立命館大学 総合科学技術研究機構の金子健太郎研究室と、同大学発ベンチャーのPatentixは9月20日、次世代半導体材料として注目される「ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」を、PhantomSVD(ファントム局所的気相成長)法によって、SiC(炭化ケイ素)上に製膜することに成功したと共同で発表した。

同成果は、2023年9月18日~21日にポーランド・ワルシャワで開催されたヨーロッパ最大級の材料学会「Europian Materials Research Society(E-MRS)」のFall Meetingにて、立命館大大学院 理工学研究科の清水悠吏氏(Patentix取締役 兼任)によって発表された。

r-GeO2は、SiCやGaN(窒化ガリウム)と比べてさらに大きなバンドギャップを持つことから、r-GeO2を使用したトランジスタやダイオードは、高耐圧・高出力・高効率(低損失)という優れたパワーデバイス特性を備えることが期待されている。なお立命館大学は、r-GeO2パワーデバイスの開発では日本が世界をリードしているとする。

2022年11月に設立されたPatentixは、超ワイドバンドギャップ半導体材料としてGeO2を用いた半導体基板・パワーデバイスの研究開発を進めるほか、r-GeO2エピウェハの研究開発も推進している。また同社では、独自に開発したPhantomSVD法を用いた成膜を行っているとのこと。同手法は、安全安価な原料を用いることができるためコストパフォーマンスがに優れるうえ、霧状にした溶液を用いる従来のCVD法とは異なる原理で結晶成長が可能であるため、より安全かつ安心な薄膜合成が可能になるとしている。

そして今回両者は、Phantom SVD法によってr-GeO2をSiC上に製膜することに成功。酸化物半導体パワーデバイスの開発課題となっていた、基板の低い熱伝導率という課題に対し、放熱性に優れたSiCを用いることで解決できる可能性を示す成果になったとする。

なお両者は今後、r-GeO2薄膜の電気特性評価や膜中に存在する欠陥評価などを行い、高品質なr-GeO2エピ成膜技術の開発を進めるとしている。

  • (左)成長したルチル構造r-GeO<sub>2</sub>の写真。(右)構造の説明図

    (左)Si(111)/3C-SiC(111)上に成長したルチル構造r-GeO2の写真。左端の未成長部は膜厚測定のためにマスキングした跡。(右)Si(111)基板上に製膜した3C-SiC薄膜の上にr-GeO2の成膜を行った。(出所:Patentix)