩留まりを確保し、速やかに根本原因を探り当てて是正措置を講じ、量産に戻すことができる。

半導体メーカーはニューサンス検出を最小限にするために、検査装置の感度を低く抑える傾向があるが、そうすると重大欠陥を見逃すリスクが高まってしまう。この問題に対処するため、AMATはExtractAIテクノロジーを導入し、ビッグデータを活用して完全分類されたノイズフリーのマップをインラインモニタリング中に高速作成することを可能とした。Enlight 2の予測機能とExtractAIを組み合わせることで、明視野光学ウェーハ検査と電子ビームレビュー装置「SEMVision」をリアルタイムでインテリジェントにリンクすることが可能となる。ExtractAIは人工知能(AI)を利用してウェーハ上のあらゆる潜在的欠陥の性質を特定し、分類された欠陥の実用的マップをSEMVisionに提供する。一方、電子ビーム装置側は、ExtractAIテクノロジーに対して歩留まりキラー欠陥を分類するよう学習させて、高性能光学スキャナが生成する数百万ものニューサンス信号の中から歩留まりキラー欠陥を迅速・正確に見つけ出す能力を提供する。

これら光学検査技術と電子ビームレビュー技術を組み合わせることで、単に歩留まりキラー欠陥を検出・分類するだけでなく、プロセス変更をリアルタイムで学習してこれに対応できるソリューションが実現されることとなったのである。

Enlight 2はすでに2桁に上る実機が客先に出荷され、量産に適用されており、感度を落とさずにスループットを50%改善できることが実証されている。

本記事はApplied Materials(AMAT)の技術ブログ「Applied Materials Blog」を翻訳したものとなります

著者プロフィール

Gilad Reut
Applied Materials
プロセス ダイアグノスティクス&コントロールグループ所属のプロダクト マーケティング エキスパート。
2014年にApplied Materialsに入社し、現在Optical Patterned Wafer Inspection Line Monitoringのマーケティング統括責任者。ベングリオン大学でマテリアルズエンジニアリングの理学士号、ワイツマン科学研究所で化学の理学修士号を取得。